唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋<Gauche>の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
音楽室の重いドア
一週間ぶりに音楽室の重いドアを開けた。ピアノの匂いなのかチェロの匂いなのか、あるいは使いもしない古い、年月を経た楽譜の紙とインクが発する匂いなのか。渾然とした空気の中でそれと判るのは松ヤニの微かな匂いだけ。そんな淀んだ空気の中に身を置きチェロを抱きC線からA線までゆっくりと弓をひき音を確かめる。心臓の鼓動に合わせて弓をひく。
若い頃には、今どき過労死ラインと云われる程の残業を幾月もこなしていたから、それを思えば今の仕事の忙しさなど物の内ではない。気持ちの問題でしかない忙しさ。忙しさとも云えない単なる慌ただしさ。もっと短時間でもっと上手く出来たはずなのに出来ない苛立ち。
良いではないか。以前と同じようには出来なくても以前には出来なかったことが出来るはずだ。それは時を重ねた今だから、時を重ねた今にしか出来ない何か。自己満足ではなく、たとえささやかでも心を込めた良い仕事が出来ればそれで良いではないか。
慌ただしさを云い訳に足が遠のいていた音楽室。重いドアを閉めて部屋に漂う空気を胸いっぱいに吸う。渾然とした匂いを確かめる。心の求める音を、旋律を弾いてみる。抱いた楽器から伝わる響きを身体全体で受け止める。身体のどこかで、心のどこかで凝り固まっていたものが音もなく溶けていく。
例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、咲き始めた雪柳。
毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは3月11日に撮影した写真を5点掲載いたしております。春がちょっと足踏みをしている、そんな森の様子をどうぞご覧ください。
「恩田の森Now」 http/:blog.goo.ne.jp/ondanomori
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