Feelin' Groovy 11

I have MY books.

存在について

2005-01-27 | 
「蜜柑むき」のパントマイムがうまい彼女の言葉

  「あら、こんなの簡単よ。才能でもなんでもないのよ。
   要するにね、そこに蜜柑があると思いこむんじゃなくて、
   そこに蜜柑がないことを忘れればいいのよ。それだけ」
               (『納屋を焼く』村上春樹著)
なるほど。
ん?言いくるめられているな。


  「オレンジの皮が浮いているのが面白いんじゃない」と、テディは言った
  「オレンジの皮があそこにあるのをぼくが知ってるってことが面白いんだ。
   もしもぼくがあれを見なかったら、ぼくはあれがあそこにあることを
   知らないわけだ。そしてもしもあれがあそこにあることを知らなければ、
   そもそもオレンジの皮ってものが存在するということさえ言えなくなる
   はずだ。こいつは絶好の、完璧な例だな、ものの存在をー」
       (『ナインス・トーリーズ』より「テディ」 サリンジャー著)

そうか?
この世界にオレンジと「ぼく」しか存在しないのならともかく、
他人が「あそこにオレンジの皮があるよ」と言ったら、
自分で見ていなくても私はあると信じるけどな。
誰がそんなウソをつく?
自分(オレンジ)以外の誰かが認めれば、存在するわけで、
それは「ぼく」に限定されない。

自殺した田代君の動機についての会話から

  「動機なんて・・・・・・いずれ、ゆっくりお話することもあるでしょうけど・・・・・・
   けっきょく、道に迷ったんだな・・・・・・自分が、何処にいるのか・・・・・・自分が、
   本当に、自分で思っているような具合に、存在しているのかどうか・・・・・・
   それを証明してくれるのは、他人なんだが、その他人が、誰一人振り向いて
   くれないというので・・・・・・」
                    (『燃えつきた地図』安部公房著)