これは、6年前に書いたブログである。
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昨日、参議院選挙の自民党候補のチラシが入っていた。不愉快な内容だったのでここに記す。
彼が大学を卒業した1985年を「『ジャパン・アズ・ナンバーワン』などと、日本全体に強烈な高揚感が満ちあふれていた」となつかしんでいる。困った歴史認識である。
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書で、日本で70万部を超えるベストセラーとなった。
「高揚感」とは、必ずしも良いものではなく、地に足がついていないといけない。地に足のついていない高揚感は「自尊心」の肥大または誇大という。双極性障害では高揚とウツを繰り返す。精神疾患とするのは、高揚のときに誤った過剰投資で破滅したり、ウツのとき自殺をしたりするからである。
作家、北杜夫は双極性障害を発症し、高揚期に家族を怒鳴りつけ、株で大損を繰り返し、自己破産した。
1970年代に日本の高度経済成長が軟着陸したが、5,6年前の中国と同じく、相変わらず、安い労働賃金で工業生産物をアメリカに輸出しつづけていた。1980年代前半は、自動車を中心として日米経済摩擦がもっとも激しかった時期である。
このような背景のもと、1985年9月22日に、アメリカのプラザホテルでの5ヵ国財相会議で円高容認が合意された。
だから、1985年はトンデモナイ年である。
円高に対処するため、日本の自動車、電気・電子等など製造業は、労働賃金の安いアジアに工場を移した。また、日本政府は景気対策として大幅な金融緩和を行い、金融業は不動産や株に投資し、急激なバブルが始まった。
1985年9月に12,700円だった日経平均株価が1989年12月には38,916円に達した。この間、日本の製造業までが、財テクと称し、株の売買に手を出した。
先ほどの自民党候補は、「バブルが崩壊してからジャパン・バッシング、ジャパン・ナッシングと言われるようになり、日本人自身も、あきらめているのではないか、と危惧する日々がつづきました」とチラシに書いている。
バブルが崩壊してからの、ジャパン・バッシングなんて、特になかった。この自民党候補はウツの特徴の被害妄想に陥ったか、人を不安におとしいれるためにウソをついているだけである。
「失われた10年」というが、実は、バブルが崩壊した後の10年は、まっとうな世界に戻っただけで、ウツになるような状況では全くなかった。
1990年代は、世界に冠たる日本の技術が開花した時期である。「財テク」と言っていばっていた企業の財務部門の発言が抑えられ、自由で独創的な研究開発が製造業で進められた時期である。ノーベル賞を受けた赤﨑、天野、中村が窒化ガリウムによる青色LEDの半導体を発明したのもこの時期である。富士通、日立が画期的な液晶テレビの方式を開発したのもこの時期である。
「失われた10年」とウツウツとしていたのは、あくまで、不動産や株で大きな負債を作った日本の金融業である。この負債は、小泉政権のとき、銀行の合併と国の融資によって、清算した。不思議なのは、誰かがバブルでもうけたはずであり、そのことが公けには語られないことである。
さて、社会学者エズラ・ヴォーゲルの1979年の著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が評価していたのは、日本企業の「終身雇用制、年功序列賃金制、企業と協調的な労働組合、企業内福利厚生の充実、目先の利益でなく長期的な利益を上げることの重視、比較的小さい賃金格差」である。
現在の日本は、真逆の状況におちいっている。
さきほどの自民党候補は、「分配の問題だけを考えると、限られたパイの奪い合いになるから、生産性の高い経済構造を作らないといけない」と言って、「非正規雇用」や「賃金格差」の問題を是正しようとしない。彼の言っている『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は何なのか。
だから、彼のチラシを読んで私は不愉快になった。
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