テニスの大坂なおみ選手が、アメリカのウィスコンシン州で黒人の男性が警察官に背後から撃たれた事件(8月23日)に抗議して、27日に出場予定だった全米オープンの前哨戦であるツアー大会の準決勝のボイコットを表明したと報じられている(8月27日付・NHKニュースWeb版)。大坂選手は自身のツイッターで「私はアスリートになる前は黒人女性です」「黒人に起こった権利剥奪、全身性人種差別、その他の数えきれないほどの怪物は、私の胃を病気にさせます」とコメントしている。また、NBA=アメリカプロバスケットボールの八村塁選手も、一連の抗議デモの発端となったミネソタ州で黒人男性が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件(ことし5月25日)で抗議デモに参加している。黒人差別の抗議活動はスポーツ界に広がっている。
抗議活動は日本のメディアでもよく紹介されるが、記事を読んでいて、警察官が黒人をどのような罪があって取り押さえ、それが死亡につながったのかという事実関係が伝わってこないのだ。ウィスコンシン州の事件では、黒人男性に「性的暴行と家庭内暴力の容疑で逮捕状が出ていた」(8月25日付・BBCニュースWeb版日本語)と書かれている。なぜ警察官が取り囲んで発砲したのか詳しい記述がない。ネットでの関連の動画を見る限りでは、警察官を振り切った男性が車ドアを開けて乗り込もうと身をかがめた男性を背後から撃っている。身をかがめた男性が車の座席に置いていたピストルを取ろうとしたので警察官が撃ったのではないだろうかと自身は憶測した。
ミネソタ州で白人警官に逮捕される際に暴行を受けて死亡した事件も当初、警察官が男性を捕捉した理由が分からなった。6月10日に黒人男性の弟がアメリカ下院司法委員会の公聴会に出席し、20㌦の偽札を利用してたばこを買おうとして通報され、警察に取り押さえられたと証言(6月11日付・ ロイター通信Web版日本語)したことで、その理由が分かった。弟は「兄は誰も傷つけなかった。20㌦のために命を落とす必要はなかった。黒人の命は20㌦の価値しかないのだろうか。今は2020年だ。こうしたことはもう終わりにしてほしい」と訴えた(同)。が、その偽札は単独犯なのか、あるいは背後にマフィアなどの組織があるのか、踏み込んだ記事掲載を見たことがない。
警察官が犯罪を取り締まる行為の一環として取り押さえるというのであれば問題ではない。ただ、黒人を取り締まる行為そのものが不当な差別的な行為だと読める論調が多い。メディアは黒人の抗議デモが起きたという事実を先行してニュースとしているからだ。これでは視聴者や読者は冷静な判断ができない。メディアが対立の構図をつくっているようなものだ。
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