松山櫨(はぜ)復活奮闘日記

失われてしまった松山櫨の景観を復活させようと奮闘していく日々の記録。

王千源さんの決意

2008-04-21 23:17:40 | ニュース
まずは聖火リレーの出発地が善光寺から「空き地」に変更になったとのこと、
本当に喜ばしい限りです。
日本人にとって「空き地」といえば人気アニメのドラえもんを連想しますし、
ある意味とても日本らしい場所ではあります。
空き地の前の前は刑務所だったのだとか。
長野市の思慮深い選択に、いたく感銘を受けました。
当日、コースを変更し他の場所になる可能性もありますが、
とりあえず「Akichi」という日本語をぜひ広めていただきたいものです。

さて今日は、ネットを見てたら今月9日にアメリカの中国人女子学生が
ネットで猛攻撃を受ける事件が起こっていました。
------引用
「売国奴」…仲裁の中国人女子学生がネットで猛攻撃受ける
 【ニューヨーク=長戸雅子】米ノースカロライナ州の大学で、チベットを支持する学生グループと中国政府を支持する学生グループとの衝突を回避するため、仲裁にあたった中国人女子学生が、その後、インターネット上で「売国奴」と糾弾され、言葉の暴力などの深刻な被害を受けていることがわかった。17日付の米紙ニューヨーク・タイムズが1面で伝えた。

 同紙によると、女子学生は同州のデューク大学に在学中。サンフランシスコで聖火リレーが行われた今月9日、学内でチベット支持グループの学生と中国政府支持派の学生とが衝突寸前になった際、双方のグループに友人がいたことから仲介にあたった。

 チベット支持派の学生に対し、中国政府支持派の学生と対話するのであれば、シャツの背中に「自由チベット」と書くことを認めることで、その場を収めた。

 しかし、その翌日には中国人学生向けサイトに女子学生の顔写真や連絡先、中国の実家の住所まで掲載され、顔写真の額には「売国奴」と中国語で書かれていた。「帰国したらおまえの死体は細切れになるだろう」といった脅迫メールも送られてきた。中国の実家にも汚物がまかれ、女子学生の両親は安全のため、別の場所に避難したという。

 女子学生は、同紙に「売国奴が中国に害を与えたいと思う人のことをさすなら、私はそうではない」「これからもずっと売国奴といわれるのだろう」と心境を語っている。

--------イザ!より--------

その後、その女子学生がワシントンポストに寄稿した文章が
ネットに掲載されていたのを読み、
深く感動したのでちょっと紹介したいと思います。
原文はココ(英文ですが、比較的平易な文章なので読みやすいです。)

彼女の名はGrace Wang(王千源)。
イタリア語、フランス語、ドイツ語を学んでいます。
今年の夏は中国に帰れそうにないのでアラビア語を学ぶ予定。
彼女のゴールは30才までに中国語・英語を加えて10カ国語をマスターすることです。

彼女は強く信じていることがあります。
I believe that language is the bridge to understanding.
「言葉は理解の架け橋である。」

昨年の夏、彼女は青島からデューク大学のある
デュラハムという小さな町に着きました。
最初は外国の地にとけ込めるか心配でしたが、
世界中の多種多様な国から人が集まるこの場所に次第に馴染み、
大好きになっていきます。

しかしクリスマス休暇で全てのアメリカ人が帰ってしまいました。
彼女が休暇で帰るには中国は費用がかかりすぎます。
寮も閉鎖されてしまうので、一時的にオフキャンパスで
三週間以上チベット人と一緒に暮らすことになりました。

それまでチベット人と実際に会ったことも話したこともなかった彼女、
毎日チベット人たちと一緒に料理をしたり
チェスやトランプして遊んだりしながら、
同じ中国で、全く正反対に育っていった
自分たちの経験を話し合うことになり、
彼女は目から鱗が落ちていきます。(It was eye-opening for me.)

彼女は多くの中国人同様、唯物主義者(拝金主義)でした。
しかしこの経験のおかげで人生にもっと精神的なものが見えてきたのです。
彼女は、チベット語が学習課目となっていないため
どんどん失われていることにも深く同情するようになります。

そして4月9日に事件は起こりました。

大学の構内で、チベットと中国の旗を持ったそれぞれの人々が
にらみ合っています。彼女は両方とも知り合いでした。

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私はばかげてると思った。
二つのグループが話もしないで対立するなんて。
大学にいる多くの中国人は科学者やエンジニアたちで
英語がうまくないから言葉が壁になっていると、私にはわかっていた。
だから、二つのグループを会話させて、
より大きな視野からみんなに考えさせてみようかと思ったのだ。
私は幼い頃に、父から違う意見を持つことは恐れることじゃないと教えられていた…。
-------------

彼女は一生懸命二つのグループを行き交いますが、
結局その試みはうまくいきませんでした。
それどころか、中国人の集団が彼女を取り囲み襲うような気配すら見せたので、
警官のエスコートを受けて彼女はその場を離れます。
寮に戻った彼女はデューク大学の中国人学生・教師協会のウェブサイトの掲示板で
協会の銭方舟の書いた「われわれの力を見せてやった!」という勝利宣言を見て、意見を投稿します。
「自分はチベットの独立は支持しないが、
中国人の自由、チベット人の自由を指示する。」と。

翌日、売国奴とおでこに書かれた彼女の写真が広がり
恐ろしいことに、中国の警察しか知り得ない両親の市民番号まで投稿されていました。
彼女の実家には窓が割られたり、糞がまかれたり
出身高校では彼女を非難する集会が開かれ、
彼女の卒業が取り消され、愛国教育が強化されたそうです。
両親は隠れなければならず、彼女自身、深刻な脅迫を受けています。

-------------要約--
私はどうして人々がそんなに感情的で怒っているのかを理解した。
チベットの出来事は悲劇的だけど、私を責め苦しめるのを受け入れることはできない。
中国人の一人一人はそれがわかっていると信じている。
お互いがカッとして暴徒みたいな行動をとる時に危険になるのだ。
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現在、デューク大学は彼女の身辺警護をつけており、
中国のサイバー攻撃は続いています。
しかし彼女はおびえて逃げ回るつもりはありません。
I'm no longer afraid, and I'm determined to exercise my right to free speech.
Becacuse language is the bridge to understanding.
(私はもう恐れない。自由にしゃべる自分の権利を行使しようと決意している。
なぜって、言葉は理解の架け橋だから。)

Grace Wang(王千源)さんの文章の紹介は以上です。
これは、まさしく文化大革命時代の再到来を象徴する事件ですね。
この事件がなければ、彼女は名門デューク大学の留学生として
普通に楽しく暮らしていたでしょうが、
やや理想を夢見る瑞々しい感受性と、
「違う意見を恐れるな」と言う良識的な父の教えのために、
彼女は違う運命を辿ることになってしまいました。
今や彼女は愛国中国人にとって賞金首のトップです。

でも、私は現在一番好きな中国人は誰かと聞かれたら、
Grace Wang(王千源)さんと答えたいと思います。

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