その日の現場は、待ち時間が長かった。
Mちゃんは、ここのところ、『お○ん』で活躍中なので、その現場では、すでに、『いい役』を用意されていました。
それを知ったAは、ショックだったのか、ずっと無口。
だけど、素朴Mちゃんが苦手なサスペンスですから、台本を読んだMちゃんは
「どうしよう…」
と、戸惑っていました。
Mちゃんの出番は、そんなに多くはありませんでしたが、わりと重要で、しかもなんと、『悲鳴』と『泣き叫ぶ』と、言うト書きが…。
『悲鳴』や『泣き叫ぶ』は、Mちゃんが最も苦手とするものでした。
実はMちゃん、ある老舗の和菓子屋さんのお嬢さん。
一度お店に行ったことあるけど、穏やかなおとうさんとおかあさんと、厳格そうなおばあさま。
…悲鳴をあげたり、泣き叫んだりするにはとても程遠い環境です。
演劇をする…にあたっては、
生まれ育った環境も影響されますよね。
ちなみに、その頃の私たちを指導してくださる先生のひとりに、後にある有名な事務所の代表となる先生が居たのですが、
その先生は、『接客業はするな❗』が口癖でした。
接客業をすると、どんな時も笑顔で、怒りを押さえ込んでしまうから…だそうです。
だけど、接客業でアルバイトをしている…という教え子が多かったと思います。
老舗の和菓子店で育ったなら、究極の笑顔対応の環境ですよね。
最初は、『接客業はするな❗』なんて、無茶苦茶な…💦💦
…と、思いましたが、こんな事を言ってたんだなぁ…と、あらためて思いました。
眉間にシワを寄せて、台本とにらめっこのMちゃん。
Aと私も台本をもらい、配役もされましたが、あまり感情をあらわにする役柄では無かったので、
『役作り』で悩むMちゃんが羨ましかったと思います。
「…どうしよう…。アンコなら、こういう役、上手でしょうね」
こんな言葉がマズかった。
「アンコなら…」と、私を例えに出したものだから、Aがカチンと来たようで…。
「なんで、こんなことで悩むの?!こんなことも出来ないなんて、ここに居る資格無いよ‼」
Aの怒りスイッチを入れてしまった💦💦