自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「ミズガニ、食べに来ませんか」

2017年02月14日 | ⇒トピック往来
  きょう14日、福井市に住む友人から電話があった。「ミズガニ、食べに来ませんか」と。私は能登生まれで幼少よりカニをおやつ替わりに食べてきたことを自慢してきた。いまでもカニには目がない。とっさに「あすでもいいですよ」と返答した。さすがに先方は「できれば来週で」というので、来週23日に「カニの夜」を福井で楽しむことになった。

  とは言いながら、「ミズガニってなんだっけ」と、さっそくネットで検索した。ミズガニは福井独特の言い方で、脱皮して間もないオスのズワイガニのことを、当地ではミズガニというそうだ。透き通るような薄い赤の甲羅が特徴。漁は今月9日解禁されたばかりで、来月20日まで続く。ただ、ミズガニを食べる食習慣は加賀や能登ではないし、漁期の設定も聞いたことがない。※写真はズワイガニ

  さて、その食味は…。検索はさらに続く。ミズガニは身に水を多く含み、食べる時に足の身がズボッと取れることからズボガニとも呼ばれるそうだ。したがって、通常のズワイガニに比べて、価格は5分の1ほどと安い。越前の庶民の味なのだろう。

  私はカニに対する福井県民の執着心には脱帽している。20代の若いころ、別の福井の友人と「カニの早食い競争」をしたことがある。ハサミも包丁も使わずに、茹(ゆ)でたズワイガニを一匹丸ごと平らげるタイムを競った。福井の友人はパキパキと脚を折り、ズボッと身を口で吸い込み、カシャカシャと箸で甲羅の身を剥がす。黙々と。その速さは5分ほどだった。私は到底かなわなかった。

  そのカニ食い競争後に越前漁協にカニの水揚げ現場を案内してもらった。友人が言うには、「脚折れのカニは普通は商品価値が低いが、この漁協では折れたカニの脚を集めて、脚折れカニにうまく接合する技術がある」と。二度びっくり。そんなカニ脚の接合技術など石川では聞いたこともない。カニという商品をそれだけ大切に扱っているという証(あかし)だと当時思った。そして、同じ北陸でもカニにかけては福井人の執着心には絶対かなわないと自覚したものだ。

  さらに執拗に検索を進める。カニ料理のポイントは塩加減や茹で加減と言われる。単に茹でてカニが赤くなればよいのではない。福井では「カニ見十年、カニ炊き一生」という言葉がある。カニの目利きが上手にできるには十年かかり、カニを満足に茹で上げるには一生かかるという意味だそうだ。カニの大きさや身の付き具合はもちろん、水揚げされた日の気候などによって、塩加減や温度、茹で時間などを調整する、というのだ。とくに福井人が大好きなミズガニは茹で加減が難しく、かなりの熟練度が必要という。カニの商品価値を高めるための技と心意気をひしひしと感じる。23日のミズガニの夜がさらに楽しみになった。

⇒14日(火)午後・金沢の天気   くもりときどき雪  
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