2021年 パイプリムの再生
恐ろしい新型コロナウィルスが、高齢者(以外にとっても)に ゛一時の考える時間 ゛を与えてくれました。不自由なく高度成長期の忙しい時代を生きてきた団塊の世代は、ここに来て「失われた1年」と共に、改めて軌跡を振り返り、先行きを考える時間を否が応にも与えられたのだと思います。
一昨年より具体的な終活活動に入りました。身辺整理の一つとして、両親の残したものも含め「アルバム」を全てスキャン、デジタルデータにしました。また、数百本の相当以前より録り溜めたVHSビデオテープを同様にデータ保存しました。アルバムは、自前のスキャナーによる高解像度の処理で済ませましたが、アナログビデオテープはビデオキャプチャーケーブルを購入せざるを得ませんでした。DVDへデータ変換・保存の市販のサービスは知っておりましたが、思い通りの出力・保存について二度手間なように思えましたので、自分ですることにしました。起動可能なビデオカセットレコーダーを大事に取っておいたのが、その作業を可能にしてくれました。
キャプチャーケーブル(GV-USB2/HQ)のビデオ録画ソフト(「Light Capture」)にてデータ変換を行いますが、Aのような素人にも案外楽に作業出来ました。バンドルソフトもビデオ編集ソフト・BD/DVDオーサリングソフトも付属して、結構楽しめました。
(身辺整理のお役立ちアイテム「ビデオキャプチャーケーブル」)
アルバムと並行して文書データの選別もはかどります。データ化出来るものは極力作業を進めますが、趣味で集めた「物」の処理は今一つ進みません。結局、捨てるか、人にあげるか、昨今流行のオークションサイトかフリマでの処分しかないのでしょう。かつて小遣いをはたいて求めた愛着のある「物」ですので、簡単には処分・手放したくはありません。その「物」の持つ価値を分かる次の所有者を捜すことにしました。そのための作業に入りました。
今まで、A自身が再生利用するために作業をしてきましたが、これからはそれに「譲る」ための価値を高める作業が追加されることになります。
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【パイプリムの再生】
(MILREMOのレコードルート軽合金リム)
MILREMOの ゛RECORD ROUTE ゛軽合金製ロード用パイプリム 36穴 両鳩目(ダブルアイレット)です。1970年頃に購入したロードレーサーのホイールリムですので、50年ほど経過しております。室内(物置)保存でしたので、鳩目のサビとアルミ部分の腐食を取り除けば、凹み転倒跡は見られませんので再使用に耐えうるかもしれません。
゛MILREMO ゛ブランドは、英国の輸入業者・通信販売会社であったRon Kitchingにより、1958年に他のブランド(゛RONKIT゛゛J.ANQUETIL゛゛REG゛など)と共に登録されたもので、以後世界的なブランドの一つとして広がっていきました。その名前は、50年代ダレッサンドロタイヤの輸入に関して、英国での商標権を持っていたホールズワージーとの商衝突に対抗するために作られたという話もあります。あらゆるコンポーネントパーツに付けられて販売された製品゛MILREMO゛は、多くは今で言うOEM(委託製造)ブランドによるもので、そのメーカーはフランスが多かったようです。名前は見ても分かるように、ミラノ~サンレモのサイクルレースに由来しています。
(大方のリムセメントを削り取ったリム外観)
1970年発行された「RON KITCHING`S HAND BOOK」42ページに ゛MILREMO゛のブランドマークと共に、以下のように説明されています。
「Miracle Marque Accessories(奇跡のブランドアクセサリー)
サイクルスポーツの必要性を実践的に理解し、世界最高の工場で最高品質の素材を使用して製造され、活動豊かなサイクリストによって設計・テスト、証明されたMILREMO Miracle Marque アクセサリーは、他に類を見ない価格で提供されます。
独自性のある、…とりわけロンキッチンにより推奨され、彼の誠に信頼できるスペアサービスに支えられた…、MILREMOは適切な価格により、信頼性を求めるあなたに答えます。」
