ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『怒り』

2016-01-21 20:02:40 | 
『怒り』吉田修一 中央公論新社
 千葉の漁村に住む洋平・愛子親子は素性の知れない田代哲也と出会う。会社員でゲイの藤田優馬は、発展場で大西直人と出会う。沖縄の離島の女子高生・小宮山泉は、バックパッカーの田中と出会う。いずれも、八王子の夫婦を殺した犯人・山神一也と顔や特徴が似ている。三人のうち、誰が本当の殺人犯なのか?それとも、三人は、山神の変装した同一人物なのか?
『最貧困女子』を思い浮かべる出だしで引き込まれて、一気に上下巻を読了。誰が犯人なのか?変装や整形している同一人物なのか?どうしても整形して逃亡をした例の殺人犯を思い浮かべてしまう。しかし、犯人の動機などが、さっぱりわからず、共感できなかった。同じ作者の『悪人』のほうが、私は主人公の閉塞感ややりきれなさが感じられてよかったかな。とはいえ、洋平と愛子、愛子と田代、優馬と直人、泉と知念辰哉のそれぞれの愛が胸を打つ。
「もし、お父ちゃんが私みたいな人間でも、好きになってくれる人はいるって!その人は優しくて立派な人だって!愛子は幸せになれるって!そう言ってくれたら」と慟哭する愛子。風俗に勤めていた愛子に「お前は幸せになれるって信じていたぞ」と言えない父。
泉に「泉さんには一切関係ない」「早く忘れてほしい」という知念辰哉。
など4組の関係は胸に迫るものがある。
コメント
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