みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

略してみちゃばこ。泣いたり笑ったり

マルチ商法対抗録・8 (決行)

2009年01月31日 23時25分29秒 | 日常のあれこれ
この連載の目次

(前回から続く)

Aちゃんからメールが来ました。

法テラスに電話してくれたと。

ホッとしました。ひとつ不安が消えました。Aちゃんからマルチ商法の話を打ち明けられてから2日目のことでした。

心の中から体全体に、じわりと温かいものが広がりました。

Aちゃんは法テラスで消費生活センターを紹介され、そこでクーリングオフの方法について詳しく聞いてくれました。

Aちゃんは、Aちゃんが契約した会社の資料が既に消費生活センターに用意されていたことに驚いていました。

過去に事例があったなら、クーリングオフもスムーズに進むでしょう。

寒い日でした。外出を避けて丸一日家にこもるつもりでいたAちゃん、「落ち着かない」と、さっそく郵便局でクーリングオフのハガキを出してくれました。やる気になったときに済ませてしまうこの行動力。私も見習わないといけません。

私が提案したとおり、Aちゃんは、クーリングオフのハガキを差し出した後に、Bさんに解約したことを伝えてくれました。既にクーリングオフのハガキを出してありますし、消費生活センターの支援を得ていると言えば、業者や既存会員が解約を思いとどまるように説得するのは難しいはずです。

山をひとつ越えました。早めにクーリングオフしたことで、傷も浅く済みそうです。

次の問題は、AちゃんとBさんとの関係。Bさんは、この業者と化粧品ビジネスを完全に信じきっています。Aちゃんが解約したことで、関係が悪化しないでしょうか。こじれずに収まるでしょうか。最悪の場合は、私がAちゃんとBさんの仲を引き裂くことになります。Aちゃんにクーリングオフをさせたのは踏み込みすぎだったでしょうか。Aちゃんに、クーリングオフの手続きをとってからBさんに連絡するように説得したのは強引だったでしょうか。確実な解約を最優先にした私の方針は間違っていたでしょうか。

不安ばかりが募りますが、私はBさんと何の面識もなく、ただ見守るしかありません。

夜になりました。Aちゃんにメールを1通入れることにしました。念のため、携帯電話にも。翌朝読んでくれるでしょう。

解約についてお友達の理解が得られない場合は、こんな風に考えてはいかがでしょう、という提案です。的外れなら読み捨ててください。

もし解約についてお友達の理解が得られなくても、完全に縁が切れてしまうわけではありません。あきらめないでください。

今は完全にビジネスを信じきっているので、解約について理解が得られにくいかも知れません。でも、分かってくれる日が必ず来ます。

もし、今の時点で関係が壊れてしまっても、お友達がビジネスの実態を分かってくれれば、Aちゃんとの関係を修復しようと連絡してきてくれるでしょう。

そのときは、温かく迎えてあげてはいかがでしょう。紹介者のお友達は、それまでに友達を何人も失っているかも知れません。

*  *  *

Aちゃんは、クーリングオフのハガキを差し出して以来、幾度となくBさんとメールや電話でやり取りしていました。

Bさんは何度も引き止めたそうです。当然予測されることです。Bさんには、上位ランクのベテラン会員から圧力もかかっているでしょう。Aちゃんが苦しんでいるのと同じように、Bさんも、Aちゃんとベテラン会員の間で板ばさみになっていることでしょう。

しかし、Aちゃんは解約の意思を変えませんでした。強い意志で解約を進めてくれました。

AちゃんとBさんの間で、メールと電話の交換が続きました。

お互いに意見の違いを認め合えたようです。

Aちゃんは、マルチ商法だと知って解約しました。

Bさんは、マルチ商法だと認識した上で、このビジネスを続けるそうです。

(次回に続く)

マルチ商法対抗録・7 (板ばさみ)

2009年01月30日 19時28分42秒 | 日常のあれこれ
この連載の目次

(前回から続く)

