Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
2/9夜 火星と月が大接近

非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【ディープスカイ撮影編-2】

2024-04-21 00:01:28 | 撮影機材

昨年末に入手したCMOSカメラで狙った2つ目のディープスカイ天体は春を代表するこの銀河でした。


【子持ち銀河 M51(りょうけん座)】
 ZWO ASI585MC+タカハシε-180EDC,F2.8,Gain300,STARRY NIGHTフィルター,
 総露出時間24分(3分×8フレーム,加算コンポジット),タカハシEM-200Temma2M赤道儀,
 口径25mmガイド鏡にて恒星オートガイド,新潟県十日町市にて

りょうけん座にある有名な銀河で、当ブログでは何度となく登場してきている個人的に大好きな天体です。
大きめの銀河なんですけど、焦点距離が500mmでは写野全体に対する被写体の占有率が低くて寂しい写りです。
でも、フルサイズセンサー搭載のデジイチと比べたら、画角はかなり狭いんです。星空シミュレーションソフトで
写野比較をしてみたら・・・


 AstroArts社ステラナビゲータにて作成
赤色枠はキヤノンEOS Raで500mmの写野,黄色枠はASI585MCで500mmの写野,水色枠はEOS Raで2000mmの写野)

同じ望遠鏡を使っても、1/1.2型センサーの写野はフルサイズセンサーと比べ面積比で1/9以下になることが判明。
出力画像のアスペクト比(縦横比)が異なりますが、もしフルサイズセンサー搭載カメラで同等の狭い画角で撮ろうと
したら、2000mm近い焦点距離の光学系が必要になる訳で、視直径の小さい天体を拡大して狙うならCMSOカメラの方が
断然有利ってことになります。但し、解像度についてはセンサーのピクセルサイズに依存することに留意する必要が
あります。ちなみに、カメラの画素ピッチを調べると、キヤノンEOS Raは5.4μm、ZWO ASI585MCは2.9μmでしたので、
ピクセルサイズの小さいCMOSカメラの方が解像度的にも期待できるようです。
そこで、銀河部分を等倍トリミングしてみると・・・

500mmにしては割と細部が捉えられた感じ。ゲインの上げ過ぎで両銀河の中心部が白飛びしたのが悔やまれますが・・・
で、参考用として、過去に得られたEOS Raによる撮影イメージの等倍トリミング画像も貼っておきます。

使用望遠鏡は同じですが、こちらは総露出時間が40分と長めのせいかS/Nが良く、階調も良好で淡い部分の写り具合は
上っていう感じがする一方、像拡大率の差は一目瞭然で、細部の解像感はイマイチな印象です。

ということで、視直径の小さい天体を狙うならデジイチよりCMOSカメラの方がベターだと認識しました。
(つづく)


非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【ディープスカイ撮影編-1】

2024-04-18 05:15:56 | 撮影機材

昨年末に入手したCMOSカメラは惑星撮影用途をメインに考えてましたが、木星や土星はオフシーズン入ってしまって、
まだ試せておらず、流星や月の動画撮影しかできてません。一応、このカメラは長時間露光も可能なので、星雲星団の
撮影に使ったらどんなパフォーマンスを示すのかちょっと調べてみたくなり、先日の中越方面への遠征時に試し撮りを
やってみました。
まずはこの季節の深夜に天頂近くまで昇り詰めるこの星団を撮影。


【球状星団 M3(りょうけん座)】
 ZWO ASI585MC+タカハシε-180EDC,F2.8,Gain120・240・360・480,STARRY NIGHTフィルター,
 総露出時間20分(1分×20フレーム,加算コンポジット),タカハシEM-200Temma2M赤道儀,
 口径25mmガイド鏡にて恒星オートガイド,新潟県十日町市にて

