☆第16話『運が良ければキャンピング』
(1979.9.23.OA/脚本=石川孝人/監督=土屋統吾郎)
相変わらずジリ貧で事務所の家賃も払えず、日々「アジサンド」ばかり食べてる麻生探偵事務所の面々は、ある日「偽装蒸発作戦」というのを思いつきます。
つまり、メンバーの誰かが計画的に行方をくらまし、その身内から捜索手数料を頂くという実にセコい作戦w
で、自動車整備工場に勤めるナビ(渡辺篤史)が蒸発し、海辺でキャンプ生活を送るのですが、そこでアタッシュケースを持った謎の美女(加山麗子)と出逢うことになります。
ユリコと名乗るその女性は何だかワケありで、泊まるアテも無いと言うのでナビはテントを貸し、自分は車で寝るのでした。
夜、二人で焚き火に当たりながらモンテカルロ・ラリー出場への夢を語るナビに「羨ましい」と言うユリコ。「夢見ることなんて、とっくの昔に忘れちゃった」と寂しそうな彼女に、ナビは「忘れたんなら思い出せばいいんだよ」と、彼らしい単純な発想で励まします。
で、ナビに気を許したユリコは、アタッシュケースの中身が五千万円の現金であることを打ち明けるのでした。
一方、ナビの勤める工場へ営業に出向いたジュン(神田正輝)は、社長(金井 大)に蒸発がヤラセであることを即座に見抜かれ、ナビの代わりに工場で働かされる羽目にw
作戦失敗につき、キャプテン(沖 雅也)はナビに帰還を命じるんだけど、五千万のキャッシュを持った家出娘と一緒にいると聞いて、今度は彼女の身内から捜索料を頂こうと画策しますw
で、調べてみるとユリコは大手銀行の貸付係であることが判明。銀行の支配人に当たってみると、彼女は銀行のカネ五千万円を持ち逃げして失踪中とのことで、キャプテンはその1割=五百万円の成功報酬でちゃっかり捜索依頼を引き受けるのでした。
でも、ユリコの横領を銀行が警察沙汰にしないことには理由がありました。あの五千万は不正融資のカネであり、裏では例によって暴力団が絡んでる。
となるとユリコが狙われ五千万円を奪還されてしまう恐れもあり、ダーツ(柴田恭兵)とジュンはナビのキャンプ先へ迎えに行くんだけど、そこには独り淋しくうなだれるナビの哀れな姿が。
ナビの純粋な夢に心を打たれたユリコは「モンテカルロへの切符をプレゼントします」と書いた手紙と現金入りアタッシュケースを残して、姿を消していたのでした。
ダーツとジュンは五千万の全額ネコババを提案しますがw、キャプテンは正当に成功報酬だけ受け取る道を選択。だけど相手は悪徳銀行マンと暴力団。例によって力ずくで五千万を奪いに来た暴力団と闘う羽目になり、結局カネは銀行の不正融資を捜査してた新妻署の刑事たちに没収されるという、いつものパターン。
ところがそれで終わりかと思いきや、今度はナビが本当に蒸発しちゃいます。ナビは他の探偵社にある人物の捜索を依頼するため、アタッシュケースの金を20万円だけ使ってしまったのでした。
電話で謝罪してきたナビに、キャプテンは尋ねます。
「一体、誰を探してるんだ?」
「笑ってくれよ、消えちまったユリコさんだよ。どうしてもさ、あの人ほっとけなくってよ」
「分かった。いいから戻って来い」
「優しいこと言ってくれるけどな、みんなに会わせる顔がないよ」
泣きながら電話を切ったナビは、再びあの海辺でキャンプを張ります。で、彼はそこでまた、行く先を失ったユリコと再会するのでした。
「私、バカだった。お金があれば幸せになれるって、どうせ不正なお金だと思って盗って来たの……今から、警察へ自首するわ」
「…………」
切ない顔で頷くナビを、麻生探偵事務所の面々が全員で迎えに来ます。ナビの工場の社長が「いないと寂しいから」という理由で、ちょうど20万円の料金で捜索を依頼したのでした。
「ユキちゃん、仲間だ」
涙目のナビに紹介され、ユキは笑顔で言います。
「私、生まれ変わった気持ちでやり直します」
彼女に別れを告げ、小さな漁船でクルージングに出掛けた探偵たちは、海の上で叫びます。
「俺たちは天使だ!」
『俺天』メンバーは全員好きだけど、1人だけイケメンじゃないナビさんには特に感情移入しやすく、唯一主役を張った本エピソードも深く印象に残ってます。
純情かつ単純なナビさんが主役ってことで、これは特に青春ドラマの色合いが濃いですよね。最後に仲間が迎えに来る展開とか、犯罪を犯したヒロインがナビの純粋さにほだされ改心するとか、まさにチョー生真面目プロデューサーの岡田晋吉イズムが炸裂してます。
そこが『太陽にほえろ!』や日テレ青春シリーズを観て育った私の琴線に触れまくるんですよね。綺麗事ともお涙頂戴とも違う、人間こうあって欲しいっていう切実な願い、若い世代へのメッセージ。それが岡田晋吉イズムなんだと私は思ってます。
だから安易にセックスは扱わないし、陰惨な犯罪も描かない。私が人一倍ヌードや濡れ場を見たがるのは、そんな岡田イズムに染められたがゆえの反動ですw
いや、冗談抜きで当時のテレビ番組にはそれだけの影響力があったし、創り手たちもその責任を背負って仕事されてました。だからこうして40年近く経っても心に残ってる。
ヌード画像はゲストの加山麗子さん、当時23歳。プロフィールは『大都会PART II』#13の記事に書きましたので、今回は割愛します。