ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』とブローバック・オート

2018-11-20 11:20:04 | 刑事ドラマ HISTORY










 
『太陽にほえろ!』にとってドック(神田正輝)の登場が革命的だったのは、その型破りなキャラクターだけじゃなくて、使用拳銃「S&W・M59」に因るところも大きかったと思います。

刑事ドラマのレギュラー刑事がオートマチック拳銃を使うのは、珍しくはあるけど初めての事ではありません。神田さんご自身、直前まで出演されてた杉サマの『大捜査線』ではコルト・ガバメントを使われてました。

『太陽』出演が発表された時の番宣写真でも、神田さんが構えてたのはガバメントのように見えました。(M59のオールブラック・モデルだったかも知れません)

ところが第415話『ドクター刑事登場!』でドックと一緒に初登場したのは、S&W・M59のハーフシルバー・モデルだったんです。上半分(スライド)は普通の黒(ガンブルー)なんだけど、下半分(フレーム)だけステンレス・シルバーという、要するにツートンカラーの拳銃。このチョイスは本当に素晴らしい!

同じ拳銃でも、黒(ガンブルー)一色だと地味な感じに見えるし、逆にシルバー一色だと派手って言うか、刑事が持つには軽薄に見える。その中間を行くツートンカラーっていうのは、今やそれ以外に考えられないほどドック刑事のキャラにマッチしてるんですよね。

装弾数15発(ガバメントの2倍!)というM59のポテンシャルがまた、「誠実」「努力」「熱血」といった『太陽にほえろ!』のイメージを覆し、ライトな感覚で合理的な捜査をして見せるドックにピッタリでした。

さらに、銃を逆さまにして背中に忍ばせる、特注品のコンパクトなヒップ・ホルスター(モノクロ写真参照)も印象深くて、後に「ドック・ホルスター」みたいな名称で模造品が出回る事になります。

このM59もハイパトやローマンと同様MGC社から発売されたモデルガンだけど、その組み立てキットのパッケージには「太陽にほえろのドック刑事が使っている」って書かれたシールが貼られてて、それに釣られて私も買いましたよw

それくらい、ドック刑事と言えばM59、M59と言えばドック刑事って、キャラクターとプロップ(劇用銃)が完全に一体化してました。ダーティハリーと44マグナム、大門団長とレミントンのショットガン、みたいなもんです。

だから、日本の刑事ドラマでは他に(私の知る限り)M59を使う刑事さんは1人も現れなかったですね。ハーフシルバーのオートマチックを使ったのも、ドックが唯一無二の存在でした。あまりにドック専用のイメージが強かったからだろうと思います。

『ドクター刑事登場!』では早速、このM59が大活躍しました。追い詰められた犯人が人質を取って、銃を捨てるよう刑事達に命令するんですね。仕方なく他の刑事達は銃を放り投げ、ドックも「分かった、俺の負けだ」とか言いながら、マガジン(弾倉)を抜いて投げ捨てる。

それで犯人が油断した一瞬のスキを突いて、ドックは腰の位置から1発で犯人の右腕を撃ち抜くワケです。そのクールさがまた、軽妙なキャラクターとのギャップで超カッコイイ! 初登場ドック&M59の、本当に見事な「つかみ」でした。

その次のシーンでドック自ら解説してくれますが、オートマチック拳銃は最初にスライドを引くと、1発目の弾丸が薬室に送り込まれます。マガジンを抜いても、その1発だけはいつでも発射可能なワケなんです。

ただし犯人が持ってる銃もオートマチックでしたから、まんまとその手に引っかかるのは不自然なんだけど、まぁ興奮状態だったしマヌケな奴なんだって事にしておきましょうw

ドックは医者の息子でボンボン育ち。中退した医大の在学中に海外旅行を繰り返し、現地の射撃場で遊びながら射撃の腕を磨いたという、けっこう危険な男である事もw、この回で明かされました。

ドックが銃を構える時の、大きく首を傾げた独特な姿勢は、アメリカ仕込みの正式な射撃スタイルなんだそうです。そういうのって日本人には似合わないんだけど、ドックにはちゃんと設定の裏付けがあったんで、違和感は無かったように思います。


第442話『引金に指はかけない』はスニーカー(山下真司)が主役の回ですが、クライマックスの銃撃戦でM59の連射と、そのスライドが後退して空薬莢が排除される「ブローバック」をハッキリ捉えたショットが非常に印象的でした。

それまで日本のTVドラマで使われて来たオートマチック拳銃は、ほとんどが電気発火式で撃ってもスライドは固定されたままでした。銃に興味が無ければ本当にどーでもいい事なんだけどw、ガンマニアにとってはブローバックが見られるだけで画期的だったんです。

話の内容も実にハードで、非番のスニーカーが立ち寄った銀行に、銃で武装した3人組が強盗に押し入ります。スニーカーは、その内の2人は拳銃の引金に指をかけない、つまり暴発を防ぐ構え方をしてるのに対して、ライフルを持った男(片桐竜次)だけが撃つ気満々である事に気づきます。

案の定、現金の強奪に成功したというのに、ライフル男は無抵抗の行員をわざわざ射殺して逃走。さらに後日、金を独り占めする為に仲間を車ではね、さらに車をバックさせて二度牽きで殺すという冷血ぶり。

もう1人の仲間もナイフでメッタ刺しにして殺した上、奪った拳銃で通りがかりの犬まで射殺してしまう異常さに、刑事達は戦慄を覚えます。

ライフル男は、なぜ犬まで殺したのか? 相手が子犬でも吠えられると異様な怖がり方をしていたという目撃情報もあり、やがてその理由がRHマイナスAB型という、非常に特殊な血液型にある事が判明します。

つまり、輸血が必要になるような怪我を負った時に、彼の場合は血液がすぐに調達されない可能性が高い。だから犬に噛まれただけでも生命を落とす危険性があり、異様な怖がり方をするワケです。

そんなハンデを背負わされた運命を呪う彼は、自分の身を守る為なら人も犬も殺す権利が、自分にはあるんだっていう被害妄想を抱くようになった。要するにガイキチで、もはや情やモラルが通用する相手じゃない。

検問の警官を射殺したライフル男は、逃走しながら通りがかりの老人を狙い撃ちします。追っ手の注意を逸らさせ、そのスキに自分が逃げ延びる。その為なら何の恨みもない老人を平気で撃てる、まさにマッドな悪魔野郎、その名は片桐竜次!

そんな狂犬がライフルを抱えて、昼下がりの新興住宅街を駆け回るという悪夢のような光景。刑事達はただ犯人を追うだけじゃなくて、通りがかった市民全員をガイキチの凶弾から守らなきゃいけないから、そりゃもう大変です。

スニーカーとドック、さらにゴリさん(竜 雷太)とロッキー(木之元 亮)も加わっての、実にスリリングな大追跡、そして超ハードな銃撃戦が展開されます。

公園に追い詰められたライフル男の視線の先には、無邪気に遊ぶ子供達の姿が! もはやガードする余裕も無く、スニーカーは捨て身でライフル男に突進して行きます。

この時、カメラは援護射撃するドックの姿を右側から捉えるんですよね。ブローバックして排除された空薬莢が、画面に向かって飛んで来るナイスなアングルです。

しかも、撃ってるドック越しにスニーカー、ロッキー、ゴリさんが駆け抜ける姿まで捉えた素晴らしいショットで、私は何回観ても鳥肌が立っちゃいます。

ドックらの援護により、ライフル男の間近まで辿り着いたスニーカーは、お互いの銃口がぶつかり合うほどの至近距離で、銃を向け合います。

「撃つなら撃て。お前が撃てば俺も撃つ! 俺は死なんかも知れん。すぐに輸血が出来るからな。しかしお前は確実に死ぬぞ!」

過剰な自己防衛本能こそが、冷血なライフル男の唯一の弱点。スニーカーはそこを突いたワケです。その気迫に圧されて、ついに男は観念するのでした。

さすがにスニーカーも怖かったのか、銃を構えたまま固まってるんだけど、その指が引金にかかってない事にゴリさんが気づきます。

「殺したくなかったんです」

スニーカーのそんな姿を見て、ゴリさんがすごい嬉しそうな顔をするんですよね。銃を構えても、引金に指はかけない。その精神は、拳銃を持ってるのに弾丸はこめないゴリさんと、全く同じだからだろうと思います。

