左は、始めた頃の作品 右は、最近の作品(美意延年)
?硬い石を刻るのですか?
魚とは全く関係のない「篆刻」を趣味にしています。
共通点を探すとすれば、刃物で切り刻むことかと思います。
篆刻は一般にあまり馴染みがないため、篆刻をやっていると言うとたいていの人は、
「石を刻るのですか?」
「硬い石をどうやって刻るのですか?」
「1個作るのにどのくらい時間がかかるんですか?」と聞かれます。
ansこたえはans
「石に刻ります」
「軟らかい石ですから、彫刻刀で刻ります」と答えますが、
最後の一問が難しいのです。
「刻るだけでしたら、簡単なものなら5分か10分でも刻れますが・・・ふつう1~2時間くらい。
でも、文案(原稿・デザイン)は、一週間、一ヶ月、一年もかかることもあります」
と答えます。
始めたその日から<作品>
始めたその日から”立派”に使えるもの(印)が作れるという点で、篆刻ほど
面白いものはありません。その作品にはもちろん、上手下手はあるかも知れませんが、
印は、自分を表わす一つのマークですから、自分に相応しいかどうかでよいのです。
年賀状が映える?
自分で好ましいと思えば、始めてつくった1個の印を、落款印として使えます。
わたくしが始めたきっかけは、下手な版画の年賀状でも朱の印を押すと、はるかに立派
そうに見えると思ったからです。実に浅ましい心情でした。
「印」で気持ちを伝える
ですから、作り始めた頃のものを今でも平気で使っています。
何に使うかと言えば、年賀状や手紙・はがきに使うのですが、好きな言葉を刻った印
(遊印)を押せば、自分の気持ちや季節感を表わすこともできます。
初めは自己流
わたくしは、独習・自己流で始めたのですが、手ほどきをしてくれる人(先生)が、
身近になかったからです。そして、冒頭の「質問」はわたくし自身の疑問でもありました。
これから始めてみたいと思われている方のために、多少の参考になりそうなことを書い
てみたいと思います。
石と彫刻刀
てんこくの道具は最小限、石と彫刻刀があれば刻ることができます。
道具は、書道用品の店で売っています。値段は、石は2~300円、彫刻刀も500円
くらいのものからあります。合わせて1000円あれば最小限揃います。あとは、筆・墨
・硯などですが、必要に応じて追々揃えればよいでしょう。
○印を刻る
石の面に、彫刻刀でガリガりとキズをつけてみてください。その面に朱肉かスタンプ
のインクをつけて紙に押してしてください。
石の面に、○を描いて刻ってみてください。これでも立派な「印」です。
裏文字
文字を彫る場合は、裏返しの文字を刻ります。カタカナの「イ」と刻ってみてください。
「伊藤」さんの印になります。ここでいう印は、実用に使う「印鑑」とは違います。
いわば、サインに近いかも知れません。
芋版
朱肉をつけて、ペタペタと紙に押してみてください。むかし作った、芋版や、消しゴム印
を思い出します。印という点では、材料が違うだけで同じことです。
秦の始皇帝
なぜ、篆刻というかといえば、「篆書体」という書体を使うからです。楷書とか草書と
いうその書体の一種です。あの中国の、秦の始皇帝が定めたと言われる書体が「篆書体」
です。
辞典
「篆書体」の文字は、学校では習うことがありません。書道か篆刻で使うくらいです。
従って刻りたい文字の「篆書体」を何かで調べなくてはなりません。
いろいろな印を作るのならば、いずれ「篆刻辞典」が必要になります。
完成までの手順は次のようになります。
1 刻りたい文字を決める =文案
2 印に彫る書体をデザインする・・・紙に描く=印稿
3 原稿を印面に裏返しに描く =布字
4 彫刻刀(印刀)で刻る =刻印
5 朱肉をつけて紙に押す =完成
以上は、ごく簡単に手順を書きましたが、細かな手順・技法は篆刻の手引書をみることを
お奨めします。篆刻は長い歴史を持つ古典芸術ですから、わたくしなどにはとても語れるもの
ではありませんが、書道・絵画に比べて取り掛かりにくいように思われますので、わが身を省
みず書かせていただきました。 一人でも多く篆刻に親しんでいただけたらと思う次第です。
これからも、<印>ができたら、お粗末ながら、続けて書かせていただきます。