Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
3/5夜遅く すばる食(すばるを月が隠す)

「はやぶさ」帰還へ

2010-06-07 12:00:00 | 夜空のコラム

小惑星イトカワを探査した「はやぶさ」が13日に地球に帰還する予定です。

打ち上げられたのは、かれこれ7年も前のこと。

小惑星の岩石(砂)を持ち帰る「サンプルリターン」が主なミッションでした。

2005年にイトカワに着陸。岩石採取作業を行い、離陸にも成功します。

月よりも遠い天体に着陸し、再び離陸するのは米・NASAもやったことがなかった

という世界初の快挙になりました。

しかし、姿勢制御装置やエンジンなどに相次いでトラブルが発生。

JAXAのプロジェクトチームがその都度知恵を絞って様々なトラブルに対応し、

克服してきました。そんなこんなで地球帰還が大幅に遅れる事態となりましたが、

チームは諦めることなく対処し、ようやく帰還できる見込みが立ったわけです。

その奮闘ぶりがこんな形でまとめられています↓

 

また、こんな動画も作られてます↓

 

様々な試練を乗り越えてきた経緯を見ると、ちょっとウルウルしてしまいます。

岩石採取がうまくいったのかどうか微妙な状況のようですが、

まずはカプセルの回収が成功することを祈りたいですね。

 

関連情報サイトはこちら↓

小惑星イトカワについて
はやぶさ(探査機)について
はやぶさ、地球へ! 帰還カウントダウン


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
カノープス [2010年6月13日 8:58]
こんな動画があったんですね。感動して涙が出そうになりました。家族にも見せたいと思います。いよいよ、本日帰還、成功を祈りたいと思います。
fornax8 [2010年6月13日 17:37]
カノープスさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
この他にもいろんな動画が作られているようです。
擬人化されたりすると、どうも涙腺が緩んでしまいますよね。
偉業を成し遂げて戻ってきても、永遠の別れになる訳ですし・・・
とりあえず今夜が楽しみです。
fornax8 [2010年6月13日 23:03]
大気圏突入がライブ映像で確認できました。
はやぶさくん、お疲れ様でした。
感動をありがとう!

「かつお節」と「ふくろう」

2010-05-14 12:00:00 | 夜空のコラム

北斗七星の「ひしゃく」の先から2番目の星のそばに、こんな天体が並んでいます↓

【M97&M108】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡(F2.8) ISO800
 総露出時間50分(5分×10コマ加算) 赤道儀架台使用(恒星追尾)
 [新潟県魚沼市横根にて2010年5月8日撮影]

どちらもメシエ天体」であり、右上の横に伸びた姿の方がM108銀河、左下の丸い姿の方が

惑星状星雲M97です。両者の見かけ上の間隔は満月の直径の約1.6倍で、天体望遠鏡による

低倍率観察では同一視野内にとらえることができるほど接近しています。しかしながらM108は

4500万光年の彼方にある渦巻き銀河である一方、M97は我々がいる銀河系内にある天体で

太陽系からの距離は2500光年と桁違いに近く、奥行き方向にはかなり離れています。つまり、

この2天体は地球から見てたまたま同じ方向に見えているに過ぎません。これらがほぼ同等の

大きさで見えているというのも単なる偶然ですが、星撮り屋達にとっては絶好の被写体として

親しまれています。


ところでM108銀河の細長いイメージを見ていると、何となく「かつお節」を連想してしまいます。

その拡大画像はこちら↓

撮影光学系の焦点距離が500mmと短いため内部構造は捉えきれてませんが、意外とカラフル

な印象です。実体は我々の銀河系と同じような渦巻き状をしていることが分かっていますが、

その円盤をほぼ真横から眺めているため、細長い姿になっているのです。

一方、M97は「ふくろう星雲」というニックネームが付いています。その拡大画像はこちら↓

こちらは見事なまん丸形状です。その内部には2つの暗部があって、確かに「ふくろう」の顔

のような感じに見えます。これも偶然な訳ですが、自然の造形には驚かされてしまいますね。

で、この星雲は、ど真ん中にポツンと写っている星が死を迎え、周囲へのガス放出により形成

されたとされ、青緑色は主に酸素が発している特有の光らしいです。火も無い宇宙空間でガス

が青く光ってるっていうのはちょっと不思議な感じがしますね。なぜ青いのかは量子論で説明

がつくんだそうですよ。

さて、夜空に見える「ふくろう星雲」にちなんで、こんな曲をどうぞ↓

 

