松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

「気を付け」の姿勢

2007-11-10 21:39:48 | 感動したモノ
小学校の時、先生が教室に入ってきたら、
当番が「起立!、気を付け!、礼!、着席!」という一連の儀式があり
今も続いているのだと思いますが、
その中の「気を付け」の言葉が、当時は
「KIOTSUKE」という言葉の音のみが頭の中に入ってて
実は、どういう意味かよくわかっていませんでした。

もちろん「気を付け」がしゃんと立つことだとは教わっていましたが
しゃんと立つって、どうゆう事なのかがまず不明です。
とりあえず背筋だけ伸ばしてたと思いますが、
背筋を伸ばしてる子も伸ばしてない子もいたし、
今にも座ろうかと腰を曲げていた子もいたように記憶しています。

つまり何が言いたいのかというと、私たち戦後の世代は
「気を付け」がどんな意味なのか、どんな姿勢で臨むのかを
教師からきちんと論理立てて習った人というのは
少ないんじゃないかってことです。

ん十年経って、誰からも「気を付け!」と
言われることのない日々の中で
弓道を習うようになって、初めてその意味するものを考えて
愕然とするものがありました。

ご存じの方も多いかも知れませんが
「気をつけ!」は直立不動の姿勢になること。
具体的にどんな姿勢なのかというと、
背筋を伸ばして立つことの他に、手の形が重要でした。

手に力を入れず、指を開かず、掌(たなごころ)は
心持ち窪みを持つこと。

おそらく日本古来の礼式では、
手の指を開くことは厳禁とされていると思います。
私はこの手の形を、つい最近になって弓道で習ったので
弓を始めなかったら一生知らなかったわけです。
最初はなかなか意識しないと忘れてしまいますが、
できるだけ人にお辞儀する時は、
手の形まで整えたいと思うようになりました。

たまたま産経新聞のHPで「やばいぞ日本」というコラムの中で、
第4部 忘れてしまったもの(1)一片のパン「幼いマリコに」の話に
感動しながら読み進めていくと、
終戦直後、米海軍カメラマンのジョー・オダネル氏の撮影した
「焼き場の少年」の話がありました。
引用しますと
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オダネル氏はその姿を1995年刊行の写真集「トランクの中の日本」(小学館発行)でこう回想している。
 「焼き場に10歳くらいの少年がやってきた。小さな体はやせ細り、ぼろぼろの服を着てはだしだった。少年の背中には2歳にもならない幼い男の子がくくりつけられていた。(略)少年は焼き場のふちまで進むとそこで立ち止まる。わき上がる熱風にも動じない。係員は背中の幼児を下ろし、足下の燃えさかる火の上に乗せた。(略)私は彼から目をそらすことができなかった。少年は気を付けの姿勢で、じっと前を見つづけた。私はカメラのファインダーを通して涙も出ないほどの悲しみに打ちひしがれた顔を見守った。私は彼の肩を抱いてやりたかった。しかし声をかけることもできないまま、ただもう一度シャッターを切った」
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この「気を付け」の姿勢をとった少年の画像です。



私は手に注目しました。
手に力を入れず、指を開かず、掌(たなごころ)は
心持ち窪みを持つこと。
私は自分が正しい「気を付け」の姿勢を今まで知らなかったこと。
そしてこの10歳の少年から、
その姿勢をとることが、一体どんな意味を持つのかを初めて教えられ、自分が恥ずかしくなりました。

子供は何でも吸収していきます。
礼儀作法をきっちりと教えれば、大人よりもきっちりと覚え込みます。
しかし戦後教育には、
西洋から入ってきた個人の自由と平等の思想ばかりが先に立ち
日本人としての心の根幹をなすものが欠けていたのではないか。

ふと、そんな事を考えてしまいました。

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