自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★大型連休明け 「日常」に戻るも被災地には多難が

2023年05月08日 | ⇒ニュース走査

   能登半島の尖端、珠洲市で今月5日に起きたマグニチュード6.5、震度6強の地震は、日が経つにつれ被害が明らかになって来た。石川県はきょう8日、災害対策本部会議を開き、同市で建物352棟の被害を確認したと明らかにした。応急危険度判定の結果、139棟が「危険」、213棟が「要注意」とされた。7日現在、930棟の判定を実施し、578棟は「問題なし」だった(8日付・共同通信Web版)。珠洲市の世帯数は5400世帯余りなので、今後調べを進めれば、「危険」「要注意」の数字はさらに膨らんでいくのではないか。

   大型連休明けで、被災地にも日常が戻る。地元メディアによると、同市の小中・高校ともきょう通常の授業が再開された。300人の生徒が通う県立高校では、地震で図書室の本が散乱したり、渡り廊下の床や壁にヒビなど校舎に多数の破損が見つかっている。これまで教職員が中心になって片付けを進め、きょうから登校を再開したものの、教室での散乱は生徒たちは2時間かけて片付けを行い、3限目の午前10時半から通常通りの授業を再開した(8日付・北陸放送ニュースWeb版)。

   同市の学校関係のホームページをチェックすると、揺れの強い地域だった正院地区の正院小学校のHPがきょう付で更新されていた。同校は住民の避難場所にもなっている。以下、写真とコメントを引用する。「【8時15分~全校朝会】 体育館が避難所となったことで、1階プレイルームで臨時の全校朝会を行いました。校長からは、今日みんなが元気に登校してくれたことがうれしかったこと、避難所となったことで学校生活に少し不便があること、それでもみんなで『地震に負けない正院小学校』にしようと話しました。『地震に負けない正院小学校』とは『みんなが今までように、いつもどおりの生活をしてがんばること』であることも話しました。みんな真剣にうなづきながら聞いてくれました」。上記のコメントから、教職員による子どもたちへの心のケアは相当の労力と察する。

   そして大雨。珠洲市など能登地方の広い範囲に出されていた大雨警報はきょう午前、すべて解除された。ただ、同市では6日の降り始めから8日午前5時までの降水量が116㍉に及んでいることから、金沢地方気象台は、揺れが強かった地域では地盤が緩んでいるおそれがあり、土砂災害に注意するよう呼びかけている。同市も、土砂災害警戒区域にある9つの地区の740世帯1630人に対し、避難指示を引き続き出している。

⇒8日(月)午後・金沢の天気    くもり

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☆震度6強の被災地にさらなる非情の雨

2023年05月07日 | ⇒ニュース走査

   おととい5日午後2時42分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、半島尖端の珠洲市では震度6強の揺れを観測した。隣接の能登町では震度5強、同じく輪島市で震度5弱だった。さらに、同日午後9時58分にもマグニチュード5.9の地震が発生し、珠洲市では震度5強が観測。気象庁の観測データによると、震度1以上の揺れは5日だけで58回、6日夜から7日午前10時までに6回発生している。今回の地震で1人死亡、33人が負傷している。

   災難は続く。能登地方では、前線の影響で6日夕方から雨脚が強まったことから、金沢地方気象台は同日午後9時7分に、珠洲市と能登町に大雨警報を、輪島市などに注意報を出した。きょう7日午後6時までの24時間雨量は、多いところで120㍉と予想される。大雨を受けて、珠洲市は6日午後5時、土砂災害警戒区域にある9地区の合わせて740世帯1630人に避難指示を出した。まさに非情の雨だ。

   珠洲市の知り合いにメールをした。木炭製造会社を経営する大野長一郎さんは伝統的な炭焼きを今も生業(なりわい)としている県内で唯一の事業所で、付加価値の高い茶道用の炭の生産にも力を入れている。自宅と作業場は市内の山中にある。メールで被害を尋ねると、「自宅は多少被害はあったものの、不自由なく暮らせている」とのこと。問題は仕事場で、「(炭焼き)窯は崩壊を免れたものの、3つの窯のどれにもヒビが多く入り、余震が続くと崩落の恐れもある。どうしたものかと考えあぐねている」と今後のなりゆきを心配している返信だった。