(1970年「RON KITCHING`S HAND BOOK」42Pより)
今回リム研磨に使用した工具・用品・研磨剤は下記になります。写真と番号を照らし合わせてください。
① SHOWAマイクログリップグローブ
② ホイールタイプ電動ワイヤーブラシ(電動ドリル・共)
③ ピカール ラビング コンパウンド(半練り)
④ ピカール 金属みがき(液体)
⑤ 金柄真鍮ブラシ
⑥ 柄付き大曲スチールワイヤーブラシ
⑦ 真鍮ブラシ手付型
⑧ 柄付スチールブラシ
⑨ 研磨たわし(荒目)
⑩ 耐水ペーパーヤスリ #320
⑪ アミ目両面ヤスリ #600
(研磨作業に使用した工具・用品・研磨剤)
○ 今回の再生作業に入る前に、カチカチに固まったリムセメントの削り取り作業を、②の電動ドリルにより大雑把に研磨後、各ブラシ⑤⑥⑦を使い分け、終えておりました。それほどリム面を研磨すること無く写真のようになりました。鳩目の中の残滓は、小型ドライバーで掻き取りました。ペーパーヤスリ等での研磨はせず、このまま使用します。
(結構きれいに削り取れたリムセメント跡)
○ タイヤ当り面(タイヤ接着面)は隠れてしまうので機能的にしっかりタイヤが密着できれば、少々大雑把な仕上がりでも良いですが、見えるスポーク側はそうはいきません。仕上げ工程は④の金属みがき、もしくは③のコンパウンドになる事は、過去の研磨経験より感じました。
作業前のスポーク側リム面は、結構な腐食の進み具合です。高価なリムだと鳩目も真鍮製と聞きますが、RECORD ROUTEの両鳩目は鉄製で、これのサビも半端ではありません。このリムは制動機能をより上げるために両側面部に「ローレット」を刻み込んでありますが、腐食と摩耗のためハッキリ見えません。
(大分腐食が進んだリム表面)
○ 以前、⑦真鍮ブラシ手付型1本だけ使用して、トコトン腐食した゛ユニバーサル サイドプルブレーキ #68゛前後アーチを研磨しました。曲面や凹凸の多いアーチアームや小さなワッシャ・スプリングまで、結構再生研磨できる真鍮ブラシを見直したものです。柔らかい軽合金リムにスチールブラシは硬過ぎますので、魔法の真鍮ブラシ手付型やコンパウンド、金属みがきを試しますと、見た目きれいな研磨面に仕上がりますが時間がかかり過ぎ、一向に作業がはかどりません。腐食深度も深いようで、思い通りの時間と仕上がりにならず、集中力が持ちませんでした。
色々トライしたあげく曲面にも良くフィットし、研磨番手も多いペーパーヤスリを選びました。まず#320で粗研磨後、#600で中研磨、仕上がりはコンパウンドにしました。深い腐食は幾分残るものの、余り気にならない出来上がりなので、研磨方法は決定です。試し研磨の写真を参考に載せました。①→②→③の研磨工程になります。
(研磨工程は①→②→③に決定)
○ 工程① ⑩耐水ペーパーヤスリ#320による研磨作業。
(工程① ⑩耐水ペーパーヤスリ#320による研磨跡)
(⑩耐水ペーパーヤスリ#320による研磨作業 A )
(⑩耐水ペーパーヤスリ#320)
○ 工程② ⑪アミ目両面ヤスリ#600による研磨作業。
(工程② ⑪アミ目両面ヤスリ#600による研磨跡)
(⑪アミ目両面ヤスリ#600による研磨作業 A )
(⑪アミ目両面ヤスリ#600)
○ 工程③ ③ピカール ラビング コンパウンドによる研磨作業。
(工程③ ③ピカール ラビング コンパウンドによる研磨跡)
(③ピカール ラビング コンパウンドによる研磨作業 A )
○ 結構な時間と手間を要して、リムの再生研磨は出来上がりました。Aはある程度の見映えと機能的に使用出来れば良いので、あまり細部にはこだわりません。表面研磨によって強度的にどの位の影響が出るものかは分かりませんが、実際にホイールに組み上げて試してみたいと思います。両鳩目は「強度として幾分強い」との記事を読んだことはあります。重量は1ペア720g、鳩目回りの多少の汚れは目立ちますが、半世紀を経て再生、本来の使用目的に復帰出来ればリムも本望かと……?
(リムの研磨完成)
(1ペア720g ダブルアイレットのため仕方の無い重量かな?)
(愛着のあるMILREMO ゛RECORD ROUTE ゛再生! )