Aのお話しです。
これまで、Aの事を、『わがままで困った人』というイメージで書いて来ましたが、彼女も彼女なりに、いつも深く悩んで傷ついていました。
子役からの卒業…というか、大人になってからの転身って、本当に難しいらしいんです。
しかも、彼女は、『大活躍』というほどの経歴では無かったのですし、キャラクターが定まりきれていない雰囲気だったので、本当に悩んでいたと思います。
彼女がどんな活躍をしていたのか…というと、実のところ、私は全く知らない(観たことが無い)んです。
彼女が活躍していた頃は、私は田舎ののんきな小娘。
もちろん、今のように、過去の画像を観る事ができるツール(DVD、ビデオ)なんてありません。
…なので、噂に聞いた話ししか知らないワケです。
しかも、出会った時、既に彼女は、『嫌みな元子役』として存在してましたから、周りから聞こえてくる彼女の業績は、悪意のある情報も混じっていた事と思います。
だけど、やっぱり、彼女には能力があったと思います。
皆が同じスタートラインにスタンバイしても、彼女は数メートル先からのスタートですし、良くない噂を差し引いても、基本の力があるので、スタートダッシュ力が強いんです。
だから、いつも少し前を走っていた彼女。
彼女は、謎の存在でした。
彼女とのいろんなトラブルを過ごしていた私も、彼女は『要注意』の貼り紙を貼ってましたから、いつも距離をあけていました。
ところで、私は、レッスンに向かう道のりにひっそりと佇む団子屋さんが大好きで、
何度かその道を通った人でも
「そんな店あったっけ?」
と言うくらいに存在感の無いひっそりとしたお店構えでした。
ある日、その店に入ると、大好きなつぶあんとみたらし団子を頬張っていました。
すると、やたらと鼻水をすする音が…。
振り返るとAでした。
Aは、後から入って来たんですね。私は台本を読んでいて全く気づきませんでした。
鼻水をすする音がうるさい。
…え?泣いてる?