レギュラーシーズンも残りあとわずかとなったので、今シーズンを振り返ると、やはり“投高打低”がさらに加速した『ピッチャーの年』だったと思います。数字で見ても、それはあきらかです。2000年から2009年までの10年間、メジャー全体の防御率は4.42でした。しかし、2010年は4.07になり、2011年は4点台を切って3.93。どんどん下がっているのです。
その理由のひとつとして挙げられるのが、カット・ファスト・ボール――日本ではカットボール、アメリカでは通称“カッター”と呼ばれる球種にあると思います。もともとカッターといえば、ニューヨーク・ヤンキースの守護神、マリアノ・リベラ(1勝2敗41セーブ・防御率2.05)の専売特許でした。リベラは1990年代後半からヤンキース不動のクローザーとなり、カッターだけで史上ふたり目の通算600セーブを達成しました。しかし近年、メジャーではリベラに限らず、多くのピッチャーがカッターを習得するようになったのです。
例えばフィラデルフィア・フィリーズのエース、ロイ・ハラデー(18勝5敗・防御率2.34)。彼は今シーズン、全投球の半数近くもカッターを投げたことで、さらにエースの地位を揺るぎないものにしました。また、ボストン・レッドソックスのジョシュ・ベケット(12勝5敗・防御率2.49)も、今年から本格的にカッターを投げるようになって復活。過去にもカッターを投げるピッチャーはいたのですが、メジャー全体での割合は低かった。しかし、今年はメジャーリーグのスカウティングレポートにも、カッターが欠かせないものとしてピックアップされています。また、ハラデーらが投げて好成績を残したことで、さらに比重を高めていきました。カッターは今年のメジャーを象徴する球種と言えるでしょう。
一方、カッターの大流行により、苦しめられているバッターも多くいます。そのなかでも、完全に“カッター地獄”にハマってしまったのが、シアトル・マリナーズのイチロー選手なのです。イチロー選手は今シーズン、ストレートやカーブなどの変化球は相変わらず良く打っています。しかし、カッターのようにバッターの手元で微妙に揺れるボールに対して、まったく打てなくなってしまったのです。
2007年から2010年の4年間で、イチロー選手はカッターに対して打率.429という驚異的な数字を残していました。それが今年は、カッターに対しての打率が.176と、著しく低下しているのです。もちろん、、配球やカウント、ゲームの状況など、毎回シチュエーションが異なるので、カッターが苦手になったと一概には言えないのですが、今シーズン、イチロー選手がカッターに対して思うようにヒットを打てていないのは気になるところです。
その最たる例が、テキサス・レンジャーズ戦です。今年のレンジャーズはエースのC.J.ウィルソン(16勝6敗・防御率3.01)をはじめ、先発・リリーフともに多くの投手がカッターを取り入れました。それにより、イチロー選手は昨年までレンジャーズ戦で通算打率.329とよく打っていたのに、今年は打率.157―¢ナ数でわずか8安打と、極端に打てなくなったのです。また、昨年からカッターを投げ始め、いまや“カッターの達人”とまで言われるようになったロサンゼルス・エンゼルスのダン・ハレン(15勝8敗・防御率3.06)にいたっては、今シーズンわずか打率.111―¢ナ数2安打と、ほとんどカモにされています。8月17日から9月6日までの20試合で、イチロー選手が無安打だったのは2試合だけでしたが、それはいずれもハレンが投げた試合でした。それぐらいイチロー選手は、今シーズン大ブームとなった“カッター”に苦しめられているのです。
過去の歴史を振り返ると、1970年代はスライダーが大流行したことで、ピート・ローズは打率3割を切り、シーズン200本安打を逃しました(1974年)。そして1980年代半ばになると、魔球SFF(スプリットフィンガード・ファストボール)が登場し、7年連続200本安打という当時の近代記録を更新していたウェイド・ボッグスがそれに翻弄され、8年連続を阻まれました。そして今は、カッターの時代です。現在、イチロー選手はあと13試合で、苦手なレンジャーズ戦を6試合も残しています。もし今年、イチロー選手が200本安打を達成できなければ、カッターによって大記録が途絶えたといってもいいかもしれません。
※記録はすべて9月15日現在
福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
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カッターによって大記録が途絶えた?
今期のイチローの打撃不振について、動体視力の低下、走力の低下、対戦チームのファインプレーが多く運が悪いなどの諸説がありましたが、上記記事は、これまでの中で私が一番そうかもしれないなと思える可能性の高い仮説ですね。
Was a great record of Ichiro cut off by a cut fastball?
About dullness of Ichiro of this term, there was an opinion such as the decline of the kinetic vision, a decline of the running power, a lot of fine plays of the play team being unlucky.
The article mentioned above is the hypothesis that I think to be the very likely to be it in various opinions.
その理由のひとつとして挙げられるのが、カット・ファスト・ボール――日本ではカットボール、アメリカでは通称“カッター”と呼ばれる球種にあると思います。もともとカッターといえば、ニューヨーク・ヤンキースの守護神、マリアノ・リベラ(1勝2敗41セーブ・防御率2.05)の専売特許でした。リベラは1990年代後半からヤンキース不動のクローザーとなり、カッターだけで史上ふたり目の通算600セーブを達成しました。しかし近年、メジャーではリベラに限らず、多くのピッチャーがカッターを習得するようになったのです。
例えばフィラデルフィア・フィリーズのエース、ロイ・ハラデー(18勝5敗・防御率2.34)。彼は今シーズン、全投球の半数近くもカッターを投げたことで、さらにエースの地位を揺るぎないものにしました。また、ボストン・レッドソックスのジョシュ・ベケット(12勝5敗・防御率2.49)も、今年から本格的にカッターを投げるようになって復活。過去にもカッターを投げるピッチャーはいたのですが、メジャー全体での割合は低かった。しかし、今年はメジャーリーグのスカウティングレポートにも、カッターが欠かせないものとしてピックアップされています。また、ハラデーらが投げて好成績を残したことで、さらに比重を高めていきました。カッターは今年のメジャーを象徴する球種と言えるでしょう。
一方、カッターの大流行により、苦しめられているバッターも多くいます。そのなかでも、完全に“カッター地獄”にハマってしまったのが、シアトル・マリナーズのイチロー選手なのです。イチロー選手は今シーズン、ストレートやカーブなどの変化球は相変わらず良く打っています。しかし、カッターのようにバッターの手元で微妙に揺れるボールに対して、まったく打てなくなってしまったのです。
2007年から2010年の4年間で、イチロー選手はカッターに対して打率.429という驚異的な数字を残していました。それが今年は、カッターに対しての打率が.176と、著しく低下しているのです。もちろん、、配球やカウント、ゲームの状況など、毎回シチュエーションが異なるので、カッターが苦手になったと一概には言えないのですが、今シーズン、イチロー選手がカッターに対して思うようにヒットを打てていないのは気になるところです。
その最たる例が、テキサス・レンジャーズ戦です。今年のレンジャーズはエースのC.J.ウィルソン(16勝6敗・防御率3.01)をはじめ、先発・リリーフともに多くの投手がカッターを取り入れました。それにより、イチロー選手は昨年までレンジャーズ戦で通算打率.329とよく打っていたのに、今年は打率.157―¢ナ数でわずか8安打と、極端に打てなくなったのです。また、昨年からカッターを投げ始め、いまや“カッターの達人”とまで言われるようになったロサンゼルス・エンゼルスのダン・ハレン(15勝8敗・防御率3.06)にいたっては、今シーズンわずか打率.111―¢ナ数2安打と、ほとんどカモにされています。8月17日から9月6日までの20試合で、イチロー選手が無安打だったのは2試合だけでしたが、それはいずれもハレンが投げた試合でした。それぐらいイチロー選手は、今シーズン大ブームとなった“カッター”に苦しめられているのです。
過去の歴史を振り返ると、1970年代はスライダーが大流行したことで、ピート・ローズは打率3割を切り、シーズン200本安打を逃しました(1974年)。そして1980年代半ばになると、魔球SFF(スプリットフィンガード・ファストボール)が登場し、7年連続200本安打という当時の近代記録を更新していたウェイド・ボッグスがそれに翻弄され、8年連続を阻まれました。そして今は、カッターの時代です。現在、イチロー選手はあと13試合で、苦手なレンジャーズ戦を6試合も残しています。もし今年、イチロー選手が200本安打を達成できなければ、カッターによって大記録が途絶えたといってもいいかもしれません。
※記録はすべて9月15日現在
福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
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カッターによって大記録が途絶えた?
今期のイチローの打撃不振について、動体視力の低下、走力の低下、対戦チームのファインプレーが多く運が悪いなどの諸説がありましたが、上記記事は、これまでの中で私が一番そうかもしれないなと思える可能性の高い仮説ですね。
Was a great record of Ichiro cut off by a cut fastball?
About dullness of Ichiro of this term, there was an opinion such as the decline of the kinetic vision, a decline of the running power, a lot of fine plays of the play team being unlucky.
The article mentioned above is the hypothesis that I think to be the very likely to be it in various opinions.