りょうけん座にある大型の球状星団で、光度は約6.4等と比較的明るく、口径3cmの双眼鏡で存在確認できる天体です。
使用カメラの撮像センサーは1/1.2型と小さいため写野が狭くて、焦点距離が500mmでも結構な大写しになりました。
球状星団は中心部と周辺部で輝度差が大きいので、4種類のゲイン(カメラ感度)で5フレームずつ撮って所謂HDR合成し、
階調を整えてます。これまでのデジイチ撮影では感度を固定した状態で露出時間を変えて撮ってHDR合成用の元画像を
取得してましたが、それと類似した撮影&画像処理レシピに相当し、今回は露出時間を一定にして感度を変えるという
対応にしました。
で、星団部分を等倍トリミングしてみると・・・

コア部分は白飛び気味になりましたが、この程度であれば許容範囲で、星団外縁部の糠星までしっかり捉えられたんで
ほぼ満足できるレベルです。このカメラにはハード的にノイズを劇的に抑えるための冷却機能は無いんですが、高感度
設定で撮った画像上でもホットピクセルが割と少なくて、普通のダークフレーム(望遠鏡に蓋をして遮光状態で撮った
画像)減算処理をしても、思ったほど画像が荒れたりしませんでした。なお、撮影時の気温は一桁台と低めだったので、
外気による冷却効果が少しだけあったのかもしれません。夏の暑い時期になるとノイズが一気に増えて画像処理で手に
負えなくなったりする可能性もありますが、今回の試写レベルでは意外と使える感触が得られました。
ただ、元画像は色ノリがあまり良くなく、彩度をかなり高めてやらないと鑑賞に堪える画像にならない感じだったんで
メインの惑星撮影で色の出方がどうなるのか気になるところです。
(つづく)


非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【月撮影編-1】

2024-02-23 13:58:28 | 撮影機材

先月、CMOSカメラで満月を撮った際の話です。

昨年末に入手したCMOSカメラはこれまで流星撮影にばかり用いてきましたが、元々は月・惑星撮影向きのモノなので、
先月26日、今年最初の満月となったウルフムーンで実力を試したのでした。
短焦点屈折望遠鏡にカメラを取り付け、いわゆる直焦点撮影で捉えた4K動画がコレです。


 ZWO ASI585MC+タカハシFSQ-85EDP(450mm F5.3),Gain0,2ミリ秒/フレーム,
 動画撮影時間1分,タカハシEM-200Temma2M赤道儀にて恒星時追尾

地球の自転で日周運動する天体を赤道儀のモーター駆動で追尾しており、一見すると全く動かない静止画状態の満月が
中央に写り続けているだけに見えますが、PC画面でフルスクリーン状態にして見ると月縁が細かく波打ってる様子が
確認できると思います。冬場は本州上空にジェット気流が居座っているため、シンチレーション(像の揺らぎ)が大きく、
画質が損なわれてしまうんですよねー。1分間の動画撮影で得られたフレーム数は867で、その中には像揺らぎの大小で
ボケ具合の異なるフレームが玉石混交状態になってます。そこで "AutoStakkert!3" っていう海外のソフトを用いて
相対的にシャープに撮れた良像フレーム(今回は半数)のみを自動抽出した上でスタック(自動重ね合わせ合成)を行って
ノイズを平滑化した後、"RegiStax6"という別なフリーソフトを使ってWavelet変換と呼ばれる数学的手法に基づいた
画像強調処理(AI処理/解析ではありません)を施し、解像感を高めた1つの静止画を作成するのが王道になってます。
その最終仕上げ画像を動画の最後に加えていますが、元動画で見られるイメージに比べて段違いの解像感になっている
のが分かると思います(実は動画最初のタイトルに使っているのも同じ画像)。