この時にスニーカーが使ってたのは、コルト・パイソン357マグナムの4インチ。ロッキーはかつてジーパン(松田優作)が愛用したS&Wミリタリーポリスらしき6インチのリボルバーを使ってました。

長らくコルトMkーIIIシリーズ(ローマンorトルーパー)で統一されてた七曲署の拳銃も、ドック&M59の登場を契機にバラエティー豊かな機種が使われるようになりました。

このエピソードで不思議だったのは、あんなに激しい銃撃戦の中で、なぜかゴリさん1人だけ、ずっと拳銃を抜かなかった事です。いくら銃は使いたくないキャラとは言え、あの状況で丸腰なのは不自然です。

たぶん小道具さんがゴリさんのトルーパーだけ忘れちゃったのか(もし故障だとしても持たせる位は出来た筈だし)、あるいはこのシーン、実は別の刑事が出る予定がキャンセルになった場合も考えられます。

沖雅也さんが体調を崩されるちょっと前のエピソードなんで、もしかするとシナリオではスコッチが参加する予定だったのかも?


第531話『マグナム・44』は、ゴリさんが殉職してしばらく経った頃に製作されたエピソードです。ドックが若手リーダーのポジションのみならず、GUNマスターとしての役目もゴリさんから受け継いだ事を示す、ハードアクション編の第1弾。

44マグナムことM29を使った殺人事件が発生、犯人はなんと、壁の向こうにいる相手を狙って射殺した事が判明します。つまり、相手が見えなくても足音だけで狙撃出来るスキルを持った、プロの殺し屋。

しかしドックは敵を甘く見てました。M29は6連発のリボルバー拳銃で、弾込めに時間がかかる。こっちは15連発のオートマチックで、マガジンを入れ替えれば一瞬で弾込め完了だから有利な筈なんです。

ところが最初の対決で、敵がほとんど時間をかけずに7発目を撃ち込んで来たもんだから、意表を突かれたドックは44マグナムの威力に圧倒され、身体が震えて撃ち返せなくなっちゃう。

敵はどうやら、リボルバーの弾込めをワンタッチ操作で済ませる「スピードローダー」を使ったらしく、ドックはそんな事も予測出来なかった自分自身に失望し、かつてない敗北感を味わいます。

敵に匹敵するパワーとスキルを身につけないと、到底勝ち目はない。それを悟ったドックは、スペシャル仕様のコルト45オートマチックを調達します。

それがコルト・ナショナルマッチで、言わばガバメントのロングバージョン。45口径で確かにハイパワーな拳銃だけど、44マグナムに匹敵するだけの威力があるのかどうか、私には判りません。

その辺のリアリティは置いといて、強い反動でコントロールが容易じゃないナショナルマッチを使いこなすべく、ドックは秘密特訓を重ねます。

今回は後輩ボギー(世良公則)が相棒になって、ドックの特訓に協力します。壁の向こうでボギーがバケツを放り投げ、その音だけを頼りにドックが撃つ。何度も、何度も、徐々に標的を小さくして行きながら。

このナショナルマッチの発砲シーンが、実に迫力あるブローバックを見せてくれるんですよね。何しろ大口径ですから、スライドの後退や排莢がM59よりも鮮明に目視出来るワケです。

あの当時で、これだけのブローバックを映像に収めたTVドラマは無かったのでしょう、このエピソードは「月刊GUN」で特集記事が組まれるほど、ガンマニアの間で話題になってました。

神田さんもノリノリで演じておられるのが画面から伝わって来るし、一緒にいた世良さんが後に『ベイシティ刑事』でナショナルマッチ(同じくシルバーモデル)を愛用される事になるのも、多分この時の撮影が原点なんじゃないでしょうか?