Aちゃんは、今後もBさんと友達でいるために、解約前に勧誘者であるBさんと話をすると言いました。

私は、AちゃんとBさんの間にどのような信頼関係があるかはよく知りませんから、深く介入すべきではありません。人と人とのつながりを大切にするAちゃんです。Aちゃんの判断を尊重しなければなりません。

私の胸に、またひとつ不安の種が増えました。

Aちゃんがクーリングオフの手続きをとる前にBさんと話し合ったとしたら、どうなるでしょう。Bさんから解約を思いとどまるように説得されるはずです。

「もう一度考え直して」
「この仕事もダメなの?」
「収入がなくて大丈夫?」
「今の生活のままでいいの?」
「せっかく紹介してあげたのに」

そう言われたとき、Aちゃんは断れるでしょうか。気持ちが揺らぎはしないでしょうか。解約したら関係が壊れてしまうかも、と不安にならないでしょうか。

そしてこのとき、私が知らない事実も重なっていました。
「入会金もトライアルセットの代金も出してあげたのに」
と言われたら、素直にクーリングオフできるでしょうか。

前日のメールでは、Aちゃんは確かにクーリングオフすると言ってくれました。

しかし、人間は感情の生き物です。理性では分かっていても、気持ちがついていかないことがあります。人間は弱いです。危ないです。私は、冷静な法律の専門家がクーリングオフをサポートしてくれることを願っていました。

Aちゃんが解約前にBさんと話をするのには、もうひとつ懸念がありました。

Bさんは、Aちゃんが買った高額な化粧品を買い取ってもいいと言うのです。こんな勧誘方法、Bさんはどこで入れ知恵されてきたのでしょうか。

人間は感情の生き物です。化粧品を買い取ってもらうと、「あのとき買い取ってあげた」とか「ビジネスを紹介してあげた」という感情が残りがちです。

今後、Aちゃんがまったく勧誘活動をしないと、Bさんは「ビジネスを紹介してあげて、化粧品まで買い取ってあげたのに」と思うかも知れません。

かと言って、ほかの友達を勧誘すると、勧誘された友達が、今回Aちゃんが味わっている葛藤 (かっとう) を経験することになります。

勧誘しなくても友達とぎくしゃく。勧誘しても友達とぎくしゃく。

この板ばさみに陥らないためにも、絶対にクーリングオフするように伝えました。友達に化粧品を買い取ってもらうのはダメだと念を押して。

私の胸の中で、不安ばかりが大きく膨らみます。

Aちゃんはこのままマルチ商法を始めてしまうかも知れません。貯金を取り崩して糊口 (ここう) をしのぐAちゃんの生活です。マルチによって貯金の寿命は必ず縮みます。Aちゃん、人が変わったりしないかな。笑顔で前向きなAちゃんが大好きだったのに。私の反対を押し切ってマルチにお金をつぎ込んだAちゃんを、今後私は助けられるかな。Aちゃんが困ってるとき、私は助けるべき? 突き放すべき?

私の理性は、これ以上介入してはいけないと言います。いくら友達でも、踏み込みすぎてはいけないと。

「私からの最後のおせっかいです。読んだ後は、Aちゃんの判断で行動してください」

おせっかいメールは、これで最後にしようと決めました。これ以上、友達との間でつらい思いをしないために、Bさんに連絡する前にクーリングオフの手続きをとり、業者やベテラン会員がクーリングオフを妨害してきても絶対に屈しないように説得するメールを書きました。「私からの、最後の最後のお願いです」と書き添えて。

メールの末尾では法律相談窓口を紹介しました。

法テラス http://www.houterasu.or.jp/
法律の専門家が無料で相談に乗ってくれます。

おせっかいは、これでおしまい。
健闘を祈ります。
お金も友人関係も守れますように。
みぃ


祈るしかありませんでした。

どうか、Aちゃんの心が揺れませんように。

冷静にクーリングオフしてくれますように。

メールを送信する頃には、夜が明けようとしていました。

(次回に続く)