ところで、昨年まで月を撮るのに使っていたミラーレス一眼でも、得られた撮影動画を同様な画像処理を行って1枚の
画像を作成してましたが、カメラ搭載の撮像センサーは写野の広いフルサイズである上にフルハイビジョン(FHD)の
1980×1080ピクセルフォーマットの動画が元になってました(4K動画も撮れますが、ファイルがトンデモ容量になって
しまうので避けてます)。そのため最終仕上げ画像の解像感がイマイチでしたが、新調したCMOSカメラ搭載のセンサー
(ソニー製IMX585)は元来セキュリティ用途のため1/1.2型の小さなサイズであり、しかも4Kフォーマット(3840×2160
ピクセル)動画がUSBケーブルで接続したPCに直接取り込めるので、同じ望遠鏡を使ってもフルサイズカメラより遥かに
狭い写野範囲を細かい画素ピッチで捉えることになり、解像力の向上につながる訳です。気流の状態が良くなる季節に
なったら、長焦点望遠鏡を使ってクレーターの強拡大撮影もやってみたいですねぇ。
(多分つづく)


非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【流星撮影編-3】

2024-01-04 00:01:28 | 撮影機材

これまではハードウェアの話ばかりでしたが、ソフトウェアの方についても纏めておきます。

流星撮影時にはZWO社純正のPC用キャプチャーソフト(ASI Studio)を使いますが、その起動時画面がコレです。

ここから使用アプリを選ぶのですが、流星撮影で用いるアプリは、縦方向にスクロールするか、左側にある
選択肢の中から "Wide Field Imaging" をクリックすることで出てくる "ASIMeteorCap" になります。

アプリ名の横にある "Open" をさらにクリックすると、その初期画面が別ウィンドウで開きます。

左側の大きな枠はカメラのモニター映像を表示するエリア、右側は撮影条件等の設定パネルという仕立てです。
で、設定パネルには4つのブロックがあります。

この中の各設定項目について自分なりに把握できたところを記します。

[CAMERA SETTINGS]
CMOSカメラの撮影条件に関わる各パラメーターを設定できます。
既にZWO社製CMOSカメラのドライバーがインストール済であることが前提ですが、PCにカメラをUSB接続すれば
自動的に認識し、このブロックの最上段に機種名が表示されます。その横にある "Connect camera" ボタン
クリックすると画面左のエリアにカメラのリアルタイム映像が表示されるんですが、その前にまずは撮影条件を
設定する必要があります。なお、同じ段の右端の "Scan for new camera" ボタンは新たなカメラを接続した際に
再認識させる場合に使うようなんですけど利用シーンがよく分からず、普通なら使うことのないボタンのような
気がします。
その下には基本的な撮影条件が3つ並んでおり、個人的には次のように設定してます。
・Exposure
 1フレームあたりの露光時間で、リアルタイム動画撮影の場合は30~50ms(ミリ秒)くらいにしてます。
 非力なPCでは露光時間を短くするとフレーム落ち(Discard)が多くなってしまうので注意が必要です。
・Gain
 カメラの感度のことで、ノイズが目立たない範囲で最大値に設定するのが基本方針となるでしょうか。
 ちなみに最大値である600だとノイジーになるとともに、明るめの星の瞬きが目立つようになってしまい
 流星ではないのに動体として誤検出されたりするんで、少し低めの500~570にした方が無難です。
・Bin
 ビニングってヤツで、CMOSセンサー中の隣り合った複数の受光ピクセルで検知した光信号を足し合わせ
 見掛け上の感度を上げるためのパラメーターです。1だとビニング無しで感度不足って感じなので2か3を
 選択してます。記録される動画フレームの画素数にも影響し、ASI585MCではビニング2で1920×1080px、
 3で1280×720pxとなります。ビニング4は高感度ですが、画像が粗くなり過ぎて解像度が極端に悪くなる
 ようなので、避けた方がいいような印象でした。但し、F値の大きい(光学的に暗い)レンズの使用時は
 4を選択せざるを得なくなるかもしれません。