それはともかく、ナショナルマッチを使いこなすようになったドックは、殺し屋の正体を見破ります。当初は、妹をハンターの誤射で殺された金髪美女=ナンシーが、復讐の為に殺し屋を雇ったと推理されてたのですが……

コツさえつかめば、腕力がそんなに無くてもハイパワー拳銃は扱える。身を持ってそれを知ったドックは、ナンシー自身が犯人である事を確信し、最後の対決に臨むのでした。

ブローバック云々は抜きにしても、シンプルな対決ドラマとして実に見応えある1編でした。ドックはこれ以降、M59とナショナルマッチの2丁拳銃でやって行くのかと思いきや、結局1回限りの出番だったのは残念でした。

だけどドックのハードアクション編はシリーズ化され、異常なガンマニアの挑戦を受ける第624話『決闘』(敵はワイルド7の小野進也さん)や、渡哲也さんが代理ボスを務める時期に製作された第709話『タイムリミット・午前6時』でも、M59が大活躍するガンアクションが見られます。

後者では「オートマグ」まで登場してました。44マグナム弾が撃てるオートマチック拳銃だけど、その時代にはブルース刑事(又野誠治)も普通に44マグナムを使ってましたからw、特にクローズアップされる事なく終わりましたね。

……まぁしかし、なんてマニアックな記事なんでしょうw ドン引きされてるかも知れないけど、これっぽっちも気にせずにw、まだまだ続けて行きます。
 

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『太陽にほえろ!』1980~1981

2018-11-20 00:00:22 | 刑事ドラマ HISTORY









 
#415 ドクター刑事登場!

「えーっ? 神田正輝が救世主ぅ?」って、皆さん訝しく思われるかも知れません。私も当時、殿下(小野寺 昭)の後釜に神田さんが決まったと聞いて、正直ビミョーやなぁって思いました。

『ゆうひが丘の総理大臣』や『俺たちは天使だ!』で既に馴染みのある俳優さんでしたが、その時点では「ルックスだけが取り柄で面白味がない」ってなイメージしか私は抱いてなかったんです。

ところが、そんな神田さんが不思議な事に『太陽にほえろ!』の中では、ひときわ輝いたんですよね! ちょうど役者として一皮剥ける時期だったのかも知れないけど、それだけじゃ説明がつかない、奇跡的な化学反応が起こったんです。

バラエティー番組でお見かけする神田さんはあまりにマイペースで、空気も読まずにダジャレを連発したりして、ちょっと迷惑な存在だったりしますよね?

でも、そんな神田さんの自由さこそが、当時の七曲署=堅苦しくて重苦しいクソマジメ集団には、最も必要なものだったんだと私は思います。調和を乱し、従来とは違った価値観を持ち込む「迷惑な人」こそが必要だった。

神田さんは、所属事務所の社長(つまり石原裕次郎さん)から「おまえ『太陽』に行くんだったら、メチャクチャにしてやめさせちゃえ」ってそそのかされたんだそうですw

それは無論ジョークでありつつも、ある意味ぶっ壊さないと『太陽』はダメになるって、裕次郎さんも分かっておられたんじゃないでしょうか。

ちなみに神田さん、杉良太郎さんからは「お前、俺を見捨てるんだな」と言われたんだそうですw 大御所2人に挟まれて、若手はツラいっすねぇ~(『大捜査線』の記事参照)

で、『太陽』で神田さんが演じるのは医大中退の遊び人で、たまたま警察官募集のポスターを見て刑事を志し、射撃の趣味を活かせると思い、拳銃使用率が最も高い七曲署入りを希望したというテキトーさ。

当時は6連発のリボルバー拳銃を使うのが常識だった中で、自分だけは15連発のオートマチック拳銃を使用。『太陽』の刑事はよく走るのが特徴だから、自分は走らずに要領よく車を使う。服装も前任者の殿下とは対照的にラフな感じで。

そうして『太陽』的なアプローチをことごとくひっくり返す手法は後の『踊る大捜査線』を彷彿させるし、根本には熱い刑事魂を秘めながら、表面的には遊びで捜査してるように見える軽いノリは『あぶない刑事』をも先取りしてました。

そもそも『太陽』って、反体制的な長髪刑事=マカロニ(萩原健一)っていう、極めて常識外れなキャラクターから始まったワケですから、その原点に立ち戻ったとも言えます。枠からはみ出してこその『太陽にほえろ!』なんですからホントに。

