猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

プロレタリアートとブルジョアジー

2019-11-11 22:49:35 | 歴史を考える

エンゲルスの『空想から科学へ(Die Entwicklung des Sozialismus von der Utopie zur Wissenschaft)』には、「プロレタリアート(Proletariat)」という単語がやたらと出てくる。

いっぽう、フロムの『自由からの逃走(Escape from Freedom)』には、でてこない。出てくるのは、「労働者階級(working class)」である。

「プロレタリアート」の語源がローマ帝国の最下層の市民ことだと知ると、エンゲルスはなぜ「プロレタリアート」を使ったのか、不思議な気がする。

ローマ帝国では奴隷が働いていたのだから、「プロレタリアート」の選択はあまり適切とは思えない。ただし、聖書を読むと、ローマの帝国の属国では、奴隷も下僕も差異がはっきりしない。ローマ市民以外は、奴隷でなくても、働いていたのである。

いっぽう、「ブルジョアジー」の語源は、フロムの『自由からの逃走』にあるように、城壁のなかに貴族と共に住む都市の住人である。ローマやパリを訪れると、城壁が残っており、城壁の中が旧市街で、城壁の外が新市街である。現在、観光に訪れるのが旧市街で、仕事に訪れるのが新市街である。

フロムは中産階級が嫌いなようで、ナチスをささえたのが中産階級だと思い込んでいるようである。日高六郎訳では「都市の中産階級」という言葉がでてくるが、これは“the urban middle class”の訳である。私は、「新市街」のというニュアンスでフロムが使っているのではと思う。私がヨーロッパに行った記憶では、新市街に近代的なビルが立ち並び、ビジネスの中心になっている。

フロムは、小さな商店主、職人、ホワイト・カラー労働者などの下層中産階級が、自由というモノに耐え切れず、熱狂的にナチスに走ったと言うが、私は、大した根拠もなく、それを疑っている。下層中産階級は、ブルジョアジーや上層中産階級より、圧倒的に数が多い。だから、たまたま、ナチスの支持者のなかで目立っただけではないか、という気がするからだ。

いっぽう、労働者階級に熱烈なナチス支持者がいなかったのなら、フロムのいうことは正しいとも言える。

しかし、階級で人間の内面が規定されるというのも寂しい話である。