「美少女戦士セーラームーン」という漫画について。子供の頃、この漫画を結構楽しんで見てはいた。でも言いようのないモヤモヤをずっと感じていた。アニメ版に対しては、登場人物に妙にロリコンが多い点以外には特に文句はない。違和感があったのは主に漫画版。
完結してからもう大分経っているけど、昔自分が違和感を抱いていたポイントについて書いてみる。
一つ目。度が過ぎた主人公至上主義。
主人公至上主義という現象自体は、フィクションではよくあることだと思う。だけどこの漫画のはちょっと耐えられないレベル。主人公さえ良ければそれでいいっていう考えが作品全体に貫かれている感じがして。他の人間がうさぎの幸せのために犠牲になっているように見えるんだ。特にうさぎを守護する四戦士。
四人には自分の人生がない。うさぎのためだけに生きて、うさぎに全てを捧げていて、恋人ができるのもうさぎだけ。
もちろん恋人がいる=幸せでもないし、恋愛至上主義には反対だけど、特に美奈子やまことの場合、本当はそういう願望があるのにうさぎのために諦めてるような感じがして切なくなる。
そして、四人ともそういう状態を自分で肯定している。ほとんど反発はしていない。でもそれが刷り込みのように思えて、なんだか気持ち悪くて。
お姫様とその家来たちだったのは前世のことで、今はうさぎだって一般人のはず。なのに前世に存在していた身分制をずっと引きずっている。そもそも私は子供の頃から王子様とか王女様とかに全く憧れないどころか「ケッ!」と思ってたから、余計にこういうものに反発を感じるのかもしれない。
人は生まれながらに平等なんだ、実際そうじゃなくてもそうあるのが理想なんだと思ってるから、身分制を全肯定されるようなストーリーは好きになれない。しかも共和制のはずの現代日本にまでそういうものを持ち込まれるのがね。
作者が思い入れを込めて特別扱いすればするほど、読んでいる自分の心は主人公から離れていった。
最後には不老不死になって、地球くらいなら軽く破壊できるくらいのすごい力を持って。感情移入できないよそんな主人公。
二つ目。ディストピアにしか見えない未来世界。木も生えない殺風景な都市がまず薄ら寒くて怖い。
うさぎは22歳で女王に即位したらしいんだけど、この共和制の国でどうして突然そんなことが出来たんだろう。これってつまり世界征服だよね。地球を乗っ取って支配したわけだよね。悪役と何が違うんだ?
ブラック・ムーン編は主人公側よりも敵側の方が真っ当に思える。
たしか、不自然な不老長寿の世界と月の一族の支配に反発したために地球から遠い、暗い星に追放された人たちがいて、彼らはその子孫なんだよね。
自分の意見に反対する者を追放って、それ完全に悪役だよ。独裁者だよ。恨まれて当然だ。でもその自覚は全くなくて、自分は正義の側だと思っているのが怖い。
「ネオ・クイーン・セレニティはクリスタルパレスの外に出たことがほとんどない」って言及されているところもどこかにあって、嫌な女王様だなという印象が尚更強まった。自分だけの世界に閉じこもって、国民のことなんか見ようともしない利己的な女王様。
そしてうさぎの家族はどうなったんだろう。夫と子供のことはわかったけど、両親と弟は? それまでいた友達は? 温かい家庭に育って家族との仲も良好だったのに、未来世界では影も形もない。一緒に暮らしているようには見えないし。
納得いかなさすぎていろいろ妄想してしまう。第2部の敵がネオ・クイーン・セレニティとキングだったら、とか。
敵は力を持ちすぎて支配欲の塊になってしまった未来の自分で、ブラック・ムーンと力を合わせてそれを倒す、なんて展開も結構面白そうだと思う。