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奈良旅行写真集・5 (置き去りの拍動)

2008年03月04日 21時26分36秒 | 気ままにお出かけ
markt001.jpg: 椿井市場にて。並ぶ提灯
D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Aperture priority AE (F=3.8, SS=1/80s), -0.7EV (Matrix metering), ISO1600, WB=Cloudy (-1), f=38mm (35mm-equivalent: 57mm)

奈良町をぶらぶら歩いていたら、市場を見つけました。椿井 (つばい) 市場という看板が掲げられています。路地の間口は1間ほどしかありません。小さなお店がひしめき合う市場に興味津々。去年、長崎旅行の帰りに大阪に立ち寄ったときも、細い路地に商店が並ぶ市場を探検したことを思い出しました (そのときは写真を撮りませんでしたが)。

中華料理屋の店先に並ぶ提灯 (ちょうちん) の列。アーケードの波板を抜けた白い夕日と細い蛍光灯が頼りの暗がりの中で、息を潜めていました。

markt002.jpg: 椿井市場のアーケード
D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Aperture priority AE (F=2.8, SS=1/30s), -0.7EV (Matrix metering), ISO400, WB=Cloudy (-1), f=17mm (35mm-equivalent: 25mm)

営業しているお店は数えるほどしかなく、ほとんどの商店は営業していません。廃墟 (はいきょ) と化した商店や、店先だけを残して奥だけが取り壊された商店もあります。

このアーケードも、昔は人でにぎわっていたはずです。当時は、これをくださいと商品を指差すだけでなく、店主と雑談もしながら買い物をしていたことでしょう。

markt003.jpg: 椿井市場のアーケード
D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Aperture priority AE (F=2.8, SS=1/40s), 0.0EV (Matrix metering), ISO200, WB=Sunny (+0), f=17mm (35mm-equivalent: 25mm)

しかし、時代は移り変わります。店頭に並んだ大量の商品を客が自分で取っていくセルフ販売が主流になると、小ぢんまりとした商店ではたち打ちできません。

社会が自動車に依存するようにもなりました。細い路地に商店がびっしりと並ぶ構造では、商品を運び込もうとしても車を乗り入れることができません。市場の外に駐車するにも、道路が狭すぎます。

商店は、それぞれ住居も兼ねていたことでしょう。日本の経済が発展し、生活レベルが向上するにつれて、住居も手狭になったはずです。しかし、奥行きが1部屋分ほどしかなく、左右もびっしりと店舗が並んでいては、建て増しも思うに任せません。

椿井市場が廃れた原因に思いをめぐらすと、どうしても土地の狭さに行き着いてしまいます。人が歩いて買い物をするには、この程度のスペースで十分なのですが、時代が求めるスピードには追随できないようです。

椿井市場には、小さなお店に息づいていた暮らしの拍動が置き去りにされていました。

markt004.jpg: 椿井市場にて。トイレの案内
D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Aperture priority AE (F=3.5, SS=1/50s), 0.0EV (Matrix metering), ISO400, WB=Sunny (+0), f=17mm (35mm-equivalent: 25mm)

そんな椿井市場で見つけた案内表示。

「お手洗い、あと約27歩です」

奈良の人はお茶目です。



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