自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆台湾旅記~5~

2011年11月15日 | ⇒ドキュメント回廊

 帰国する6日、台湾の国立故宮博物院(台北市士林区)=写真=を見学した。山中にあるが、付近は高級住宅街が広がる。第二次世界大戦後、国共内戦が激化し、中華民国政府が台湾へと撤退する際に北京の故宮博物院から収蔵品を精選して運び出した。その数は3000箱、61万点にも及んだ。それが世界四大博物館の一つに数えらるゆえんとされる。

        2つの故宮めぐり、中国の歴史ロマンを彷彿と

 国立台北護理健康大学の教員スタッフが案内してくれた。「まず、キャベツでしょう」と連れて行かれた展示室で見たのが、中国・清朝時代の「翆玉白菜」(写真は国立故宮博物院のホームページから)。長さ19㌢、幅10㌢ほど造形ながら、本物の白菜そっくりだ。とくに日本人にとっても身近な野菜だけに、その色合いが人を和ませる。ヒスイの原石を彫刻して作ったというから、おそらく工人はまずこの色合いからイメージを膨らませ、白菜を彫ったのではないか。これが逆で、白菜を彫れと言われて原石を探したのであれば大変な作業だったに違いない。清く真っ白な部分と緑の葉。その葉の上にキリギリスとイナゴがとまっている。

 博物院では、清朝の康熙大帝とフランスのルイ14世の特別展が開催されていた。解説書では、遠く隔たった2人の君主であったが、フランスのイエズス会宣教師らによって交流が生まれていたという。ルイ14世が康熙帝に宛てた書簡なども展示されていた。また、フランス絵画の影響を受けた中国絵画、中国をモチーフしたフランスの絵画などが展示され、東西の文明が互いに刺激し合ったとの展示のコンセプトがよく見えた。

 1960年代から1970年代に中華人民共和国で起きた文化大革命が起き、封建社会の文化財に対する組織的な破壊活動があった。その歴史から、台湾への所蔵品の移送は貴重な文化遺産を結果的に保護したという意味合いもあったろう。いろいろと思いめぐらせながら故宮博物院を後にした。

 ことし6月に北京を訪れた折、紫禁城(故宮)を見学した=写真=。明朝と清朝の旧王宮である歴史的建造物。「北京と瀋陽の明・清王朝皇宮」の一つとしてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。72㌶の広大な敷地に展開する世界最大の宮殿の遺構だ。1949年、毛沢東は城門の一つである天安門で中華人民共和国の建国を宣言した。訪れたとき、この現代中国の歴史的なシンボルの場所で、突然激しく叩きつけるような風雨に見舞われた。雷鳴とともに逃げ惑う多数の観光客の姿はまるで映画のシーンのようだった。

 この半年で、北京では紫禁城(故宮)を半日かけて歩き、台北では国立故宮博物院の名品の数々を鑑賞する機会に恵まれた。この二つの体験が、故宮をめぐる中国の歴史ロマンを彷彿(ほうふつ)とさせる。

⇒15日(火)夜・金沢の天気   あめ


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