1981年に全米6位になったヒット曲、リトル・リバー・バンドの "The Night Owl" です。

オーストラリアのバンドで70年代後半から80年代前半にかけて、ヒットチャートの常連に

なっていました。特にコーラスが素晴らしく、いわゆるウエストコースト・サウンドに近い

雰囲気があったため、米国ではウケが良かったんでしょう。この曲は何といっても出だしの

ツイン・ギターにシビレます。ボーカルが入ってからの展開もカッコイイのなんのってもう。


ほくとのななほし

2010-03-23 12:00:00 | 夜空のコラム

昨日、こちら東京でも桜の開花発表がありました。いよいよ春本番ですね。

さて、この季節の夜、北の空高く昇り詰めるのがこの星たち↓

【The Big Dipper】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 17-50mmレンズ(@35mm,F5) ISO800
 総露出時間30分(3分×10コマ加算) 赤道儀架台使用(電動追尾)
 輝星のみにガウスぼかしをかけて滲ませる画像処理を施してます。
 [静岡県東伊豆町にて3月20日撮影]
 ※画像クリックで、壁紙サイズの大きい画像をご覧になれます。
  今の季節、実際の空ではこの画像とほぼ逆さまの状態で見えます。

有名な「北斗七星」です。"The Big Dipper" は英語での呼び名で、柄杓(ひしゃく)の形を

していることに由来します。プラネタリウムの解説などでは、右端の2つの星を結んで、

その間隔を5倍延ばした先に北極星があるという風に、北の指針となる北極星探しに

便利に使える星の並びとして、よく引き合いに出されたりします。

とっても目立つので、これ自体が星座であると思っていらっしゃる方も多いようなんですが、

実は「おおぐま座」の腰から尻尾を構成する一部分であって、厳密には星座ではありません。

ちなみに、こういう特徴的な星の並びを「アステリズム」と呼んだりします。


ところで、これら7つの星のうちで両端の星を除く5つの星は、地球からほぼ同じ距離に

あって、銀河系内をほとんど同じ方向に同じ速度で移動していることがわかっています。

そのため、この5つは大昔に散開星団だったと推定されており、周辺にあるいくつかの星を

含めて「おおぐま座運動星団」と呼ぶことがあるようです。元々は密集して存在していた

ものの、宇宙スケールの長い時間の間に星たちの距離が少しずつ空いていって、ばらけて

しまったと考えられているのです。詳細についてはこちらをご覧になるとよいでしょう。

 

ということで、大雑把ですがそれらの距離感が分かるように、お遊びで7つの星を弄って

縦構図のステレオグラム(立体視画像)を作ってみました↓

いわゆる平行法で見ると各星が飛び出して見えると思いますが、どうでしょう?

(立体視での見え方は各星までの距離が正確に反映されているわけではありません。)


Fly Like an Eagle

2010-02-24 12:00:00 | 夜空のコラム

先月ご紹介した薔薇星雲のある「いっかくじゅう座」にはこんな星雲も潜んでます↓

IC2177】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡(F2.8) ISO800
 総露出時間128分(8分×8コマ加算×2フレームパノラマ合成) 赤道儀架台使用(恒星追尾)
 [静岡県西天城高原にて2008年12月撮影]

