新首相の菅義偉は、酒やたばこをたしなまないという。私も酒やたばこをたしなまない。お金の無駄使いと思ったから、私はやめたのである。
あいかわらず、菅を「叩き上げ」の首相だとヨイショするメディアの番組や記事であふれている。しかし、どこにも菅が「弱者に寄り添う」というエピソードを紹介していない。紹介しようにもそのようなエピソードがないからだろう。
菅が2世3世議員でないことを持ち上げる人もいるが、それは自民党内の話である。民主党政権時代に、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦が首相になったが、菅直人も野田佳彦も2世3世議員ではない。現在の自民党の姿が問題なのである。自民党は腐りきってしまった。
「叩き上げ」の問題は、弱い人のことに寄り添うことができないことである。「自助・共助・公助」と菅は言っているが、その順序が問題である。菅は、総裁選出馬決意表明の9月2日につぎのように言っている。
〈まず自分でできることはまず自分でやる。自分でできなくなったらまずは家族とか地域で支えてもらう。そしてそれでもダメであればそれは必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行なっていきたいと思います〉
すなわち、「甘えるな、俺のように自分の力でやってみろ」と心の底で思っているのである。お坊ちゃんの自民党議員にそういうのは理解できる。しかし、弱者は別にお坊ちゃんではない。本人の希望で弱者になったのではない。
そして、その自民党は、ここ、数十年にわたって「自助」を党是にかかげてきたのだ。菅の「自助」は筋金入りである。
自民党政権は、労働市場の流動化という名目で、派遣労働者というものをつくった。戦後、労働者の権利を守るということで、雇用者を正当な理由なく首切れなくなった。会社の経営状態に応じて雇用者数を調整できるようにするため、派遣労働という不自然なものを作ったのである。労働者を安易に首にできないということは、経営者に安定して利益をあげるという責任があるという考えで、別に、不自然な考えではない。
また、菅は、この9月18日に人材派遣業大手のパソナグループ会長の竹中平蔵と会食をしている。
竹中平蔵は、20年前小泉政権で経済財政政策担当大臣、金融担当大臣を務め、銀行救済、規制緩和、派遣労働をおし進めた男である。竹中が、総務大臣をしていたとき、菅はその副大臣を務め、竹中から色々と教えてもらったと言っている。
菅は規制緩和を進めるのは間違いないだろう。いっぽうで、菅は中小企業や地方の金融業を政府主導で再編し、集約化しようとしている。農業においても、農協をつぶして、農業を株式会社しようとしている。
この一見矛盾しているような行動は、「新自由主義」と見るよりも、戦争中の統制経済を理想とする「国家主義」ではないか、と見る。
「国家主義」は「愛国」や「軍事大国化」と矛盾しない。
地元新聞によりと、秋田県民は、菅が首相になったことで、これまで以上に「えこひいき」してもらえると興奮している。「国家主義」は「不正」とも矛盾しない。
「国家主義」は「権力」に対する偏愛である。官僚を脅かし、命令することが「国家主義者」の喜びである。
「権力」を偏愛するものは、劣等感をもっている人を見出し、自分に忠実な部下に仕立てる。有能でも自分に反抗するものは徹底的にいじめる。菅の人心操縦法にこれが見られる。また、ナチの時代にドイツで現実におきたことである。
菅の父親は、戦前、満州鉄道に務めていたエリートである。戦後、秋田に引き上げて、イチゴ栽培をはじめ、地方の名士になった男である。菅も子どものときに統制経済の話をきいて洗脳されたのではないか。竹中平蔵のようなヤクザな男に利用されないことを望む。
権力闘争のため、食事時間や睡眠時間を切りつめ、考えることもしない「叩き上げ」は困ったものだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます