Feelin' Groovy 11

I have MY books.

励ましのコトバ③

2004-12-12 | 村上春樹
「多くの場合、我々は自分の心を見定めることができないまま
 行動を選びとっていかなくちゃならなくて、それがみんなを迷わせるんだ」
 (中略)
「でもそれは跡を残すんだ。そしてその跡を我々はもう一度
 辿ることができるんだ。雪の上についた足跡を辿るようにね」
「それはどこかに行きつくの?」
「僕自身にね」
  (『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹著 新潮社)


 
どんな決定も自分自身でなしたことである。
良きにしろ悪しきにしろ
「その跡を我々はもう一度辿ることができる」とは
素晴らしいことだと思った。
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菊葉荘の幽霊たち

2004-12-12 | 
こうして歩いていると、次第に奇妙な気分になってくる。
こんなにもたくさんの部屋があるのに
どうしてみなふさがっているのだろう。
わたしたちが見ているのはすべて賃貸住宅であり、
だれもがその部屋を所有せず住んでいて、
きっと何年か後にはそこを出る。
しかし現在わたしたちの前に空き部屋はない。
とすると、部屋と人々の数は決定されていて、彼らはみな
順繰りに部屋という部屋を移動しているとしか思えない。
わたしたちの知らない隙に、こっそりと。
(『菊葉荘の幽霊たち』角田光代著 ハルキ文庫)


生まれた時から自分の家があって
同じところに住み続けている私には
彼らの思いを理解することは出来ないのかもしれない。

主人公とその友達「吉元」は
自分の部屋が自分の部屋ではない気がして落ち着かず、
最後はとうとう自分の部屋から逃げ出す。

これがどうも私にはピンとこない。

けれどもここが自分の居場所であるという根拠が
頼りない事実であるということだけが分かった。

街中こんなに沢山の家が並んでいるのに、おれの家が一軒もないのは何故だろう?
「おれ」はふと思いつく。
家がないのではなく、単に忘れてしまっただけなのかもしれない、と。
ある一軒の前で「おれ」は問う。
「ここは私の家ではなかったでしょうか?」
「ここは私の家ですわ」
と答えた女に、「おれ」は次のように言った。
「それがなんだっていうんです?あなたの家だからって、私の家でないとは限らない。そうでしょう」
          (青字は『壁』第三部 赤い繭より安部公房著 新潮社)
 
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