あの頃(現場)3

2020-05-11 04:32:10 | 日記
引っ込み思案で素朴なMちゃんがイライラするらしく、Aは、現場の待ち時間で声を荒げた。

「『私はいいよ』なんて、Mみたいなタイプ、この世界ではいらないから❗」

Mちゃんが泣き出した。

「どうして、そんな事言うの?
…Mちゃんも、これからオーディションかも知れないんだから、泣いちゃだめ。笑顔で❗」

皆より少し年上、おねえさんのUは、穏やかにMちゃんをなだめた。

ひとしきり、言いたいことを言ったAは、皆に背中を向けて黙ってしまった。


「お待たせしちゃってすみません~❗」
助監督さんが現れた。

「あの~、Mさん…、どちらですか?」

「はい。私です。」

「ちょっと来てもらえますか?」

Mちゃんは、助監督さんに連れられて出ていった。

ーーーそうです。

そうして、そのまま、素朴なMちゃんは、帰って来ませんでした。

重要な役を演じることになったのです。

オーディションもなにもありませんでした。

最初っから素朴なMちゃんを一目見て決まってしまったらしいです。

Mちゃんを選んだのは作家さんだと聞きました。

主人公のお勤め先のお手伝いさん役で、主人公ととても仲良くする役柄だったんです。

大抜擢でした。

後にドラマを観たら、素朴なMちゃん
の素朴度が炸裂してましたね。(素朴が炸裂って変ですね💦…そのくらい、ぴったりだったんです✨)

それ以来Aは、素朴なMちゃんに強い意見を言うことはなくなりました。