それは神田さん1人の功績では勿論なくて、番組自体もその方向にシフトチェンジすべく動いてたのでしょう。この時期の主なサブタイトルを列挙すれば一目瞭然です。

『ゴリさんが殺人犯?』『ボスの誕生日』『ドックとスニーカー』『令子、俺を思い出せ!』『拳銃を追え!』『ドック対ドッグ』『スリ学入門』etc…

『命』とか『死』とか言ってた時期とは、えらい違いでしょう? まぁ人によって好みは違うでしょうけど、私なら断然、こういうサブタイトルの方が興味をそそられます。

そんなワケで、スコッチ(沖 雅也)の復帰だけではまだ重苦しさを拭い切れなかった『太陽』も、ドック加入のお陰で空気が一変、本来のアクティブな番組にようやく戻ってくれたのでした。と同時に視聴率も回復。だから神田さんは救世主なんです。

ちなみに神田さん扮する西條 昭 刑事のニックネームは、ドクターを略した「ドック」であり「ドッグ」ではありません。雑誌記事等でもよく誤記されてますが、犬と違いますから! そして『太陽』は石原プロの作品ではありませんw


#417 ボスの誕生日

一係のマスコットガール・ナーコ(友 直子)が、ボス(石原裕次郎)の誕生日プレゼントを買いに出かけた先で、何者かに拉致されちゃいます。

スニーカー(山下真司)への逆恨みで藤堂チーム皆殺しを画策する犯人を演じたのは、かつて殿下の妹も拉致した事がある堀内正美さんw

こういうストーリーを、私はずっと待ち望んでました。人間の深い心理や社会問題を描くのも結構だけど、そんなのはNHKさんに任せておけば良いのです。

ちょっとぐらい荒唐無稽でもいい。刑事物は……特に『太陽にほえろ!』は、走って跳んで殴って撃ってナンボなんです。その基本中の基本を忘れないで頂きたいですホントに。


#420 あなたは早瀬婦警を妻としますか

ロッキー(木之元 亮)が交通課婦警の令子(長谷直美)とゴールインします。男勝りで、他の刑事達とはぶつかってばかりの令子ですから、純朴で天然キャラのロッキーとうまく収まったのは理に適ってると言えましょう。

式は挙げずに電撃結婚。以来、2人の新婚生活→妊娠→出産→双子誕生と、長さん(下川辰平)の家庭とはまた違ったタイプの、初々しいホームドラマが描かれて行く事になります。


#421 ドックとスニーカー

ホンモノの医者と間違えられたドックが、スニーカーと一緒に強盗一味の人質にされちゃいます。犯人の1人が撃たれて重傷ゆえ、治療を命じられるのでした。

先輩刑事達からは「ヤブ」と呼ばれてるC調なドックが、一応ちゃんとした医療スキルを備えてる事や、負傷者の安全を確保するまで平静を装って好機を待つ、クールな一面も披露します。

それが逮捕を焦ってカッカするスニーカーと対比して描かれる事で、ドックというキャラクターがより魅力的に見える効果を生んだ好編です。


#424 拳銃を追え!

スコッチが拳銃密売ルートの摘発に奮闘するアクション編。

拳銃ってヤツは、持つと必ず使いたくなるし、人を殺したくなる。「難しいのは撃つ事じゃなくて、使いたい気持ちを如何に抑えるかだ」という、スコッチならではの拳銃哲学が披露されます。

このエピソードでは、非番のドックがスコッチにうまく乗せられて捜査に協力するという、1年前の探偵ドラマ『俺たちは天使だ!』における沖雅也&神田正輝そのまんまな描写もあって楽しめました。

以降、ロッキーとスニーカーも加えた若手刑事4人による『俺天』的なチームプレーが随所で見られるようになり、かつては孤高の人だったスコッチがキャプテン化して行きます。

このスコッチ・ドック・ロッキー・スニーカーの若手チームは非常に華やかでバランスも良く、後期『太陽にほえろ!』ベストメンバーとの呼び声も高く、出来るだけ長く続いて欲しい布陣だったのですが……


#427 小さな目撃者

目の前で母親を殺されたショックで失語症になった4歳の少女を、独身貴族のボスが自宅に引き取って面倒を見ます。ただ1人の目撃者である彼女は、犯人に生命を狙われる恐れがあるのです。

