自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「コロッセオ」のような石川県立図書館 地域のシンボル

2023年08月13日 | ⇒ドキュメント回廊

           何かと石川県立図書館が話題になっている。先日も関西に在住する大学時代の友人が金沢にやってきて、リクエストで図書館を案内した。広い吹き抜けの空間に、何重にも円を描くように本棚が配置されている光景を見た友人の第一声が「古代ローマのコロッセオの雰囲気だね」と。コロッセオは円形格闘場と呼ばれ、自身もその言葉を聞いて、高校時代に学んだ「パンとサーカス」という言葉を思い出した。ローマ皇帝は、民衆から支持を得るため小麦を無料配り、演劇や格闘技を盛んに開いた。そのシンボルがコロッセオだった。

           図書館というとこれまで地味なイメージだったが、石川県立図書館のように地域のシンボルのような存在になるかもしれない。

   面白いのは形状だけでなく、従来の図書分類の枠を超えたコンセプトだ。吹き抜けに面して1階から上へと続く360度の円形書架には、12のテーマで7万冊の本が手に取りやすい形で並べられている。たとえば、「自分を表現する」という書架には、絵を描く、音楽を奏でる、写真を撮る、演じるといった芸術関連の本が並ぶ。それは芸術論ではなく、本を手に取って読むことで自らも表現してみたくなるような内容の本だ。司書が選りすぐった本なのだろう。ほかにも「暮らしを広げる」「文学にふれる」「仕事を考える」「体を動かす」などのテーマで本が並ぶ。また、分類別図書の本棚には30万冊が並ぶ。

   それにしても、これまでの県立図書館のイメージとはがらりと変わって「会話ができる図書館」で、おしゃべりができてスマホも使え、場所によっては飲食もできる空間だ。子どもエリアにアスレチック施設も併設されていて、休日には子ども連れの若いカップルの姿もよく見かける。

   円形劇場のような吹き抜け造りなので、東西を結ぶブリッジが閲覧席にもなっている。ここからは館内全体を見渡すことができ、書棚とイスはまるでアート空間だ。そして、館内のいたるところで、石川県内の著名な陶芸家や漆芸家か描いた作品がさりげなく展示されている。

   友人と訪れた日は、夏休みとあって館内に並ぶ閲覧席は宿題に取り組む小中学生や受験勉強の高校生らでいっぱいだった。そして驚いたことに観光バスできた団体客もいた。観光なので滞在時間は短いかもしれないが、図書館に観光客が訪れるという光景には友人だけでなく、自身もある意味で感動だった。 

⇒13日(日)夜・金沢の天気     はれ

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