自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆2017 ミサ・ソレニムス~3

2017年12月27日 | ⇒ドキュメント回廊

       能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。漁は6月から始まり、例年ならば1月末までが漁期なのだが、石川県漁協に所属する中型イカ釣り漁船14隻は年内で操業を終えることを決めた、と地元紙などが報じている。日本海を漁場とする漁業関係者にとって、今年は北朝鮮に翻弄された1年だったと言っても過言ではない。

       北からのミサイル、違法操業、そして「漂う危険物」

   北からの最初の一撃は3月6日だった。北朝鮮が「スカッドER」と推定される中距離弾道ミサイル弾道ミサイル4発を発射、そのうちの1発が能登半島から北に200㌔の海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔の海上に、いずれも1000㌔㍍上空を飛行して落下した(政府発表)。漁業関係者が大和堆でのイカ漁の準備を始めていたころである。

   北からの二撃は違法操業だ。大量に押しかけてEEZでイカの違法操業する北朝鮮の漁船が問題になった。特に、日本漁船が夜間の集魚灯をつけると、集魚灯の設備もない北朝鮮の木造漁船が近寄ってきて網漁を行う。獲物を横取りするだけでなく、網が日本船のスクリューに絡むと事故になる危険性にさらされた。7月26日、国会内の会議室で「大和堆漁場・違法操業に関する緊急集会」が開かれた。衆院選挙区石川三区(能登)選出の北村茂男代議士の呼びかけで開かれ、関係する国会議員や漁業関係者が参加した。

    質問が集中したのは海上保安庁に対してだった。海上保安庁も巡視船で退去警告や放水で違法操業に対応していたのが、イタチごっこの状態だった。漁業関係者からは「退去警告や放水では逆に相手からなめられる(疎んじられる)」と声が上がった。違法操業の漁船に対して、漁船の立ち入り調査をする臨検、あるいは船長ら乗組員の拿捕といった強い排除行動を実施しないと取り締まりの効果が上がらない、と関係者は苛立ちを募らせ、石川県漁協の組合長が強い排除行動を求める要望書を手渡したのだった。

    言うまでもないが、領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。そのような北朝鮮の漁船に排除行動を仕掛けると、北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる可能性がある。取り締まる側としてはそこが悩ましいところなのだ。

   そして、三撃は北の木造漁船の漂着や漂流だ。ことし11月以降、能登半島や東北地方の沿岸などで相次ぎ、転覆した木造漁船などはレーダーでも目視でも確認しにくいため、衝突の可能性が出てくる。まさに「漂う危険物」にさらされた。さらに、水難救助法では漂着の木造船を処分するのは自治体と定められている。漂着船の解体には少なくとも数十万円もの経費がかかる。海でも陸でも厄介な代物なのだ。

   北朝鮮の慢性的な食糧不足から国策として漁業を奨励し、「冬季漁獲戦闘」と鼓舞し波の高い冬場も無理して船を出しているようだ。北朝鮮は沿岸付近の漁業権を中国企業に売却しており、漁師たちは遠洋に出ざるを得ない状況に置かれているとも一部で報じられている。冬型の気圧配置、北風で波が高くなるこの時期、いくら食糧確保のためとはいえ、古い木造漁船で出漁を煽るとは、難破の悲劇をわざわざつくり出しているようなものだ。来年もこれが繰り返されるのか。(※写真は11月に能登半島・珠洲市の海岸に漂着した木造漁船)

⇒27日(水)夜・金沢の天気    ゆき


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