   メディア各社の報道によると、政府の地震調査委員会は6日の臨時会で見解をまとめた。2020年12月から活発化した一連の地震は、地下深くの流体が誘発しているとみられ、活動域は半島尖端の北側の海域に広がっていることが確認された。今後、海側で強い地震が起きた場合は津波が発生する可能性もあると指摘している。委員長の平田直・東大名誉教授は記者会見で、地震活動は当分続き、「震度6強の揺れは2、3日の間には起きると思って十分に注意してほしい」と呼びかけた。

⇒7日(日)午後・金沢の天気    あめ

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★能登半島の尖端が大揺れ 震度6強

2023年05月05日 | ⇒ニュース走査

   きょう午後2時42分ごろ、スマホに緊急地震速報のアラームが不気味に鳴った。金沢の自宅にいたが、グラッグラッと横揺れがあり、さらに突き上げるような揺れになった。思わず自宅の天井を見上げた。ミシッミシッと音がした。20秒ほどの揺れだっただろうか。その後も小さな揺れが断続的に続いた。棚から物が落ちたりといったことはなかった。

   テレビをつけNHK総合を視ると、能登半島の尖端にある珠洲市でマグニチュード6.3(※後に6.5に修正された)、震度6強の地震だった=震度図=。午後5時現在、同市の総合病院にはけが人13人が運ばれ、うち1人が死亡した。能登半島での震度6強は2007年3月25日以来だ。このときはマグニチュード6.9の揺れで、輪島市や七尾市、輪島市、穴水町で家屋2400棟余りが全半壊し、死者1人、重軽傷者は330人だった。

   能登半島では2020年12月以降、地震が頻発するようになった。気象庁による緊急地震速報が発出された地震は今回で9回におよぶ。2022年6月19日には震度6弱(マグニチュード5.4)、翌日20日には震度5強(同5.0)と続いた。ことしに入って、珠洲市付近で観測された震度1以上の揺れはきのう4日までに49回を数えていた。(※写真は、去年6月20日午前10時31分の震度5強の揺れで、珠洲市の観光名所である見附島の側面の一部が土煙を上げて崩れる様子)

   2022年7月11日に開催された政府の地震調査委員会の定例会合では能登半島の地震について重点的に議論された。地震活動の原因について、「地震活動域に外部から何らかの力が作用することで地震活動が活発になっている可能性」が考えられ、その外部からの作用とは「能登半島北部での温泉水の分析からは、何らかの流体が関与している可能性がある」としている。その流体の作用によって、岩盤が球状に膨らむ「球状圧力源」、岩盤の亀裂が板状に開く「開口割れ目」、断層がすべる「断層すべり」の3つの揺れの原因が考えられるが、「いずれの可能性も考えることができ、原因を1つに特定することは困難」としている。

   気象庁は午後4時40分から記者会見を行った。きょう能登では震度1以上の地震が13回観測されている。揺れの強かった能登北部の地域では、今後1週間程度は、同じ規模の地震が発生する恐れがあるとのこと。特に、この2、3日の間は注意が必要と呼びかけていた。

⇒5日(金)夜・金沢の天気    くもり

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☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

2023年05月04日 | ⇒ニュース走査

   モスクワのクレムリン上院宮殿の建物の上にある旗ざおの近くでドローンが撃ち落された映像が世界のニュースになっている。メディア各社の報道によると、ロシア大統領府は3日、「2機の無人機が夜、首都モスクワのクレムリンにある大統領府を攻撃しようとした。無人機は軍や特殊部隊によってレーダーで無力化され、クレムリンの敷地内に破片が落下した。被害は出ていない」と発表した(NHKニュースWeb版)。

   また、ロシア大統領府は無人機による攻撃の試みはウクライナのゼレンスキー政権によるものだとして、「ロシアの大統領を狙ったテロ行為だ」と主張。そのうえで「ロシアは適切な時期と場所で報復する権利がある」と報復措置を取るとしている(同)。

   これに対して、ウクライナ大統領のスポークスマンは「ゼレンスキー大統領が以前に何度も述べたように、ウクライナは他国を攻撃するのではなく、自国の領土を解放するために自由に使えるあらゆる手段を使用している」と述べ、ドローンによるクレムリンへの攻撃を否定している(CNNニュースWeb版)。