[SAVE SETTINGS]
ここでは流星を検出した場合に、その記録動画の保存フォルダーを指定します。ここは初期設定のフォルダーでも
構わないんですが、深い階層のフォルダーだったので、あらかじめアクセスしやすいフォルダーを作っておいて、
この部分の "..." で再設定した方がイイかも? OpenボタンはWindowsのエクスプローラーで保存先フォルダーを
開く際に使うボタンになります。ちなみに、指定したフォルダーには "CapObj" というサブフォルダーが作成され、
その中に日付を冠した下位フォルダーがさらに作成され、実際の流星動画ファイルが格納されていきます。動画の
格納フォルダーはアプリ起動後に流星を最初に検出した際に自動生成されますが、そのフォルダー名の日付部分は
世界時(UT)ベースで自動生成されるみたいで、例えば日本時間で真夜中の0時にフォルダーが作成されると時差分の
9時間遡った前日の日付が使われるようです。一方、保存される動画ファイル(AVI形式)のタイムスタンプはちゃんと
日本時間で記録されます。

[MONITOR SETTINGS]
流星(というより移動体と言うべきかも)の検出に関わる2つの設定があります。
・Sensitivity
 流星の検出感度を制御するパラメーターで、基本的に高値にすると流星の検出能力が上がりますが、
 星の瞬きなどを誤検出することが多くなるので、実体験からすると20以下で十分という感じです。
 "Exposure","Gain","Bin" の値の組合せによっては1にしても問題無く流星検出できたりしますが、
 諸々試行錯誤で決める必要がありそうです。
・Sound Alarm when meteor is detected
 流星の検出時に音を鳴らすかどうかの選択パラメーターですが、通常はONで構わないと思います。
 もちろんPCのスピーカーの設定もあらかじめONにして音が出せるようにしておく必要があります。

[MASK SETTINGS]
撮影写野内で流星検出の対象外にしたいエリアがあれば、ここをONにしておきます(具体的なエリア設定は後述)。

 

諸条件の設定後、まず "CAMERA SETTINGS" 内の "Connect camera" ボタンをクリックすることで、ウィンドウの左側の
エリアにリアルタイム映像を表示させ、レンズのフォーカス・絞りリングを操作して星がしっかり写るようにした後、
三脚ヘッドの操作で構図を決めますが、その際にカメラを上下左右に動かすと写野内で星が動いて動体として認識され
音が鳴るので、正しく検出されることを確認することができます。この時点ではまだ動画保存機能はOFFの状態なので、
全ての準備が整ったら一番下の "Enable Recording" ボタンをクリックします。それで自動流星検出&動画記録機能が
働きだし、写野内で動体(流星以外に飛行機や鳥なども含む)が検知された時のみ動画ファイルが保存されます。

で、操作中の画面はこんな感じ。

左のエリアに映っている映像に赤い枠がありますが、これは動体の検出対象外となる部分で、任意に設定できます。
設定は映像上でマウスの左ボタンドラッグ操作により行います。特に明るい恒星は気流の影響で瞬きが激しいことがあり、
それが動体として検出されたりするので、それを囲うように赤枠(Mask)を設定しておくと瞬き由来の誤検出が防げます。
地上の夜景を取り入れた場合に、クルマや列車あるいは高い建造物に付き物の点滅灯などの検出防止にも役立ちます。
その機能を使いたい場合は、"MASK SETTINGS" ブロックにある "Mask" の選択パラメーターをあらかじめONにしておく
必要があります。なお、通常の三脚にカメラを載せた場合、いわゆる日周運動で写野内の恒星が徐々に東から西へ
動いていってしまうので、恒星の移動方向に少し余裕を持たせた長方形の枠にしておくのがよいと思います。
時間経過とともに恒星が赤枠内から外れたら、その枠にマウスカーソルを合わせてから左ボタンのドラッグ操作で
枠全体を動かすことができ、対象となる恒星の瞬きの不検出時間を延長させるようなこともできます。
また、赤枠内でマウスを左クリックして枠線をハイライト表示させた後に右クリックすると "Delete selected" という
ポップアップが表示されるので、それを左クリックすると個別にMask枠のクリアができるようになってました。
もし全てのMaskを一括クリアしたい場合は "MASK SETTINGS" ブロック内の "Clear All Masks" をクリックします。

以上、"ASIMeteorCap" の基本操作について長々と記述しましたが、実際の操作は概ね感覚的に掴みやすい印象なので、
さほど難しくはありませんでした。
(まだつづくかも?)

