先日、石川県内のある高校の校長と話していて、「大学でのオンライン授業に嫌気がさして別の大学に行こうと準備している学生もこのコロナ禍で相当いるのではないか」と切り出すと、校長は「仮面浪人ですね」とうなずいた。じつはこのとき初めて「仮面浪人」という言葉を耳にした。それ以降、金沢大学でこの言葉を持ち出しているが、他の大学を目指す学生がいることは知っているが仮面浪人という言葉は初耳という教員も多い。社会的にそれほど知られてはいないが、言葉としては確かに存在すると認識を改めた。
仮面浪人は「滑り止め」の大学に在籍しながら他の大学への再受験を目指すが、これはある意味で「二重苦」にもなり相当な覚悟が必要だろう。普通の「浪人」は大学進学のために予備校に通ったり、自宅で受験勉強に専念できる。が、仮面浪人は大学に在籍しながらなので、取得単位を最小限に抑えて講義に出たりと様々な工夫をしなければならない。いっそうのこと、休学届を出すという手もある。また、大学での友人関係やサークル活動に距離を置いての生活になるので別のプレッシャーもある。
このような状況下でさらに難易度の高い大学を目指すとなると、成功率はそれほど高くはないだろうと想像する。ただ、コロナ禍で多くの大学はオンラン授業を継続しているので、自宅や学生アパートにいる時間が多くなる。すると、滑り止めの大学にこのままいるより第一志望へ再度チャレンジと、仮面浪人への気持ちも膨らんでくるかもしれない。
ちなみにネットで「仮面浪人」を検索しても、それほど多くは出てこない。また、年代をさかのぼっても2010年以降ばかりだ。2015年2月15日付「withnews」で「三浦奈保子、憧れの彼と東大に行きたい! 仮面浪人からの合格記 」の見出しで、タレントの三浦奈保子さんのケースを取り上げている。朝日、読売、日経、産経のマスメディア各社のホームページで検索しても2015年以上はさかのぼれない。ということは、仮面浪人という言葉はもともとあったものの、withnewsのこの記事がきっかけで広まったのかもしれない。
産経ニュースWeb版での検索で気になる記事があった。2017年7月25日付で、この日に開かれた参院予算委で民進党の桜井充氏が加計学園問題を追及した下り。「要するに加計学園に入っても浪人して、要するにそこの中で浪人して『仮面浪人』とわれわれの時代呼んでいたが、それをして、大学受験することも可能ですよと言って集めているんですよ」。桜井氏は1956年生れ。同氏が大学生のころ「仮面浪人」と「われわれの時代呼んでいた」と発言している。1970年代にこのような言葉があったとは信じがたいのだが。
(※写真は、2018年9月に学生たちを連れての能登スタディツアーで訪問した天日陰比咩神社での能面を撮影。記事との関連性はない)
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