ロシアによるウクライナ侵攻からきょう24日で1年となった。ロシアが掲げる「偽旗(にせはた)=false flag」は世界から不信感を買った。偽の国旗を掲げて敵方をあざむいたり、被害者を装ったり、降参したふりをして相手のスキを突いたりと相手方を騙す意味で使われる。
~ディープフェイク vs ITアーミー 戦いはデジタル戦に~
去年3月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張し、まさに偽旗を掲げた。
これに対し、国連で軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長が「国連としてはいかなる計画も把握していない」と報告。イギリスの国連大使は「うその情報を広げるために常任理事国の立場を悪用するロシアを許してはならない」と述べるなど、各国からはロシアを非難する発言が相次いだ。
ロシアの偽旗作戦はアナログな手法にとどまらず、デジタル戦も仕掛けている。去年3月、「ディーブフェイク」が問題となった。ウクライナのゼレンスキー大統領が自国民に降伏を呼びかける偽動画がSNSなどで拡散した。このディープフェイクはAI技術を使ってつくられたもので、ウクライナ国内の内部かく乱を狙ったものだった。そして、この一件で露呈したのがロシア系のハッカー集団の存在だった。
ウオールストリートジャーナルWeb版(2022年3月28日付)は「Secret World of Pro-Russia Hacking Group Exposed in Leak」の見出しで、ロシアのデジタル戦について報じている=写真=。コンピューターウイルスなど悪意のあるソフトウェアを総称して「マルウェア=malware」と呼ぶが、ロシア系のハッカー集団はマルウェアを駆使して400を超えるアメリカの病院を攻撃し、病院のコンピューターシステムを人質にすることを計画。失敗に終わったものの、欧米諸国とウクライナはこれを機にデジタル戦で協力体制を構築することになる。
さらに、ロシアはウクライナの都市の通信インフラを狙ってミサイル攻撃を仕掛けた。ウクライナはイーロン・マスク氏が率いる「SpaceX」の衛星インターネットアクセスの使用を要望し、マスク氏は許諾した。これをきっかけに、ウクライナのインターネット防衛とロシアへのサイバー攻撃を行う、「ITアーミー」と呼ばれるボランティア団体が世界各地で自発的に組織され、ロシア系のハッカー集団と暗闘を繰り広げている。戦争のカタチが大きく変わりつつある。
⇒24日(金)夜・金沢の天気 くもり時々あめ
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます