自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆超高齢化社会の妙薬か 認知症新薬「レカネマブ」承認へ

2023年08月22日 | ⇒ニュース走査

   ようやく承認されることになった。メディア各社の報道によると、早期アルツハイマー病の新薬として期待されている「LEQEMBI(レカネマブ)」がきのう21日に厚労省専門部会で承認が了承された。日本のエーザイが主導し、アメリカの医薬品バイオジェンと共同開発した。冒頭に「ようやく」と述べたのも、アメリカでは食品医薬品局(FDA)がことし1月により早く治療を提供する「迅速承認」という措置で承認し、7月6日に正式承認を行っている。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。両社は日米欧、中国、韓国などで承認申請を行っている(エーザイ公式サイト)。

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるとすれば、問題は治療費だ。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。アメリカでの価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ と設定している(同)。きょうの為替相場は1㌦146円なので、ざっと387万円だ。今回の日本での承認の了承によって、年内にも保険適用の対象となる可能性があると報じられている。仮に年間1万人が利用するとして、年間387億円となる。高額医療の患者負担の割合をどのように設定するのか、議論になるだろう。アメリカでは高齢者向け公的医療保険「メディケア」は保険適用の対象とし、患者負担を2割程度に抑えている(7月7日・東京新聞Web版)。

   さらに検査体制だ。投薬の対象者は日常生活に支障がない「軽度」のアルツハイマー病患者が想定されている。軽度かどうかは、アミロイドβ の蓄積量を調べる検査が必要となる。2通りあり、一つはアミロイドPET(陽電子放射断層撮影)での測定と、二つめが脳脊髄液を採取して測る。いずれも保険適用外である。レカネマブの承認と同時に検査体制の充実もキーポイントになってくるだろう。   

   国内のアルツハイマー型認知症の医療や介護に要するコストは、家族による無償の介護を金額に換算した額を含めると、最大で年間12兆6000億円を超えるとの推計値の報告がある(2021年3月・「Journal of Alzheimer's Disease」国際医療福祉大学医学部公衆衛生学の池田俊也氏らの研究)。今回のレカネマブの承認が、超高齢化社会といわれる日本で、患者の生活の質を向上させ、家族の負担を減らす「妙薬」となってほしいと願う。

⇒22日(火)午後・金沢の天気    はれ

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