ああ,やっちまったょ! などとは断じて申しますまい。

2014年10月22日 | 自転車ぐらし
 先週の木曜日,今年二度目の「ギックリ腰」になった。何ともナサケナイ限りであるが,これもまたワタクシ的には「相不変の平常運転」ということで宜しいのだろうか。

 その日の午後,渋沢丘陵の奥のほうの「未開地@自己基準」を いつものMTBではなくクロスバイクに乗って一寸徘徊してきた帰りに「ヤオコー」という当地に最近進出立地したマーケットプレイスに買い物に立ち寄ったのだが,そこの駐輪場でギクッとやってしまった。少しかがんでフロントタイヤをチェックしただけなンだけれども,運命はいつだって呼び鈴を押してはくれない。こちらの都合など全くお構いなしに突然やってくるのだ。 アイタッ! ったく,町の外れに住む魔女の一撃かぃ!

 幸いなことに,というべきか,その場でノタウチマワルほどの酷い痛みではなかったものだから,買い物の方は即中止ということにして,そのまま自転車に乗ってユルユルとオソルオソル家に戻った。帰りの道すがら,生きてあることの苦しみ Le mal de vivre をシミジミと肌身に感じながら。。。

 以後の経緯は前回とほぼ同様である。終日,自宅安静を基本とし,極力無理はせず,時間の経過とともに自然治癒を待つことにした。もちろん病院だとか整体だとかに行ったりなんかはしない。実は,拙宅から直線距離にしてほんの100m程のところに,近在では比較的評判が良いといわれている整体院があり,さらに加えて,十数年も前から私の「かかりつけ」だった整形外科クリニックが,何と今春,その整体院のすぐ隣に遠方から移転してきたのである。これには驚きました(まさか両院隣接に伴う相乗効果?を目論んだわけでもないだろうが。。。) ただし,そのどちらの先生にも安易に頼ることはせず,ただひたすら家に籠もって我慢と忍従と自重と節制の日々を過ごしておりました。もっとも,あんまり安静の度が過ぎて正真正銘の「寝たきり老人」になってしまっては困るので,少しずつ少しずつカラダを動かしてはいた。オノレの撒いた種を刈るのもまたオノレ自身である。問題の本質は体躯骨格の「歪み」にあり!とかなんとか呟きながら,やはりこれも前回のときと同じく,操体系とスポーツトレーナー系のテキストを参照しながらリハビリに努めた。今回は新たに『ギックリ腰は尻から治す』(伊藤和磨・著)という本を読んだが,これはなかなかの良書だと思いました。

 今日で発症から6日が経過した。徐々に快方に向かってはいるものの,前回の時に比べると回復具合が若干遅いような気がしている。自らの身体の衰えぶりに些かの不安を覚える昨今でアリマス。早く元気になってまた自転車に乗りたいなぁ,という思いがついつい先走ってしまうが,ここが我慢のしどころだ,と,シオラシク観念している。

 ところで,拙宅の御近所をざっと見渡してみますれば,現在この界隈に住まう方々の大半は60代のジジ・ババで占められている。一部は既に70代に達しており,50代はごくわずか,40代の中年盛りの人々は皆無である。また,赤ん坊・コドモ・青少年などの若年層もほとんどいない。小学生の集団登校の姿を見ることは,いつの頃からか全くなくなってしまった。人口ピラミッドで言えば「釣り鐘型」などはとうに過ぎて「原爆キノコ型」といった不吉なありさまである。要は,二世帯居住には不向きなコンペイトウ・ハウスが建ち並んでいる一角ゆえ,親の元で成長した子供らはそれぞれ独立して別の場所で所帯を構えてしまうというわけだ。我が家の息子2名にしてからが,今春,それぞれの道をめざして家を出て行ってしまった Ils s'en vont, mes garçons.. そんなこんなで,現在このエリアは全くもってオールド・タウン,「老年期」の町となりおおせている。ま,これもひとつのまっとうな「町社会の生態遷移」の一断面であり,別に嘆き悲しむにはあたらないことなのだとは思う。ところが,そのような現状を憂うるあまり,とでもいうのか,無理矢理にでも町を「活性化」させて何とか地域再生を図ろうなどという,まことに不自然で馬鹿げた動きがあるらしいことを昨今では仄聞しており,当の住民のひとりとしてはいささか気が滅入るところである。行政ならびに関係諸団体におかれては徒に平地に乱を起こさないでいただきたいものだ。常設小屋の芝居台本を勝手に改竄するようなマネはしないで欲しいものだ。ここは黄昏の街,あるいは枯葉の町,それで結構ではないか。

