大阪水曜ほっと集談会一世です。
今月号の発見誌に掲載された訃報の名前に見覚えがあった。
殊更己の無知を恥じたい。
フリージャーナリスト岸見 勇美氏である。
残念ながら生前お会いしたことはない。
千葉集談会に熱心に参加されていたという記述がある。
ひとりの無名の読者として感謝を述べたい。
氏の書かれた「運命は切りひらくもの」をかつて読ませていただいた。
副題に森田療法の普及にかけた岡本 常男と支えた人びととあった。
発見会と強いつながりをいただいている公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の成り立ち秘話が網羅されている。
読み進めると、どんどん惹きつけられていく。
岸見氏の筆の力は圧巻である。
時は1980年代である。
当時リアルタイムで生活の発見会に参加していた私は、発見会が躍動していた時代の空気を感じながら懐かしく読ませていただいた。
特に私が10代~20代の頃にお世話になった、元発見会顧問河野 基樹医師の記述には感銘を受けた。
今回あらためて読み返してみた。
森田療法を媒介として繰り広げられる人間模様がリアリティを帯びまるで今起こっている出来事のように語りかけてくる。
タイトルになった「運命は切りひらくもの」について森田博士はこう述べられている。
運命は耐え忍ぶにおよばぬ。
たとえば偶然に、山から石が落ちてきたときに、死ぬときには死ぬ。
助かるときには助かる。
耐え忍んでも、忍ばなくとも、結局は同様である。
われわれはただ運命を切り開いていくべきである。
僭越ながら岸見氏もまた森田療法により運命をを切りひらいたおひとりかもしれない。
2022・4・4 一世