鳥が飛んでいる姿を連想させる星雲なので、海外では "Seagull Nebula"(かもめ星雲)と

呼ばれてますが、日本では「わし星雲」の名で通ってます。南北方向の見掛け上の差し渡しが

実に満月6個分にも相当する極めて大きな星雲で、所有している焦点距離500mmの望遠鏡

では一つのフレームに全体像を収めることができないので、横構図で撮影した北側の写真と

南側の写真を繋げて一つの画像に仕上げてます。繋ぎ目を目立たなくするのに苦労しました。

これも薔薇星雲などと同様のいわゆるHⅡ領域であるため、望遠鏡を使っても残念ながら

この写真のようなイメージに見えることはありません。

ちなみにこの星雲は、夜に見える恒星の中で最も明るいシリウスから北東へ8度ほどのところ

に位置しています。これがもし肉眼で見えていたら、シリウスの青白い光と対照的な赤い星雲

が並んでいて、コントラストの素晴らしい眺めを楽しめたことでしょう。

さて、飛んでいるわしのような姿の星雲にちなんで、こんな曲をどうぞ↓

スティーブ・ミラー・バンドの1977年のヒット曲 "Fly Like an Eagle" です。

全米シングルチャートでは2位まで上昇しました。

その時代に作られたとは思えないサウンドで、エレポップ的な雰囲気があります。

特に終盤でヴォーカルがフェードアウトした後の音作りは・・・ 遊び過ぎだなぁ。

以上、拙ブログカテゴリーのジョイント企画でした。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
キラリ [2010年2月26日 13:50]
こんにちは☆
ほんと!鳥が飛んでいる姿に見えますね。
カモメにも鷲にも見えます☆
fornax8 [2010年2月26日 17:46]
キラリさん、コメントありがとうございます。
個人的にはカモメの方に近いような気がしてます。
飛んでいる鳥の恰好をした天体はいくつかありますので、
他のものもいずれ紹介していくつもりでいます。

夜空に咲く薔薇

2010-01-26 12:00:00 | 夜空のコラム

オリオン座の東隣に「いっかくじゅう座」というマイナーな星座があります。

英名では「ユニコーン」といいまして、それなら聞き覚えがあるという方も多いのでは

ないでしょうか。頭に一本角のある伝説の生き物が星座になっているのです。

※Astroarts ステラナビゲータによる星座絵


ところで、いっかくじゅう座は冬の天の川の真っ只中にあるため、銀河系内の星雲星団の

宝庫になってます。その中でも一番著名な天体がこちら↓

【NGC2237】
 ニコンD70 + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡(F2.8) ISO800
 総露出時間80分(10分×8コマ加算) 赤道儀架台使用(恒星追尾)
 [山梨県みずがき山自然公園にて2006年11月撮影]

その姿から「薔薇星雲」と呼ばれてます。確かに真正面から見た赤い薔薇に似てますね。

見かけ上のサイズ(視直径)はなんと満月の2倍もある非常に大きな星雲で、中心にはその

濃い星間物質から生まれてきたとされる若い星の群れが確認できます。

で、この星雲もこれまでに紹介してきた北アメリカ星雲やカリフォルニア星雲などと同じ

電離水素ガスから成るHⅡ領域であるため、肉眼では全く見えません。望遠鏡を使っても

このようなイメージには見えず、写真に撮ってはじめてその優美な姿を確認することが

できるのです。冬の夜空に咲いている薔薇の大輪が人間の目でははっきり見えないという

のは本当に残念なことですね。

ちなみに、この薔薇星雲はfornax8が最も好きな天体でして、こいつをキレイに撮影したい

という思いから星撮りを始めたと言ってもいいぐらいなんです。

未だに満足できる作品が得られてないので、今後も撮り続けていくことになるでしょう。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
キラリ [2010年1月27日 19:53]
こんばんは☆
綺麗に真っ赤な薔薇が見えます。
肉眼では見えず写真に撮って見えるものなのですね。とても不思議な感じがしますがそれがまた良いような気がします☆
fornax8 [2010年1月27日 23:58]
キラリさん、毎度コメントありがとうございます。
こういう赤い星雲の生の姿がはっきり見えたら面白いんですけどねぇ。
でもこれが見えたら目に映るもの全てが赤く感じてしまうかもしれません。

ゆりかごから墓場まで

2010-01-14 12:00:00 | 夜空のコラム

どこぞの国の社会福祉の話題ではなく、遥か彼方にある星の世界のお話です。

冬の星座として真っ先に思い浮かぶのがオリオン座。

その主要部を長時間露出でとらえた写真がこちら↓

【オリオン座】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 28-75mmズームレンズ(42mmに設定) ISO800 F4
 総露出時間48分(6分×8コマ加算合成) 赤道儀使用
 [長野県小海町にて2008年10月撮影]