<おまけ>
2024年1月2日宵~3日未明に捉えた比較的明るい流星3つがこちら。


非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【流星撮影編-2】

2023-12-30 20:05:55 | 撮影機材

CMOSカメラを用いた流星撮影機材の話の続きです。

流星狙いの初試写で使ったレンズは短焦点化のための0.71倍レデューサーを使ってもF2.5相当にしかならず、
流星撮影目的では明るさが少々物足りない感じなのに加え、カメラ本体より大きくて前方が重くなってしまい、
あまりにもバランスが悪過ぎるため、Amazonで小型レンズを物色していたら8mm F1.6のCCTVレンズが7000円台で
販売されてるのを発見。それを早速購入してCMOSカメラASI585MCに装着すると、こんな感じになりました。

赤いカメラ本体の底面(右側の面)の中央にある穴がカメラ三脚に取付けるためのネジ穴なんですけど、
この小型レンズなら三脚搭載時に前後バランスが悪くなるのが軽減されます。ちなみにレンズはCマウントで
カメラへのレンズ取付けには別途T2→CS/C変換アダプターっていうZWO社のアイテムが必要なんですが、
6年前に購入したCMOSカメラASI1600MC-cool用として購入済みのモノがそのまま流用できました。

で、入手したCCTVレンズは2/3"以下のサイズの受光センサー用のもので、ASI585MC搭載センサーの1/1.2"サイズだと
周辺にケラレが発生することになります。それがどの程度なのかカメラゲインをMAXにして実写チェックすると・・・

画像の4隅がやはり暗くなってしまうことが判明しました。但し、実際の撮影時にはゲインを少し落とすので、
ケラレが割と目立たなくなり、まあ妥協できるレベルかな?って感じ。
ちなみに、星空シミュレーションソフトで実写野を調べてみたら・・・


 AstroArts社ステラナビゲータにて作成

冬の大三角・オリオン座のリゲル・おうし座のアルデバラン~すばるまで捉えられることが分かりました。
出力映像のアスペクト比が16:9と横長なので、通常のデジカメとの写野比較はナンセンスかもしれませんが、
35mm判フルサイズ換算だと大体28mmレンズの画角に近いです。やはり縦方向が少し狭い感じは否めませんけどね。
まぁ、自宅ベランダでの撮影なら庇や手摺が映らずに済むっていう利点はあります。

ということで、今月半ばのふたご座流星群はこの機材で迎撃したのでした

その後も気が向いたらベランダからの撮影は続けており、今週はこんなのを捉えました。

いずれも火球レベルではないものの、かなり明るい流星だったと思われます。
実は今、顕著な流星群は特に活動していない時期なんですけど、これらの他にも意外とたくさん捉えられたんで
ちょっと驚いてます。
(つづくかも?)


非冷却CMOSカメラASI585MCでの試写【流星撮影編-1】

2023-12-21 19:25:00 | 撮影機材

6年前の夏に電子冷却機能付きの中華製CMOSカメラASI1600MC-coolを購入し、主に惑星撮影に使用してきましたが、
後にそのメーカーであるZWO社から続々と新型カメラが出てきて、そろそろ新製品が欲しいなぁーって考えてました。
特に同社提供のキャプチャーソフトの高機能化に伴い、先月には流星の動画撮影にも活用できそうな感触が得られ、
最新カメラなら高感度・低ノイズで惑星撮影も含めてパフォーマンスの大幅な向上が図れるだろうと考えていた中、
11月後半から同社の「ブラックフライデープロモーションセール」で普段より若干割引されて販売されることを知り、
カメラの機種選定を開始。所有しているカメラと同じ4/3"(フォーサーズ)サイズのセンサーで電子冷却機能付きだと
セール特価でも諭吉さん15人がかりとなり、その非冷却タイプでも10人半がかりと高価で、さすがに手が出ないため、
諭吉さん6人で太刀打ちできる非冷却のASI585MC(1/1.2"サイズセンサー搭載)を購入することになりました。