   アメリカのブリンケン国務長官はワシントン・ポスト紙主催の会合で、何が起きたかは「全く分からない」とし、事実関係を確認すると表明。「ロシアの言うことをうのみにはしない」とも述べ、ロシアの主張に懐疑的な見方を示した(共同通信Web版)。クレムリンでのドローン撃墜がロシアの偽旗作戦(自作自演)かどうかを判断する決定的な証拠は見当たらないものの、だからと言って、証拠が見当たらなければそれが直ちにウクライナによる攻撃であることの証拠にはならない。 むしろ、証明すべきはロシア側の責任だろう。

   上記に関連して、BBCニュースWeb版(4日付)の論調はロシア側の矛盾を突いている=写真=。「Kremlin drone attack is highly embarrassing for Moscow」の見出しで、クレムリンが言っていることが真実であり、プーチン大統領を狙ったものだとすれば、それはクレムリンにとって「非常に恥ずかしい事件」ではないのか、と質している。要約すると、記事の写真にもあるようにクレムリンの空域は厳重な警備下にある。なぜ、ロシア軍はクレムリンに飛来するまでこのドローンを迎撃しなかったのか、大きな疑問が残る。むしろ、この矛盾を解明すべきではないのか、と。

           確かに、ウクライナのドローンが突然、クレムリンに現れたとすれば、それはなぜなのか、ロシアが証明しなければ、「やはり偽旗か」と世界のロシアに対する不信の念は一層深まる。

⇒4日(木)午後・金沢の天気    はれ  

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★憲法とデジタル社会  チャットGDPが問うこと

2023年05月03日 | ⇒メディア時評

   人と会えばよく会話をするタイプだが、雑談から入るクセがある。会った人にはまったく関係のない、季節の草花の話や時事ネタ、グルメのことなので雑談もいいとこだ。そこから、しばらく間をおいて本題に入る。なので、相手方は「うだうだと話が長い」「要件をはやく言え」と思うに違いない。こうした雑談は、チャットGDPとは真逆の会話かもしれない、と思うことがある。

   対話型AIの代表格となっているチャットGDPは、情報のやりとりはするが、雑談はしない。「雑談をしようよ」と話しかると、「何について話しますか」との返事になり、「何でもいいよ」と返すと、「それではお話しができません」となる。チャットGDPとすると、ネット上の膨大なデータを持っていて、返事をしたくてうずうずとしているのだろう。ところが、「何でもいいよ」ではレスポンスができない。

   逆に言えば、新たに雑談対応能力として、「それでは季節の話題を話します」と言って、「金沢市にある兼六園ではカキツバタが咲き始め、緑色の風景に美しい紫の花を咲かせています」などと話し始めると、これはこれで対話型AIの機能がさらにアップするのではないか。雑談ができるチャットGDPの能力開発は近いかもしれない。

   きょう3日は施行から76年を迎えた日本国憲法の憲法記念日。よく考えれば、憲法にはデジタル社会のことが盛り込まれてはいない。たとえば、プライバシーの権利は憲法第13条(幸福追求権)によって保障された基本的人権であり、私人と私人の間でもプライバシーの権利の侵害は民法の不法行為(民法709条)である。ところが、ネット上では極端な例が、過去に犯した過ちがニュースとして実名で残っていたり、FacebookやInstagramで自撮りの写真や映像が拡散したりしている。さらに、クッキー(Cookie)を始めとしたネットでの検索や閲覧の履歴が知らないうちに情報としてアップされていることもある。

   チャットGDPによって、上記のようなデータがひとまとめにして他人に共有されることを考えると、プライバシー権などないに等しい。デジタル社会におけるデータ保護は国民の基本的な権利であるとする「データ基本権」を憲法に明記すべきではないだろうか。(※写真は日本国憲法原本=Wikipedia「日本国憲法」より)