似たようなストーリーは他の番組でも描かれてますが、裕次郎さんの自然体な演技と幼い少女の無垢さが絶妙にマッチして、何とも心癒されるハートフル編に仕上がってます。

犯人が捕まってもなかなか言葉を取り戻せない少女が、最後の最後に声を振り絞って発した言葉が「……ボ……ス……」なんですよね。私は号泣しましたw

子供の扱いに不慣れなボスを心配した一係の部下たち(特に家庭持ちの長さんや山さん、ロッキーら)が、少女の前でやたら「ボス、ボス」って世話を焼いてたコミカルな描写が、このラストシーンで効いて来るんですよね。

体育会系でありながらも家族的な雰囲気にも包まれた『太陽にほえろ!』ならではの感動が、そこにありました。


#430 東京大追跡

脱走犯を追って東京の街を激走する、スニーカー屈指のアクション編。

冷たいコンクリートジャングルの中で挫折を味わって来た孤独な犯人が、自分と同じ地方出身者である事を知って、スニーカーはかつての自分自身を思い出します。

そんな一番殺したくない相手をやむなく射殺するという、新人刑事最大の試練も描かれて、後期の『太陽』では珍しく屋外でラストシーンを迎えた渋いエピソードでもあります。

ボスの屋外ロケが少なくなって、ラストシーンは刑事部屋におけるボス、あるいはその回の主役刑事とボスとのツーショットでストップモーション、ってのがお約束になってました。

そういうワンパターンな作劇もコアなファンにとっては楽しいものなんだけど、こうしてたまに違ったラストシーンが観られると又、格別に嬉しかったりします。


#432 スリ学入門

巧妙な手口で警察に尻尾を掴ませない、プロフェッショナルなスリ常習犯を捕まえる為にドックが考え出したのは、かつての大物常習犯(浜村 純)に弟子入りして、スリの手口を自らマスターするという作戦。

型にハマらない遊び人の刑事という、ドックのキャラクターあればこそのアイデアが好評を集め、以降もドックは金庫破りや空き巣のプロに入門して、立派な泥棒に成長して行きますw


☆1981年

#439 ボスの告発

めっきり主役の回が減って来たボスの主演、しかもタブーだった筈の性犯罪ネタにも触れた、お正月の特別編。

と言っても女子大生(白石まるみ)に過去のレイブ被害を告発させるストーリーで、性行為はおろか裸の1つも出て来ない健全さなんだけど、新聞のテレビ欄では「あの『太陽にほえろ!』がセックス問題を扱った!」って事で話題になりましたw


#442 引金に指はかけない

自分が逃走する為に、通りすがりの子供を撃って刑事の注意を逸らすという、極悪非道にも程がある連続殺人犯(片桐竜次)とスニーカーが対決します。

誰彼かまわず平気で殺しちゃう狂犬が、白昼の住宅街をライフル片手に走り回るという悪夢のようなシチュエーションといい、ドックが連射するオートマチック拳銃の排莢をしっかり捉えたカメラワークといい、ガンマニアをも納得させる屈指のハードアクション編。


#447 侵入者

出所したものの行くアテがない元受刑者(志賀 勝)が、かつて彼を逮捕したロッキーを頼って来ます。

人の好いロッキーは彼を自分のアパートに招き入れるのですが、何しろ相手は志賀勝ですw パンチパーマに物凄いパチキ(剃り込み)が入ってますw 新婚で、しかも妊娠中の妻・令子はたまったもんじゃありませんw

ロッキーに仕事を世話してもらっても、すぐクビになって帰って来る志賀さんは、本当に更正する気があるのか? 実はロッキーへの復讐を企んではいないのか? そして忙しい夫の留守中、パチキ入りパンチパーマの志賀勝と狭い部屋で2人きりになっちゃう、新妻・令子の運命やいかに!?