まずは惑星撮影でのパフォーマンスをチェックしたいところですが、この季節は本州上空にジェット気流が居座って
気流の状態が悪く、まともな撮影ができそうにないので後回しにし、流星撮影での性能チェックを先に実施。
今月初旬に静岡県某所で動画撮影を行い、その単独フレームを抽出した画像がコレです。

レンズはキヤノンEFマウント用のトキナー10-70mm F3.5-4.5魚眼ズームにEF-マイクロフォーサーズマウント変換兼
0.71倍レデューサーを使用。広角端の10mmにして絞り開放(換算F2.5相当)で撮ってます。単独フレームだとさすがに
ザラついたイメージに見えるものの星とノイズは容易に区別でき、下方には富士山が写ってるのも分かります。
で、同じ光学系を使って既存のASI1600MC-coolで動画撮影し、同様に単独フレームを抽出した画像がこちら。

ASI585MCよりも明らかにノイズが多くて星像との区別が難しい感じで、富士山も確認し辛いイメージです。
センサーサイズが大きい分、写野は広くてイイんですけどね、センサーの対暗所性能が劣る印象です。
ちなみに、搭載CMOSセンサーはASI1600MC-coolがパナソニック製、ASI585MCがソニー製になります。
ソニー製センサーは感度性能向上に寄与する裏面照射型で、最新のSTARVIS2っていう技術でダイナミックレンジの
向上も図られているということで、その差が如実に表れたということかもしれません。
なお、当夜はASI585MCを用いて実際に流星がいくつか捉えられ、一番見映えが良かったのがコレです。

ZWO社純正のキャプチャーソフト(ASI Studio)の "ASIMeteorCap" を用いて流星の自動検出・自動動画保存を行い、
取得された1本の動画の全26フレームをAstroArts社のステライメージ8で比較明合成して得られたイメージになります。
なお、元動画のフレームレートは26fpsでしたので、動画の長さはちょうど1秒でした。
比較明合成でも結構ノイズが目立たなくなるものですねぇ。
(つづく)


EOS Ra 外部電源対応化

2023-11-26 15:56:33 | 撮影機材

主に天体撮影用として使っているミラーレス一眼 EOS Ra を外部電源対応にしてみました。
キヤノン純正品としてUSB電源アダプターが販売されてはいるものの、カメラ側が給電撮影に対応しておらず、
カメラに入っているバッテリーを充電することしかできないようだったので、サードパーティー製品を探したら
充電池の形をしたDCカプラー型でType-Cケーブルにてモバイルバッテリーに接続可能なものを発見。
但し、モバイルバッテリーはUSB PD規格対応品でないとダメそうなので、それも新調しました。
で、給電システム全体はこんなものです。

カメラのバッテリーパックの形をしたカプラーが給電用インターフェースとなり、
それに繋がっているコードの先端がType-Cになってるんで、モバイルバッテリーに接続するだけで
外部バッテリーからの給電撮影ができるようになります。
ちなみにカメラ側のコード引出部はこんな感じ。

キヤノン純正品でもDCカプラーがあるため、そのコード引出のための切欠きがカメラ側に備わっているのでした。
なお、純正DCカプラーは別途ACアダプターが必要で、100Vコンセントからしか電源が取れず、
アウトドアで使うには不便なものなので、個人的には完全に検討除外品でした。

新調したPDは10000mAhの容量で、カメラの純正Liイオン充電池の1800mAhに対して5倍以上の容量に相当し、
冬期の長い夜でもバッテリー交換を行うことなく一晩中連続撮影ができそうです。