⇒3日(水)午後・金沢の天気    はれ

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☆人権侵害や国土防衛にどう手立て あす憲法記念日

2023年05月02日 | ⇒メディア時評

   あす3日の憲法記念日を前に共同通信が行った憲法に関する世論調査(郵送方式)の結果が各紙で報じられている。目を引いた項目は「問5:憲法に関し、あなたが国会で議論してほしいテーマは何ですか。優先度の高いものを三つまでお答えください」。答えのトップは「九条と自衛隊」38%で、「社会保障などの生存権」32%、「教育」25%、「大災害時などの緊急事態」24%、「デジタル社会での人権」22%などと続いている。

   「九条と自衛隊」がトップなのは、隣国のロシアによるウクライナ侵攻が北方領土から北海道へと連鎖反応するのではないか、北朝鮮は弾道ミサイルを日本領土に撃ち込んでくるのではないか、中国は尖閣諸島に軍事侵攻するのではないか、といった懸念を抱く有権者がこのところ増えているからではないだろうか。日本は、国際紛争を解決する手段として戦争や武力の行使に訴えることは、憲法によって認められていない。

   この対応策の一つとして、政府は2022年12月の閣議で「国家安全保障戦略」など新たな防衛3文書を決定し、敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を明記した。ところが、北朝鮮は固体燃料ロケットの開発でICBMを素早く実践配備できるよう動いている。追尾して発射前に叩くことはできるのだろうか。

   そして最近とくに高まっている懸念という意味では「デジタル社会での人権」もそうだ。他人への誹謗中傷や侮辱、プライバシーの侵害、SNSいじめ、ヘイトスピーチなど。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがSNSの誹謗中傷を苦に自死した事件(2020年5月)はその典型的な事案だろう。この事件がきっかけで、公然と人を侮辱した行為に適用される侮辱罪に、「1年以下の懲役・禁錮」と「30万円以下の罰金」を加えられて厳罰化した。しかし、刑法の厳罰化によって、SNSの誹謗中傷は治まったと言えるだろうか。

   デジタル社会の人権問題はさらに複雑だ。たとえば、児童ポルノはその画像がいったんネット上で出回ると、画像のコピーが転々と拡散して回収が極めて困難となる。被害者は将来にわたって苦しむことになる。重大な人権侵害だ。

   衆参の国会議員には法の見直しによる対応や与野党の足の引っ張り合いではなく、憲法そのものをテーマに本筋の議論を深めてもらいたい。

⇒2日(火)午後・金沢の天気    はれ   

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★五月晴れ 梢のざわめきの中で庭仕事を楽しむ

2023年05月01日 | ⇒ドキュメント回廊

   きょうから5月、新緑がまぶしほどに樹木や山野草の生命力もあふれる。庭には、ドクダミやチドメグサ、スギナ、ヨモギ、ヤブカラシが顔を出している。きょう午後、2時間ほど草むしり(雑草取り)をした。地面と向き合うと、不思議と無心になる。

   知識豊富な友人から「草むしりは禅修行のようなものだよ」と聞かされたことがある。座禅を組みながら自分と向き合い悟りの境地を目指すように、草むしりは地面と向き合いながらひたすら手を動かし無心の境地に入る。草取りを終えて地面を眺めると、雑念が払われたかようにすっきりとした空間が広がる。その瞬間、草むしりという作業ができたことに感謝の念と充実感が心に漂う。

   草むしりをしていて、かつて読んだ本を思い出すことがある。ドイツの詩人、ヘルマン・ヘッセの庭仕事に関する詩やエッセイを集めて出版された『庭仕事の愉しみ』(草思社)。その著書に、「青春時代の庭」という詩が載っている。「あの涼しい庭の梢のざわめきが 私から遠のけば遠のくほど 私はいっそう深く心から耳をすまさずにはいられない その頃よりもずっと美しくひびく歌声に」(一部引用)。ヘッセには庭の梢(こずえ)のざわめきがハーモニーのような美しい歌声に聞こえたのだろう。

   ヘッセのこの心境を表現するような床の間の掛け物がある。「閑坐聴松風」(かんざして しょうふうをきく)という禅語で、茶席によく掛かる。静かに心落ち着かせて坐り、松林を通り抜ける風の音を聴く。松に限らず、近くにある木が風に揺られ、サラサラと鳴っている音、鳥や虫の音が心地よく聴こえるという意味と解釈している。五月晴れのもと梢のざわめきを聴きながら草むしりをする。至福のひとときでもある。

⇒1日(月)夜・金沢の天気     はれ

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