自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆ドキュメント「平成と私」~続々々~

2019年04月17日 | ⇒ドキュメント回廊

   能登半島の観光地、輪島市の中心街から海沿いの細い道を西へ12㌔ほどに、家々を竹垣で間垣で囲った集落がある。集落をぐるりと囲んだ景観は城塞のようにも見える=写真・上=。冬場、日本海から強烈に吹き付ける北風から家を守る間垣(まがき)である。輪島市大沢地区、この間垣集落が一躍脚光を浴びたことがある。平成27年(2015)の連続テレビ小説「まれ」のロケ地だ。

      ロケ地は能登、朝ドラ『まれ』と映画『さいはてにて』   

   50戸ほどの小さな集落には食堂もない。この年3月に放送が始まり、大型連休(4月25日〜5月10日)には観光客7700人(輪島市観光協会まとめ)が訪れた。この年の3月14日に北陸新幹線の「長野-金沢間」が開業した。東京から金沢までの所要時間は最速で2時間26分に。新幹線の利用客は在来線特急が走っていたころに比べて3倍に増えた。輪島の朝市は入込客数が1.3倍にもなった。北陸新幹線の金沢開業とNHK「まれ」の相乗効果は絶大だった。 

   間垣は強風をしなやかに受け止め、風圧を和らげる。先人の知恵だ。使われる竹はニガダケで、茎が数㌢とモソウチクなどと比べて細い。地域の高齢化でニガタケの塀を修復することは大変だった。そこで、2011年から金沢大学の学生ボランティアたちが間垣の修復作業に2年間携わった=写真・中、提供:松下重雄氏=。その甲斐あって、以前の景観がすっきりと元に戻った。その後、NHKのロケ地として選ばれた。

   物語は、親の事業失敗で漁村に家族と移住し育った希(土屋太鳳)が成長して役場に就職するが、幼いころのパティシエになる夢を思い出して、横浜で厳しい修業に挑む。婚約者で輪島塗の職人の圭太は輪島塗を世界に広めるプロジェクトを始める。希は圭太の夢を後押しするためにパティシエをいったん辞め、能登に戻る。輪島では輪島塗店の女将とケーキ店のパティシエの二つの仕事をこなす。双子が授かり、育児と仕事の両立もこなしていく。昔から「能登のトト楽」という言葉がある。妻がよく働くので亭主が楽をするという意味。能登のトト楽を地で行く頑張るお母さんという物語だった。

   平成27年2月には能登を舞台にした映画『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』も公開された。幼い頃に生き別れた父の帰りを待つため、故郷の奥能登に焙煎コーヒーの店を開いたハイミスの女主人と、隣人のシングルマザーの物語。世間から阻害された女たちが身を寄せあいながら生きる道を探る。共感度の高い、癒される名画だった。(※写真・下は映画の舞台となった「ヨダカ珈琲」=石川県珠洲市木ノ浦海域公園)

⇒17日(水)朝・金沢の天気      はれ

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