中央に三ツ星があって、それを囲むような四角形の星の配列でお馴染みの星座ですが、

上の写真は実際の空に見える姿とは全く様相が違うので、驚かれる方も多いでしょうね。

一見して赤い星雲が目立ちますが、それはこの辺りに漂っている電離した水素ガスが

近くの星からの紫外線を受けて発する波長656nmの光で輝いているものです。その光は

人間の目では感じにくい波長帯域である上に光量が十分でないため、肉眼ではもちろん

双眼鏡や望遠鏡を使ってもほとんど見ることができません。写真でも通常のカメラでは

描出が難しいのですが、天体撮影用に特化した改造デジカメで撮ると、上のような写り

になります。

さて、ほぼ中央の三ツ星の下には明るいピンク色に輝いている部分が認められますが、

これが有名なオリオン大星雲になります。オリオン大星雲は星間ガスや塵が凝集した

ところで、新しい恒星が誕生する場としてよく知られています。実際に望遠鏡で覗くと、

モヤモヤした星雲の中心に、大宇宙の時間スケールで言えばまだ生まれて間もない4つの

赤ちゃん星(トラペジウムと呼ばれる)が見えます。星雲の広がりの中にはそれ以外にも

幼い星がいくつも認められるので、この星雲を「星のゆりかご」と呼ぶことがあります。

三ツ星とオリオン大星雲を左側(西側)から囲うような恰好で半円形に広がった赤い星雲は

バーナードループと呼ばれている天体です。アメリカの天文学者バーナード博士が写真で

初めて発見した天体であるため、その人名を冠した天体になっています。これは以前に

紹介したはくちょう座の「網状星雲」と同じ「超新星残骸(ちょうしんせいざんがい)」と

いう類の星雲で、ずーっと昔にこの辺りで起きた「超新星爆発」の名残りではないかと

考えられています。つまり、壮絶な死を遂げた星の墓場とも言えるのです。

生まれたばかりの星もあれば、死んだ星の残骸もあり、そのような星の輪廻転生の様が

オリオン座という狭いエリアに垣間見られるという訳です。

そして、もうすぐ生涯を閉じようとしている星がこの中に写っています。

それは左上方に写っている橙色をした一等星ベテルギウスです。

直径が太陽の千倍という、とてつもない大きさを誇るとされてきた赤色超巨星なのですが、

ここ数十年の間ずっと収縮し続けていることが分かり、近い将来、重力崩壊に伴う超新星

爆発を起こすのは必至の状況にあると考えられています。つい先日もNASAによる観測から

その表面が凸凹で不安定になってきていることが判明したとの新聞記事がありました↓

http://www.asahi.com/science/update/0109/TKY201001090278.html

その様子から、いつ大爆発が起きてもおかしくないと考える研究者が多いようです。

ベテルギウスまでの距離は640光年ですから、今見えているのは640年前の姿になります。

なので、今爆発してもそれが地球から光学的に観測できるのは27世紀半ばになってから

ということになります。あるいは既に大爆発してしまって、その強力な光がまだ地球に

届いてないことも考えられるのです。

ところで、その距離で超新星爆発が起こった場合、地球からは満月と同等のマイナス12等級

程度の明るさで見えるだろうと推定されてます。もしそうなったら、しばらくの間、冬の星空は

明るすぎて、暗い天体の観望・撮影ができないなんてことになる可能性もありますね。

個人的にはマイナス12等星(点光源)って、どんな風に見えるのか興味津々ですが・・・

地球環境への影響は無いとみられてはいるものの、超新星爆発によって発生するガンマ線が

指向性の高いビームとなって運悪く地球を直撃するようなことがあれば、人類滅亡の危機に

晒されるとの予測もあるようです。ベテルギウスが明るく見えた瞬間に何が起こったのか

さえわからないままあの世行きになったりして? まあ、ありえないと思いますけどねぇ。


そのもの青き衣をまといて夜空の頂に輝くべし

2009-12-25 12:41:16 | 夜空のコラム

そんな紹介文が合いそうな天体がこちら(↓)

