能登半島の尖端、珠洲市で開催されている奥能登国際芸術祭(9月4日-11月5日)の最終日に鑑賞してきた。名残惜しさと芸術の秋が相まって楽しむことができた。
代々の生活がにじむアート
芸術祭で8組のアーティストが作品を創作しているのがスズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」。日本海を見下ろす高台の旧小学校の体育館を活用している。その入口にこれも作品かと思うほどに人目をひくのが樹木だ。強風に吹かれて曲がっているのだ=写真・上=。能登の厳しい自然環境を感じさせる。
このミュージアムのコンセプトは「大蔵ざらえプロジェクト」。珠洲は古来より農業や漁業、商いが盛んだったが、道具や用具=写真・中=などは時代とともに使われる機会が減り、多くが家の蔵や納屋に眠ったまま忘れ去れていた。市民の協力を得て蔵ざらえしたこれらの道具や用具を用いて、アーティストと専門家が関わり、民族博物館と劇場が一体化したシアター・ミュージアムが創られた。芸術祭終了後も常設施設として残される。
市内の旧家もアートの展示会場になっている。古民家の家財道具を寄せ集め、天井から生える木のように見せる作品「いえの木」=写真・下=。金沢美術工芸大学アートプロジェクトチーム「スズプロ」が制作した。作品をよく見ると、旧式の扇風機やテレビに混じって「小作米領収帳」が見えた。その土地で何代にも渡り生きてきた人々の生活がにじみでている。
美大の学生たちは一年を通して珠洲の祭りや伝統行事に参加しながら地域交流を深め、地道なフィールドワークを行っている。日本海を見渡すこの地で、奥能登でしか表現し得ないアートとは何か、実に壮大なテーマではある。
⇒5日(金)夜・金沢の天気 くもり
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