ということで、勤労感謝の日の夜に富士山西麓へ出掛けて試し撮りしてみました。
月が明るい夜だったので、望遠鏡を使った本格的な撮影は行わず、
カメラレンズを用いた単純な固定撮影のみでした。
ちょうど富士山の方向からオリオン座が昇ってくる時間帯に、5秒露出で1050ショットほど連写していって
得られた全画像をSequatorで星の軌跡を残すように合成した画像がコレです。

月明かりがあった割には暗い星まで写っていたようで、星の軌跡がうるさい感じになってしまいました。
これじゃあオリオン座もよく分からないですねぇ。
ちなみにモバイルバッテリーの容量%は100→85くらいになってましたので、かなり余裕がありそうです。


吸収型光害カットフィルターの効果

2023-08-16 15:15:06 | 撮影機材

星空の撮影において邪魔になる市街光を軽減するための「光害カットフィルター」というものが市販されています。
本格的な天体撮影用途では、光学ガラス表面に屈折率の異なる材料の薄膜を数多く積層した干渉型のフィルターが
持てはやされてきましたが、その特性により広角レンズを用いた撮影では写野の中心部と周辺部で色味が変わり、
色ムラのある写りになってしまう問題がありました。

一方、3~4年前から市販され始めた色ガラス系の吸収型光害カットフィルターでは広角レンズでも色ムラが出ず、
特に星景写真(地上風景を取り入れた星空写真)や夜景の撮影用途で人気があるようです。但し、干渉型フィルター
よりも光害カット効果はマイルドなようで、どの程度のパフォーマンスを示すのか気になってました。

そこで、国内メーカー2社が販売しているものを入手し、広角レンズではなく敢えて望遠鏡による天体撮影を行い、
その効果を確かめてみました。その撮って出し画像がコレです。


キヤノンEOS Ra+タカハシFSQ-85EDP+レデューサーCR0.73×,F3.8,ISO1600,露出5分,
赤道儀使用(恒星自動ガイド),静岡県東伊豆町にて撮影

撮影対象はカシオペヤ座にある「ハート&ソウル星雲」で、撮影時の地平高度は40度弱。
撮影地からは北東の空に見えていて、伊東市や熱海市の市街光が気になる空域でした。
試したのはマルミ光機製の"StarScape"ケンコー製の"STARRY NIGHT"の2品です。
どちらもフィルター無しの画像と比べてバックが暗く沈んで、カラーバランスが大きく崩れたりせず星雲の
コントラストが良くなることを確認できました。効果は StarScape<STARRY NIGHT という感じでしょうか。
どちらのメーカーもwebサイトに分光透過率チャートを公開しており、主にナトリウム灯による黄色系の光を
抑制しているようですが、その波長帯域の透過率はStarScapeで20%程度、STARRY NIGHTで10%程度と読み取れ、
やはりSTARRY NIGHTの方が同帯域のカット率が大きいことが分かります。また、分光透過率曲線を比較すると
全体的な波形パターンが酷似していることから使用色材は同じものであって、ガラスへの添加量もしくは
ガラス厚の違いがパフォーマンスの差として現れているのではないかと推察されます。

さらにネット上で調査してみたら、具体的な色材はどうやら酸化ネオジム(Nd2O3)という化合物のようで、
工業用途では分光光度計の波長校正用フィルターとして使われてきたものと同じらしいことが分かりました。
元々存在していた所謂"BtoB"の製品を"BtoC"の製品に転換したところ、ちょっとしたヒット商品になったのなら
面白いことですねぇ。ちなみに、ネオジムは100円ショップで売ってる小型強力磁石にも使われている元素で、
なんとハイブリッド車や電気自動車のモーターに不可欠な永久磁石にも用いられているんだそうですよ。
なお、ネオジムはレアアース元素の一つで、産出量は中国がダントツというのが少し気になります。