マルチ商法対抗録・6 (クーリングオフしましょ)

2009年01月29日 23時30分40秒 | 日常のあれこれ
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(前回から続く)

いても立ってもいられず、深夜までインターネットで連鎖販売取引 (マルチ商法) やクーリングオフの情報を収集しました。

調べて驚きました。クーリングオフ制度によって商品を返品するときには、返送料は業者が負担すると法律で決められているのです。Aちゃんは、化粧品の返送料は自己負担だと説明されたと言います。
「それくらい払ってもしょうがないかな、とは思ってる」
Aちゃんは、虚偽の説明を受けていました。

調べたクーリングオフの情報をメールにまとめ、Aちゃんに送信しました。早くクーリングオフの手続きをとってくれることを願いながら。

マルチ組織は会員を逃すと収入が減ってしまいます。Aちゃんがクーリングオフを試みても、マルチ組織は、Aちゃんを脱会させないように、それこそ必死になってあの手この手で阻止することも考えられます。化粧品の返品について虚偽の説明をしているくらいなので、手ごわいかも知れません。

メールの中で、私は、法律の専門家に依頼することを勧めました。

初日の夜はこうして過ぎました。

翌朝、Aちゃんからメールが届きました。

「何とか自分で解約できるようにしてみます」

この化粧品ビジネスを紹介した友達との関係を懸念しているようです。

不安がよぎりました。

解約を思いとどまるように説得されて、クーリングオフをやめはしないでしょうか。

私は、改めて説得のメールを書きました。クーリングオフするときには、紹介してくれた友達や同席していたベテラン会員には何も言わずに、直接業者に連絡するように勧めました。Aちゃんの気持ちが揺り戻されてしまうのが怖かったからです。こんなとき、メールってもどかしい。

夜になってメールが届きました。

解約の件をBさんに話してみるつもりだと。
強制的に解約を阻むようなら、専門家に相談しようと思うと。
今後の交友関係を保つために。

マルチ商法にはごく短く触れているだけですが、何とかして友達との関係を守ろうと、ずいぶん悩んだ様子がうかがえます。

その悩みとともに、重大な事実も伝わってきました。

Aちゃんは、まだクーリングオフに動いてくれていませんでした。

そして、私の知らない事態が起きていました。

Aちゃんの自宅に、トライアルセットが届いていました。トライアルセットの代金も化粧品ビジネスへの入会金も、Bさんが払ってくれていました。後にAちゃんが言うには、Bさんが「出資」してくれたと。もちろんこのとき、私はそんなことを知るよすがもなく……。

(次回に続く)

マルチ商法対抗録・5 (トンネルの中へ)

2009年01月28日 23時31分20秒 | 日常のあれこれ
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(前回から続く)

「私は働けないから、これに賭 (か) けるしかないの。わらをもつかむ気持ちでやってみるの」
「それって、全財産を宝くじや競馬につぎ込むのと同じだよ。全財産を宝くじにつぎ込むのって、どう思う? バカだよね」
「……うん」
「それと同じだってば」
「でも、目の前にあるたった1本のくもの糸にすがるしかないの」
「マルチの初期で会員になるならともかく、今頃会員になってちゃ利益なんか出ないって」
「1/100の可能性でも賭けてみたいの」
かなり視野が狭くなっている様子がうかがえます。

