自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★憲法改正の世論トレンドを読む

2021年05月03日 | ⇒ニュース走査

   きょうは憲法記念日。この日にちなんでメディア各社が世論調査を実施している。それを読み解くと、憲法に対する日本人の感覚がこれまでとは違っていることが分かる。そのトレンドを読んでみる。

   朝日新聞(5月3日付)の世論調査を見る。「いまの憲法を変える必要があるか」の問いでは、「変える必要がある」が45%(昨年調査43%)、「変える必要はない」が44%(同46%)だった。憲法第9条を「変えないほうがよい」61%(同65%)が、「変えるほうがよい」30%(同27%)を上回った。調査は全国の有権者から3千人を選び、郵送で3月上旬から4月中旬に実施。有効回答は2175で、回収率は73%。

   NHKニュースWeb版(5月2日付)の世論調査。今の憲法を改正する必要があると思うかの問いでは、「改正する必要があると思う」が33%、「改正する必要はないと思う」が20%、「どちらともいえない」が42%だった。戦争の放棄を定めた憲法9条を改正する必要があると思うかどうか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が28%、「改正する必要はないと思う」が32%、「どちらともいえない」が36%だった。昨年の同じ時期に行った調査と比べると、「改正する必要がある」はほぼ同じ割合だったのに対し、「改正する必要はない」は5ポイント減少した。調査は4月23日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDで実施。調査対象となった2808人の54.6%にあたる1533人から回答。

   読売新聞(5月3日付)の世論調査では、憲法を「改正する方がよい」は56%となり、前年の同時期の調査49%から上昇した。「改正しない方がよい」は前回から8ポイント低下の40%。近年は憲法改正の賛成派と反対派が5割前後で拮抗していたが、今回は差が16ポイントに広がった。調査は郵送方式で3月9日から4月15日、全国の有権者3000人を対象に実施し、2155人から回答があった(回答率72%)。

   上記の3つの世論調査から、憲法を「改正する方がよい」という民意のトレンドが読める。民意をそう傾けている要因は少なくとも2つあるのではないか。一つはやはり新型コロナウイルスの感染拡大だ。大阪市長で日本維新の会の松井一郎氏が記者会見(4月30日)で、「政治の責任として私権制限についてタブー視することなく議論すべきだということを今、突きつけられている。有事の場合にどういう形で人の動きを抑制できるのかということを、私権制限を含めて議論すべきだ」と述べた(4月30日付・NHKニュースWeb版)。

   憲法では基本的人権が重要な構成要素であり、「私権制限」を口にすることですらご法度だ。しかし、このコロナ禍で店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿が先日もテレビで報じられていた。こうした現実を見ると、政府や行政が緊急事態宣言で実行性を伴った権限で対応できるよう、私権制限もある意味で必要だという意識が民意として高まっているのではないだろうか。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆ニュースをリアルタイムで知... | トップ | ☆WHOテドロス事務局長の再選... »

コメントを投稿

⇒ニュース走査」カテゴリの最新記事