新婚早々、令子が記憶喪失になっちゃうエピソード等もありましたが、こっちの方がよっぽどトラウマ級の受難じゃないかと私は思いますw


#448 風船爆弾

プラスチック爆弾を結び付けた風船が、東京上空を浮遊します。『太陽』には珍しい特撮ショットが多様されたパニック・サスペンス編。意外な犯人像も強く印象に残る作品でした。


#449 ドック刑事雪山に舞う
#450 ドック刑事雪山に斗う

神田さんはスキー指導で飯を食って行けるほどの腕前を持つ上級スキーヤーで、それを活かすべくスキー場を舞台にした話が創られました。

他にも水上スキーやテニス等、スポーツ万能ぶりを『太陽』で見せつけてくれた嫌味な……いやいや、素敵なオッサンですw


#452 山さんがボスを撃つ!?
#453 俺を撃て!山さん

思いつきそうで、なかなか思いつかないアイデア。殿下がシャブ中にされた話と同じパターンで、一般女性から送られたプロットが採用された作品です。

完全無欠な刑事に見える山さん(露口 茂)にも弱点がある。それは、亡くなった奥さんの忘れ形見とも言える、養子の隆。ボスに恨みを持つ犯人(河原崎健三)がその隆を誘拐し、山さんにボスの射殺を命じるというストーリー。

これは評判になったらしく、後に他の刑事ドラマでも似たような話が創られる事になります。けれども、これはボスと山さんという、長年に渡って熱い信頼関係が描かれて来た2人だからこそ面白いし、見応えがあるんですよね。1クールぽっちの番組でやってもドラマチックにはなりません。

ボスは死を覚悟して、山さんに「さぁ、撃ってくれ」って言う。山さんは涙目になりながら撃つんだけど、急所を外しちゃう。ボスは血を流しながら「山さん、時間が無いんだ。今度は外さんでくれ」って……

「殺されるよりも殺す方がツラい。山さん、ツラい思いをさせて悪かったな」

で、やはり10年選手である長さんによる必死の説得で、すんでのところで犯人が「もういい!」と言って諦める。するとボスったら、何事も無かったかのように、地面に落とした上着をサッと拾って歩き去るんですよね。カッコ良すぎる!w

さらに駐車場で車に乗る時、ボスが「山さん、進退伺いなんて妙な事は言わんでくれよ」って声を掛けたら、終始ずっと無言だった山さんが一言「ボス」とだけ言ってニヤッと笑う。

で、同じ車じゃなくて、それぞれ別の車に乗って去って行くのがまたカッコイイ! お互い、何も言わずとも解り合える、この信頼感。『太陽』が長寿番組であればこそ、何の説明もなく表現出来るんですよね。


#456 ボス、俺が行きます!

権力者である父親の七光りを利用し、やりたい放題のどら息子が、権力など気にしないゴリさん(竜 雷太)に交通違反でこってり油を絞られ、逆恨みします。

街に複数の爆弾を仕掛け、その在処を教える条件としてゴリさんを呼びつけ、屈強な子分たちにリンチさせるどら息子。もちろん、最終的には逆襲のゴリパンチを百万発ほど浴び、廃人と化す末路を辿るのでした。

市民を守る為ならいくらでも身体を張る、ゴリさんサバイバル・アクション編の決定版。今回は元レスラー&ボクサーの巨漢=スーパー・リキ氏を相手に凄まじい死闘を見せてくれます。格闘演技の迫力においては、七曲署歴代猛者たちの中でもゴリさんの右に出る者はいません。

さて……こうしてハードアクションも復活し、ベストメンバーが揃って活気と視聴率を取り戻した『太陽にほえろ!』は、すっかり存続の危機から脱したものと思われたのですが、ここでにわかに暗雲が立ちこめます。

ちょっと前から覇気が感じられなかったスコッチ=沖雅也さんが、体調不良を理由に次回#457からしばらく欠場するんですよね。そして、更に……!