【M45】
 ニコンD80 + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間70分(2分×5+12分×5コマ加算合成)
 [山梨県みずがき山自然公園にて2006年11月撮影]

通称プレアデス星団。和名は「すばる」で、六連星(むつらぼし)という別名もあります。

清少納言の『枕草子』の中に「星はすばる。・・・」という一節が出てくるぐらいですから、

「すばる」は大昔から使われてきた日本語なんです。漢字では「昴」と書きます。

クルマ好きの皆さんには富士重工のブランド名として馴染み深い響きかと思いますが、

カタカナで表記されているせいか「スバル」が由緒正しい日本語であることを知らない人も

多いことでしょうね。なお、スバルブランドのマークはこの星団をイメージしたものですが、

実際の星の並びとは少し異なっているようです。ちなみに、同社製で「アルシオーネ」と

いう車がありましたが、あれはプレアデス星団中で最も明るい星の名前にちなんで付けられた

ものです。その他にも星団中の星の名前(エレクトラ,マイア,ケレーノなど)を採用した製品が

同社から出ています。今月始めに近々発売するとアナウンスされた、知る人ぞ知るスバル

ブランドの天体望遠鏡には星団中で5番目に明るい星「メローペ」の名前が付けられてます。


さて、この天体は今の時期ですと21時過ぎに天頂付近まで昇りつめます。

肉眼でも容易に見えることで有名な星団で、普通の視力の人で5~7個の星が確認できます。

優れた目の持ち主になると10個以上見えるそうなので、視力に自信のある方は裸眼で

いくつ数えられるか試してみるのも面白いかと思います。

肉眼で見えるとは言え、この天体の美しさを堪能するなら、双眼鏡を使って見るのが一番です。

倍率は10倍以下のもので十分。条件が良ければ20個以上の星が群れている姿を楽しめます。

長時間露出による写真では、上の作例の通り星の周りに何やら霞のようなものがかかった

姿でとらえられます。これはこの星団が銀河系内を移動している途中でたまたま遭遇した

濃い星間物質のガス雲を明るく照らし出しているものと考えられています。

残念ながら望遠鏡を使っても眼視では写真のようなイメージには見えませんが、青き衣を

まとった姿を想像しながら約400光年の彼方にある若い星団を眺めてみてはいかがでしょうか。


見ると長生きできる?

2009-12-21 12:00:00 | 夜空のコラム

夜間に見える最も明るい恒星をご存知でしょうか?

それはおおいぬ座のシリウスという星です。

この季節には20時過ぎには南東の空に昇ってきます。

2番目に明るい星はカノープスという星です。

その星は、和名では聞きなれない「りゅうこつ座」という星座にありますが、

その星座の学名である「カリーナ」はトヨタ車の名前にも採用されたので、

クルマ好きの方々にも馴染みのある響きではないでしょうか。


さて、そのカノープスという星ですが、シリウスのずーっと南に位置していまして、

本州からは超低空にしか見えません。東京では最大の地平高度が2度足らずです。

今の時期ですと、深夜0時過ぎに真南にやってきます。

それを自宅ベランダから狙ってみました(↓)。

 キヤノンEOS Kiss Digital X + 28-75mmズームレンズ(48mmに設定)使用
 ISO200 F4.0 露出5秒 三脚使用

中央下端の建物の少し上にポチっと写っているのがカノープスです。

明るさはマイナス0.6等と非常に明るい星なのですが、低空ですと大気による減光が

大きいので、3等星ぐらいにしか見えません。滅多に見えないことから、中国では

これを1度見ると10年長生きできるとの言い伝えがあるそうです。

「長寿星」とか「南極老人星」という別名もあり、千葉県房総地方などでは

「布良星(めらぼし)」と呼んだりすることがあるとのこと。

しかしまぁ、上のような写真ではあまりにも寂しいですよね。

そこで、長時間に渡って連続撮影し、例によって比較明合成してみた写真がこちら(↓)。

 キヤノンEOS Kiss Digital X + 28-75mmズームレンズ(48mmに設定)使用
 ISO200 F4.0 総露出時間93分20秒(5秒×1120コマ比較明合成) 三脚使用

