自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★ツイッターに始まり、ツイッターに終わる

2021年01月14日 | ⇒メディア時評

         けさのNHKニュースで、アメリカの議会下院はトランプ大統領の罷免を求める弾劾訴追の決議案を賛成多数で可決したと伝えている。今月6日に暴徒化したトランプ氏支持者らが連邦議会議事堂に乱入した事件を巡って、トランプ氏の言動が騒乱を煽ったとして「反乱の扇動」にあたるとして、民主党が弾劾訴追の決議案を議会下院に提出していた。訴追後、議会上院で有罪か無罪かを判断する弾劾裁判が開かれるが、トランプ氏の大統領任期は今月20日までなので、裁判が開かれる場合は退任後になる可能性もある。このニュースで浮かんだ言葉が「ツイッターに始まり、ツイッターで終わる」だった。

   ツイッター社は今月8日、トランプ氏の個人アカウントを永久停止にしたと発表した=写真・上=。同社が問題にしたのはトランプ氏が同日投稿した2つの言葉だった。「“The 75,000,000 great American Patriots who voted for me, AMERICA FIRST, and MAKE AMERICA GREAT AGAIN・・・」「“To all of those who have asked, I will not be going to the Inauguration on January 20th.”」

   同社の発表文によると、再度の連邦議会議事堂への暴徒の乱入が予想され、緊張が続いていることから、「The 75,000,000 great American Patriots(7500万人の偉大なアメリカの愛国者)」という呼びかけは議事堂の占拠への支持を表明しているとも解釈され、また、20日のバイデン大統領の就任式へのトランプ氏の欠席は就任式での暴力行為を企てている者を後押ししかねない、と同社は解釈した。これらのツイートが 「Glorification of Violence」 ポリシーに違反していると判断し、永久停止を決めたとしている。

     ツイッターをはじめSNSを政治の舞台で活用したのは、トランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社、ボーイング社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発した。ホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で企業に一方的な要望を伝えるという前代未聞のやり方だった。その後、トランプ氏を見習って世界の政治家たちが使い始めた。

   印象に残るのは、2019年6月29日、大阪でのG20に参加したトランプ氏がツイッター=写真・下=だ。韓国訪問の際に南北軍事境界線の非武装地帯(DMZ)を訪れることを明らかにし、「While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!」(意訳:北朝鮮のキム主席がこれを見たら、握手してあいさつするためだけでも南北軍事境界線DMZで彼と会うかも?!」とツートした。すると、翌日30日午後3時45分、DMZでの電撃的な第3回米朝首脳会談が実現した。ツイッターを外交にも利用するトランプ氏のスゴ技に世界は驚いた。

   アカウントが永久停止になった週明け11日のアメリカ株式市場でツイッター社の株が一時12%急落し、時価総額が50億㌦近くも吹き飛んだ。株価はその後は6%安で推移した。ツイッター上でトランプ氏のフォロワーは8800万人に上っていた。同社をはじめ今後SNSに対する規制が強まるのではないかという懸念も広がった(1月12日付・ロイター通信Web版日本語)。

   おそらく、トランプ氏が破天荒にツイッターを使わなければその存在価値も高まらなかっただろう。そして、存在価値が高まったがゆえに使用規制のポリシーをつくらざるを得なくなった。そのポリシーにトランプ氏は縛られてしまった。

⇒14日(木)午前・金沢の天気    あめ


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