Cafe au Laitと かかれた うす茶いろの缶が、信号機の操作盤ボックスの うえに おかれていました。
工場で うまれ、ダンボールばこに つめられて出荷され、自動販売機やコンビニ、スーパーの店頭で うられました。自動販売機の なかに いたなら、工場をでてから ずっと くらい ばしょに とじこめられていたことに なります。コンビニやスーパーの たなに ならんだ ばあいも、自動販売機の なかより あかるいものの、そとの けしきをみては いません。
カフェオレ缶は、だれかに かわれて、はじめて そとの せかいをみることに なりました。かったひとは、缶をもって ぶらぶらと あるきながらカフェオレをのみました。缶も一緒に まちの けしきをみて あるきました。
そして、そのときは突然やってきました。缶は信号機の操作盤に おかれ、もちぬしが さっていきました。わかれの ときでした。ゴミ箱に なげいれられるわけでも、つぶされるわけでも なく、缶は交差点に おきざりに されました。
カフェオレ缶は、思いがけず交差点に たたずむことに なりました。わきめも ふらずに はしりぬける乗用車。銀色の立派な はこをせおったトラック。おおきな からだを ゆらしながら ゆっくりと とおりすぎる四角いバス。くるまの ながれが、時間どおりに規則ただしく いれかわる世界。
また別の ひとが やってきて その ひとに回収されるまでの、しばしの外出。この缶は、ふとした偶然から、ほかの缶たちよりも ながく まちを見物することが できました。ねぇ、このまちは どう?
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