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

100分以上に渡る日周運動の光跡は力強く、本当は明るいんだぜと主張しているようです。


カリフォルニアの赤い雲

2009-11-25 12:00:00 | 夜空のコラム

「カリフォルニアの青い空」なんていうタイトルの歌がありましたが、

今回はその地名を冠した赤い星雲をご紹介しましょう。

こんな姿の天体です(↓)

【NGC1499】
 ニコンD70+口径18cm写真撮影用反射望遠鏡にて2005年11月撮影
 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

「カリフォルニア星雲」というニックネームを持つ天体で、ペルセウス座にあります。

以前に紹介した「北アメリカ星雲」と同じHⅡ領域と呼ばれる類の散光星雲の一つです。

写真の右下方に写っている明るい星がこの星雲を輝かせていると考えられています。

ところで、名前の由来はカリフォルニア州の形に似ているからなんだそうですが、

日本人にはピンときませんね。地図で州の形を確認しても、なんか"?"な感じです。

アジア的な俗称を付けるなら「上カルビ星雲」っていうのは如何でしょうか?

さて、この星雲の見かけ上の大きさは、なんと満月を横に5個並べたサイズに相当します。

写真では比較的よく写りますが、肉眼では全く見えず、望遠鏡を向けて覗いても

薄ら見えるかどうかという天体ですので、見て楽しめるものではありません。

もし肉眼で見える星雲だったなら、アンドロメダ銀河に次ぐ秋の必見天体として

有名になっていたことでしょう。


The Double Cluster h-χ

2009-11-06 12:15:00 | 夜空のコラム

ペルセウス座の北西部、カシオペヤ座に近いところに大型の星団が2つ並んでいます。

秋に見やすい天体としてはアンドロメダ大銀河に次いで有名な「ペルセウス座二重星団」

と呼ばれているもので、そのクローズアップ写真がこちら(↓)

【NGC884&869】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間15分(3分×5コマ加算合成)
 [静岡県伊豆天城高原にて2008年9月撮影]
 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

二重星団は、空の暗いところでしたら肉眼でも存在が確認できる著明な天体です。

昔はどちらも縁がぼやけたように見える単独の星であると認識されていたため、

各星座ごとに明るさの順番で恒星に付けられるギリシャ文字やアルファベットが割振られ、

その名残りで「エイチ・カイ星団」と呼ぶことがあります。

この2つの天体が単独の星ではなく星の集団であることを人類史上初めて確認したのは、

望遠鏡を用いて観測したガリレオ・ガリレイでした。17世紀前半のことになります。

星団を構成している恒星の数はそれぞれ300個前後。見掛け上、どちらも満月サイズに匹敵

する広がりを持った大星団で、双眼鏡でも細かな星が群れている見事な姿を堪能できます。

ところで、以前に「球状星団」という種類の天体を紹介しましたが、二重星団はそれとは

異なる「散開星団(さんかいせいだん)」と呼ばれる種類の天体になります。

太陽のような恒星は星間ガスが高濃度で凝集した暗黒星雲(分子雲)から生まれてくると

考えられていますが、極めて大量のガスが寄り集まったところからは、ほぼ同時期に沢山の

恒星が誕生することがあります。そのようにしてできた星の群れが「散開星団」の実体で、

星形成領域であるHⅡ領域と呼ばれる水素主体の赤い星雲とも関連性が深かったりします。

その証拠に、散開星団を伴ったHⅡ領域は結構多いという事実があるんです。そういう天体

では星雲とそこから生れたばかりの星団が重なって見えることになりますが、二重星団は

ガス星雲を纏っていませんので、星形成活動は完了しているものと推測できます。

で、今は集まったように見えている星たちも、いずれは離ればなれになって、

銀河系の渦巻き腕の中に溶け込むように散らばっていくことになるんでしょう。

太陽もかつてはこのような星団の構成メンバーだったのかもしれません。