 いささか余計を申した。で,その残り渣,もとい現在もこの町に居残って生活しているジジ・ババ達であるが,彼らの多くは団塊世代のサラリーマン・リタイア組とその連れあい,それも相応の大企業退職者だったりするので(一部例外もあるようだが),皆様それぞれに老後の「生活」保障は恐らく盤石なのだろうとは思う。まことにウラヤマシイ限りであります。ただし,それぞれの「生命」保障については,身近な事例をいくつか拝見する限りにおいては決して盤石であるとは申されず,人によってはムニャムニャムニャ。。。ってな感じを抱かざるを得ない。例えばこんな具合だ。今日も今日とて,ホラ,拙宅のすぐ前の生活道路を何かの袋を抱えて覚束ない足どりでヨタヨタと危なっかしく通り過ぎてゆく方がおられるし,アレ,その先には道端の縁石にしゃがみ込んで呆けた顔付きでタバコをくゆらせじっとしている人がいて,かとおもえば,アラ,あっちでは律儀にも小まめにも定例の飼い犬の散歩,といっても毎度元気な犬に引き摺られるようにして路上をフラフラと危ういダッチロールしている方がいたりもする。いずれも私と同年代のジーサンでありますが,皆さん,身体的劣化が少々早すぎるような気がする。足腰の具合は大丈夫でしょうか? 見方によっては,それらはごく普通の平和な町の日常風景と言えないこともないわけだが,一方では,その裏通りを無茶苦茶走行凶悪四輪自動車という危険物体が日々頻繁に右往左往しているという現実が存在するわけで,そんなバカグルマに老いたるジジババがいつか轢かれはしないだろうかと,傍目には気が気でない。さよう,「生命」なんて実にアッケナイものなのである。あるいはまた,最近とんと姿を見ないなぁ,などと思っていたら,突然お亡くなりになられたとの報を受けることなどもある。まだ60代で,晴れてリタイア後の人生第二ラウンドが始まって間がないというのに,まことに御愁傷様です。しかり,「生命」なんて真にハカナイものなのである。

 そんな彼らの多くは,しかしながら,自らもまたクルマを運転して毎日どこかに出掛けてゆくのだ。これがかなり危なっかしく,かつイイカゲンなドライビング・テクで,生活道路のド真ん中をユルユルと(なかにはブイブイと)走り過ぎてゆく。ジジのみならずババさえも,この地方小都市においては無謀にも果敢にもクルマを日常的に運転するというのがデフォルトになっている。要するに,皆さん「楽」をしたいわけですね。安楽と困難,あるいは快楽と剣呑とを天秤にかけて,結局は「楽」が勝ってしまう。御年70才にもなろうかというジーサン,バーサンが重さ1,000kgを超える鋼鉄製の大型重量機械を操作する。しかもその重機は,始末の悪いことにヒョイと軽くアクセルを踏むだけで1秒間に数10mも移動してしまう,まさに天下無双の移動装置だ。改めて指摘するまでもなく,それは実に驚嘆すべきことであり,同時に限りなく恐ろしいことではなかろうか! そのような日々の悪しき生活習慣がジジババ連の足腰劣化を一層助長しているであろうことは明白だ。そのあげく,自宅からほんの数百メートル離れた病院や整体院に出掛けるときでさえ,自らクルマを運転し,危なっかしいドライビング・テクで裏道を走り抜けてゆくというわけなのだ。

 ドイツの諺に 《トラック一台分の薬よりも,一台の自転車》 というのがあるそうだ。もっとも,それは何となくワザトラシイ文句で,恐らくは自転車産業界あたりに頼まれたどっかのコピーライターが作成した「キャッチコピー」ではなかろうかと思う。もちろん,言わんとすることはわかる。毎日を活動的に暮らして,自転車にもたくさん乗って,健康的な身体を保つよう日々自ら努めていれば,おのずと「医者いらず,薬いらず」になるということは間違いないだろう。そしてこの惹句は,私などからすれば,むしろ現代ニッポンにおける老年世代に向けてのメッセージとしてこそ相応しいのではないかと思う。小賢しい理屈は抜きにして,まずはクルマを捨て,その代わりに自転車に乗る。スポーツ自転車にすれば?などとは断じて申しません。ママチャリ,三輪自転車,あるいは電動アシスト自転車でも充分です。そして,実際に自転車に乗るからには,事前に道路交通法規をしっかりと学び直しましょう。そうやって自転車に乗り始めて町なかのあちこちを走り回っていると,そのうちすぐに,我が国における交通体系のアイマイさ・イイカゲンさ,道路インフラ整備の欠陥・トンチンカン,現代クルマ社会の理不尽さ・愚劣さ等々をつくづく感じることでしょう。デモシカシ,それでもやはりクルマを捨てて自転車に乗る。老いの一徹でがんばって自転車に乗る。どうしても自転車が無理だというのなら,自分の足で歩けばいいじゃないですか。その結果,《ジジ・ババの運転するクルマが子どもを轢く》などという すこぶる悲しいニュースが毎日のように報じられることのない社会に少しでも近づいてゆくことを期待したいと存じます。高齢者の社会貢献,自らがそれぞれの老体に鞭打って規範を示し,それらを次世代に託す遺産とする。今,ワレワレに出来るのは案外その程度のことくらいしかないのかも知れません。

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