引っ込み思案で素朴なMちゃんがイライラするらしく、Aは、現場の待ち時間で声を荒げた。
「『私はいいよ』なんて、Mみたいなタイプ、この世界ではいらないから❗」
Mちゃんが泣き出した。
「どうして、そんな事言うの?
…Mちゃんも、これからオーディションかも知れないんだから、泣いちゃだめ。笑顔で❗」
皆より少し年上、おねえさんのUは、穏やかにMちゃんをなだめた。
ひとしきり、言いたいことを言ったAは、皆に背中を向けて黙ってしまった。
「お待たせしちゃってすみません~❗」
助監督さんが現れた。
「あの~、Mさん…、どちらですか?」
「はい。私です。」
「ちょっと来てもらえますか?」
Mちゃんは、助監督さんに連れられて出ていった。
ーーーそうです。
そうして、そのまま、素朴なMちゃんは、帰って来ませんでした。
重要な役を演じることになったのです。
オーディションもなにもありませんでした。
最初っから素朴なMちゃんを一目見て決まってしまったらしいです。
Mちゃんを選んだのは作家さんだと聞きました。
主人公のお勤め先のお手伝いさん役で、主人公ととても仲良くする役柄だったんです。
大抜擢でした。
後にドラマを観たら、素朴なMちゃん
の素朴度が炸裂してましたね。(素朴が炸裂って変ですね💦…そのくらい、ぴったりだったんです✨)
それ以来Aは、素朴なMちゃんに強い意見を言うことはなくなりました。