「私は株をやってるから分かる。世の中には、いろいろな情報があるの。例えば株の場合なら、これから株が上がるという情報もあれば、下がるという情報もある。人間は勝手だから、自分が望む情報を信じるものなの。株が上がって欲しいと思ってる人は、これから株が上がりそうだという情報を信じちゃうの。でも、それじゃダメなのよ。そういう自分の心理を分かった上で、冷静になれないと。Aちゃんはね、今、Aちゃんにとって都合のいいバラ色の未来だけを思い描いて、リスクには目をつぶってるんだよ。それとね……」
もうひとつ、くぎを刺しておかなければならないことがあります。
「私は株をやってるけど、それは自分の資産のごく一部でしかないから。株につぎ込んだお金が全部消えてなくなっても、生活には全然困らない程度の金額だから。Aちゃんが化粧品につぎ込んだ金額は……」
Aちゃんは具体的な金額を口に出しませんでしたが、私は50万円とにらんでいました。
「生活に大きく影響するんでしょ? だったら、この化粧品ビジネスは、やめようよ。賭けをするより、手堅くいこうよ」
「みぃちゃんは、石橋をたたいて渡るよね。石橋を、たたいて、たたいて、たたいて、渡るよね」
「散々たたいて、渡らないこともあるけどね」
「手堅く、かぁ……」
「別に、生活の手段は化粧品ビジネスだけじゃないじゃん。何となれば生活保護の手もあるし。私のところに在宅でできる仕事の話が持ち込まれたこともあるよ。何年も前のことだから、今はどうか分からないけど。そういう話がまたあれば、うちの会社を経由して仕事をしてもいいし」
「そんな話もあったんだ」
Aちゃんの目が輝きました。この調子なら、クーリングオフするように説得できそうです。
「この会社のことで頭がいっぱいだと、ほかの選択肢が考えられなくなるから、いったんこの会社のことは忘れようよ」
「えーっ!? そんなことできない」
耳を疑いました。まだマルチに残るつもりでしょうか。
「このビジネスはダメだって。クーリングオフしようよ。いい? 絶対にクーリングオフするんだよ」
「……」
「財産を宝くじにつぎ込むつもり?」
「それはできない」
「でしょ? 同じことだよ。今回はあせらされて契約しちゃったけど、冷静に考えようよ。クーリングオフしようよ」

Aちゃんはクーリングオフしてくれるのでしょうか。私がAちゃんに解約を勧めるのは正しいことなのでしょうか。説得は余計な口出しでしょうか。

このままAちゃんが化粧品マルチ商法を始めても、失敗することは目に見えています。結局何十万円もの損失を出して終わるに違いありません。当然、Aちゃんは生活に困るでしょう。精神的にも不安定になるでしょう。
「そのとき、私はどうしよう。かなり苦しい立場に立たされることになっちゃう」
たびたび体調を悪くするAちゃんのことです。
「Aちゃんを黙って見てるなんて、私にはできないよ」
差し入れをしたり、家の中を片付けたり、いろいろ手伝わずにはいられません。しかし、差し入れは、実質的にマルチ商法の損失を補てんすることにはならないでしょうか。
「マルチ商法に手を出さないように説得したにもかかわらず、大金をつぎ込んだ人の面倒を見るのは……」
「甘やかしすぎだよね」
「でも、私は放っておけない。黙って見てるのも つらいし、世話を焼くのも つらい。そうなったら私はどうすべきかな」
私の口から、フーッ、と大きなため息が漏れました。

説得が延々と続きました。気づけば2時間が経っていました。

絶対にクーリングオフしてね、と念を押して、とりあえず解散することに。

このマルチの件は、まだ誰にも話していなくて、私に話すのが最初だと言います。「なぜかみぃちゃんには話そうと思ったんだよね。心のどこかで『止めて』と思ってたのかも」

駅まで歩く道中は、いつもの他愛もない話。

解約して欲しいの。利益なんか出ないから。入会してくれる友達なんかほとんどいないから。結局、お金も友達もなくすから。大金をはたいて化粧品ビジネスに賭けたのに、思うように会員を獲得できず、貯金ばかりが減っていく日々を過ごすことになったら、Aちゃんはどうなっちゃうんだろう。目の色を変えて人を勧誘するようになったりはしないかな。人が変わっちゃうかも。もう、Aちゃんとの仲もおしまいなのかな。

笑顔で「バイバイ」。地下鉄を降りるAちゃんの背中。その背中を心配そうに見送る私。乗車待ちの人混みに紛れたAちゃん。もうAちゃんは乗り換え口に向かって歩き始めたはず。