#459 サギ師入門

好評を集めた『スリ学入門』に続く、ドックの犯罪テクニック入門編・待望の第2弾なのですが……

この回から約半年間、番組の大黒柱であるボスが欠場となってしまいます。裕次郎さんが大動脈瘤破裂で倒れ、生還の確率がかなり低いというニュースが全国に駆け巡った時、私は不謹慎ながら裕次郎さんの生命よりも「『太陽』はどうなっちゃうの!?」っていう不安で頭が一杯になりました。

そしたら、裕次郎さんの復帰を信じてボス不在のまま、番組は続行される事になりました。『西部警察』も同じ形で継続されましたが、あっちは渡哲也さんの番組ですからね。裕次郎さん抜きの『太陽』なんてあり得るの?って、私は驚きました。

その間、山さんがチームの指揮を執る事になりますが、必ずボスのストップモーションで締めくくるラストシーンが無いのは寂しかったです。ちょっと新鮮でもありましたがw


#460 スニーカーよ、どこへゆく

反抗的な若者(中西良太)を証拠も無いまま逮捕したスニーカー。だけど冤罪の可能性が出てきた事で、いつの間にか権力を振りかざす傲慢な人間になってる自分に気づいたスニーカーは、刑事を辞める覚悟で若者を勝手に釈放します。

で、ホントにいったん刑事を辞めちゃうんだけど、スニーカーが辞めるのは今回で3度目w 彼ほど自分が刑事である事に疑問を抱くキャラクターも、刑事ドラマ多しと言えどもなかなかいないと思います。


#462 あなたにその声が聞こえるか

聴覚が不自由な方にも楽しんでもらえるようにと、画面の隅に手話通訳の小画面が入るという、当時としては画期的な試みが実行されました。

そして、水沢アキさん扮する聴覚障害者の女性=麻生晴子が、ゴリさんと恋に落ちます。とてもめでたい事だけど、とても嫌な予感がしますねぇw


#464 我がいとしき子よ

ロッキーとの間に赤ちゃんが誕生し、令子がいよいよ「マミー」になります。男女の双子で、裕次郎→「裕太」、太陽→「陽子」と名付けられました。

私はこの時点で、ロッキーは殉職せずにベテラン化していくものとばかり思ってました。いくら『太陽』でも、幼い子供が2人いる父親を死なせちゃうような、そこまで残酷な事はしないだろうって。いやぁ、甘かったですねぇw


#469 東京・鹿児島・大捜査線
#470 鹿児島・東京・大捜査線

かつて『太陽』と人気を二分した刑事ドラマ『Gメン’75』のレギュラーだった、和製ブルース・リーこと倉田保昭さんをゲストに迎えた鹿児島ロケ編。

現代劇への出演は『Gメン』以来2年振りという倉田さんは、七曲署の刑事達と対立する現地の堅物刑事を演じておられました。


#471 山さんに任せろ!

重大事件の捜査難航により、ボス不在中の一係を指揮する山さんの責任が問われます。大ピンチの一係を突っつきに来る本庁のお偉いさんに扮するのは、当時そのテの憎まれ役ならこの人!だった神山繁さん。


#475 さらば!スニーカー

スニーカーの妹・早苗(山下幹子)が乱射事件に巻き込まれて死亡、その犯人を逮捕したスニーカーは、彼女の夢だった海の牧場設立を実現させるべく、今度こそ本当に刑事を辞めて、故郷の沖縄へと帰って行きます。

ちょうど番組がマンネリに陥ってた時期に登場し、ボス不在の時期に降板する事になったスニーカーは、殉職という花道も与えてもらえず、『太陽』史上で最も不遇な新人刑事だったかも知れません。

でも私は、ボン(宮内 淳)の遺志を継いだ刑事であるスニーカーを、ずっと応援してました。1年目こそ辛気くさいエピソードばっかりで魅力を発揮出来なかったけど、2年目はアクティブな活躍やコミカルな一面も見られて、その使命はしっかり果たしてくれたと思います。

山下真司さんは『太陽』卒業後、『おしん』や『男女7人秋物語』等への出演を経て、大映ドラマ『スクール☆ウォーズ』主演で本格的にブレイクされます。近年は『ケータイ刑事』シリーズで『太陽』と同じ「五代潤」を演じられて、私は何だかホッとしました。

……1980年から81年、スコッチの復帰に加えてドックという新鮮な戦力を得た9年目の『太陽にほえろ!』は、充実したエピソードも多くて順風満帆かと思われたのですが……

ボスの長期に渡る戦線離脱という、突然にして最大の危機に瀕したまま、いよいよ激動の10周年イヤーへと突入して行く事になります。
 
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