話が逸れましたが、吸収型光害カットフィルターが主に抑制するのは前述のとおりナトリウム灯が発する光と
いうことになりますが、道路の照明などに使われてきたナトリウム灯は白色LEDにどんどん置き換わっていて、
この手の対光害フィルターはいずれ無意味なものになるかもしれません。LED照明の発光波長は可視光域全体に
渡っているため、天体撮影は今後益々難しくなりそうな気がします。


新たに迎え入れた屈折望遠鏡のテスト撮影

2023-07-15 10:37:00 | 撮影機材

七夕の日の未明に、新調した屈折望遠鏡のファーストライトとしてベランダで月の撮影を行いましたが、
広写野の星雲星団等の撮影を主目的に入手した鏡筒なので、11日の夜に☆撮りのためプチ遠征してきました。
で、狙ったのはこの天体のみ。


【はくちょう座の網状星雲】
 キヤノンEOS Ra+タカハシFSQ-85EDP+レデューサーCR0.73×,F3.8,ISO1600,
 総露出時間48分(4分×12コマ,加算コンポジット),タカハシEM-200Temma2M赤道儀,
 口径25mmガイド鏡にて恒星オートガイド,静岡県某所にて

市街光の影響が避けられない場所での撮影でしたが、敢えてノーフィルターで撮ってます。
あまり凝った画像処理はしてませんが、淡い部分までそこそこ描出できた感じ。
望遠鏡接続用のカメラマウント起因とみられる片ボケが写野端で僅かに認められたりしましたが、
中心部はかなりシャープで、さすがは定評のある鏡筒だなぁーって思いました。
鏡筒本来の焦点距離は450mmで、専用レデューサー(短焦点化レンズ)をかませて327mmとなりますが、
☆撮りに限ればカメラメーカーの " サンヨンレンズ " よりパフォーマンスは上のような気がします。
但し、この解像度の画像では目立ちませんが、いわゆる「星割れ」(中心から外れて写った明るい星に楔状の
暗部が発生する)現象が出てしまうのが玉に瑕って感じ。まぁ、明るい屈折光学系には付き物のようなので、
致し方ないところかなぁ・・・ 
実は来年に明るくなると予想されている彗星が複数あり、その撮影に小型鏡筒があれば機動性が上がり
便利だろうとも思って先行投資的に入手しました。梅雨が明けたらテストの続きを行いたいと考えてます。


NBZフィルターを使って撮ったスパゲッティ星雲

2022-12-28 07:56:32 | 撮影機材

先週は新月期ということで、土曜日の晩に伊豆稲取まで☆撮りに出撃。
こんなのを撮りました。


【スパゲッティ星雲 Sh2-240】
 キヤノンEOS Ra+EF200mmF2.8LⅡUSM,NBZフィルター,ISO3200,F3.5,露出時間10分×8,
 タカハシEM-200Temma2M赤道儀,口径25mmガイド鏡にて恒星オートガイド,トリミングあり

この天体はぎょしゃ座とおうし座に跨るように存在する大型の超新星残骸です。
とっても淡いのでコントラスト良く撮影するのが困難な被写体ですが、独特のフィラメント構造が見事で
☆撮り屋には憧れの的となってます。
冬晴れで夜空は抜群の透明度でしたけど、途中で機材の電源トラブルに見舞われたりして、
撮影フレーム数を稼げず、かなり不満の残る画像になってしまいました。
ちなみに1フレーム分の元画像はこんなのです。

NBZフィルターの威力で薄らと写ってるのが分かりますが、甚だ低コントラストなので、
複数のフォトレタッチソフトを駆使して仕上げたのが最初の画像なのでした。
多分ノーフィルターではバックが明るくなり過ぎて埋もれた状態になっていたでしょうから、
それなりに捉えられてはいるんですけど、80分程度の総露出時間では不十分だった感じで、
じっくり時間をかけて撮り直したい対象です。