不安渦巻く私とAちゃんの間を、感情を持たない電車のドアが遮りました。

私は、暗く細長いトンネルに向かって走り始めた地下鉄の窓から、Aちゃんの姿を探しました。

乗客の波間に、しっかりした足取りのAちゃんを見つけたと思ったのもつかの間、Aちゃんの姿は、駅を満たす蛍光灯の白い光とともに後方に吸い込まれていきました。

Aちゃんはクーリングオフしてくれるのでしょうか。

私の不安は、暗いトンネルと車内の轟音 (ごうおん) に包まれ、行き場を失いました。

(次回に続く)

マルチ商法対抗録・4 (私にはこれしかないから)

2009年01月27日 23時47分51秒 | 日常のあれこれ
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(前回から続く)

Aちゃんは、ビジネスの仕組みも話してくれました。
「例えば、ある人が化粧品を買ってくれたとするでしょ。すると、その代金の中から一部が会社に行って、例えばここから10%がこっちの人に渡って……」
間違いなくマルチ商法です。
「既に2万7000人が会員になってるの」
ずいぶん広がっているようです。そこまで会員が増えたことに、正直、驚きました。
「ほかに、3000円を払って会員になるだけの方法もあるの。その方法だと、化粧品を安く買えるだけだけど」
しかし、Aちゃんは下位ランクの会員からの収入を当て込んでいます。単に化粧品を使うのではなく、会員の獲得に走るはずです。

「これなら、普通に働けない私でも、体調のいいときに自分のペースで収入を得られると思ったの」
多少の収入はあるでしょうが、果たして元が取れるかどうか。もし10%のマージンが自分の手元に入ってくるなら、会員を10人獲得しないと元は取れません。マージンが20%でも5人獲得する必要があります。
「友達も誘おうと思ってるの」
「やめなよ。マルチは友達をなくすよ」
「別に強引に勧誘するつもりはないから」
「それでも友達なくすって」
しつこく勧誘しなかったとしても、勧誘を迷惑がられたり、マルチ商法に手を染めていることで信用を失ったりして、友達が去っていくものです。たとえ会員になってくれたとしても、その友達がビジネスの実態に気づいたら、一転して関係が悪化するでしょう。

「私を助けるためってお願いして、お母さんやお姉ちゃんにも買ってもらって……」
「化粧品の代金には、上位ランクの人が取る利益も含まれてるんでしょ? 身内が買っても、お金は会社やほかの会員に回るんだよ。わざわざ会社やほかの会員にお金を渡して、Aちゃんにはごく一部しか回ってこないなら、最初から全額を生活費としてもらったほうが合理的じゃん」
「それはそうだけど、生活費をもらうのは気が引けるよ。『私を助けるために』って化粧品を買ってもらうほうが頼みやすいし」
私にしてみれば、マルチ商法で稼ぎたいので化粧品を買ってくださいと頼むほうがよほど印象が悪いと思いますが、Aちゃんは完全に業者を信じきっており、親や姉がどう受け止めるかまでは考えが及ばないようです。

「セミナーで言われたんだっけ?『明日からシステムが変わるから、今のうちに入会しないと利益を挙げにくくなる』って。それで、あせって契約しちゃったんだね」
契約を急がせるのは、よくある手口です。
「あせると判断を間違っちゃうこともあるよね。それは、しょうがないよ。人間、誰でも間違うことはあるもん。でも、気づいたら引き返そうよ」
Aちゃんに不注意があったにしても、不安でいっぱいの毎日を送っているAちゃんを責めることはできません。むしろ、Aちゃんの弱みに付け込んだ業者が憎くて仕方ありません。いったいどんな方法で言いくるめたのか。
「あわてて物事を始めるのは失敗の元だから、ここはいったんクーリングオフしようよ」
「だけど、私にはこれしかないから」

(次回に続く)