第30話『濡れた舗道に咲いたバラ』
(1986.5.4.OA/脚本=永原秀一&平野美枝/監督=西村 潔)
とある深夜、古美術店に忍び込んだ男二人組が、鉢合わせした店主を殺害し、鎌倉時代の貴重な純金の仏像を盗んで逃走。その日から行方をくらませた警備員2人が犯人と睨んだ田沼課長(柳生 博)は、芹沢(中村雅俊)&萩原(根津甚八)に捜索を命じます。
そんな折り、芹沢は所轄時代に同僚だった元婦警・祥子(中村明美)と偶然(?)再会します。
今は探偵事務所を経営してる祥子は、警察を辞めた理由は芹沢が本庁に栄転し、いなくなったのがショックだったからと言って、彼への好意を露わにします。
また、盗まれた仏像には多額の保険金がかけられており、その保険会社を得意先とする祥子としても仏像の行方が気になるとの事で、彼女は芹沢の捜査に同行します。
「私ね、セーターを編んだ事あるの。あなたに」
「え? いや、だって……」
「そう、渡さなかった。だって渡せなかったわ。あなたに嫌われるのが怖かったから」
「嫌うなんて……あの頃の俺、余裕が無かったんだよね。早く一人前の刑事にならなくちゃと、そればっかり考えてさ」
ただでさえ惚れっぽい芹沢ですから、美女にこれほど率直にアプローチされたらもう、イチコロです。毎晩のようにデートを重ね、指輪もプレゼントし、すっかりその気になっちゃいます。
そんな中、偽名を使っていた警備員の身元が割れます。その男=小沢は共犯者を自殺に見せかけて殺害し、独り占めした仏像を金に換えようと躍起になります。
この根っから腐った強盗殺人犯を演じてるのが、若き日の内藤剛志さん。現在はすっかり更正し『警視庁捜査一課長』となって毎週「必ず、ホシを挙げる!」なんて言ってる内藤さんも、昔はこうして凶悪犯ばっか演じてたワケです。
さて、その小沢を陰で支える女がいるらしい事が分かって来て、不穏な空気が漂い始めます。もう、察しがつきますよね。
芹沢は祥子との結婚を真剣に考え始めるんだけど、妹の歩(沢口靖子)は反対します。女の直感ってヤツです。そして芹沢自身も、祥子の左手首に残った傷痕を見て、疑念を抱き始めます。小沢の女にも手首に傷痕があるらしい……
調べたら、祥子は芹沢が本庁に栄転した直後に他の同僚にフラれ、自殺未遂騒ぎを起こして警察を辞めたことが判明。俺に惚れてた筈なのに話が違う! 芹沢は困惑します。
調べれば調べるほど矛盾が生じ、探偵業でも浮気調査を立証させる為に自らハニートラップを仕掛けたなど黒い噂が飛び出し、疑念は膨らむ一方。おまけに祥子が海外への片道切符を手配してる事実まで判明し、芹沢はようやく甘い夢から醒めるのでした。
そうとも知らず、祥子は独自の調べで小沢の居所を突き止めたと言い、芹沢はあえて黙って彼女の案内に従います。そして追い詰められた小沢は、祥子を人質にして逃げようとします。
「芹沢さん、撃って! この男を撃って! 早く!!」
「祥子……そんなに小沢を俺に撃たせたいのか」
「!?」
「そうだろうな。そいつさえ死ねば、キミは安泰だ。仏像も独り占め、南の島がキミを待ってるんだからな」
「…………」
いよいよ祥子は、芹沢と小沢をもろとも撃ち殺そうとさえしますが、萩原のマグナムに阻止されます。
涙を流す祥子に、芹沢は静かに言うのでした。
「……終わったんだ」
前回レビューの第28話と同様、『俺たちの勲章』を彷彿させる切ないストーリー。『~勲章』の五十嵐刑事(雅俊さん)もまた惚れっぽい性格で、いつも女性に騙されてました。
ただ、最後まで相手を信じようとした五十嵐と違って、冷静に祥子の化けの皮を剥いだ芹沢には「10年後」の成長が見て取れます。五十嵐は絶望して刑事を辞めちゃったけど、もし辞めずにあのまま続けていたら、多分こんな刑事になってた筈。そんなことも考えさせるエピソードでした。
なお、今回からエンディング主題歌が『想い出のクリフサイド・ホテル』に変更されてます。もちろん唄うのは中村雅俊さん。
祥子を演じた中村明美さんは当時27歳。仲代達矢さんの「無名塾」出身で、'81年のNHK朝ドラ『まんさくの花』ヒロイン役で華々しくデビュー、その直後にレギュラー出演された連ドラが雅俊さん主演の『われら動物家族』でした。刑事ドラマは他に『太陽にほえろ!』『特捜最前線』『ベイシティ刑事』等にもゲスト出演されてます。
童顔で清純派そのもの、今回みたいな悪女役は珍しかったかも知れません。私は『まんさくの花』も観てたし結構ファンだったのに、フィルモグラフィーは'88年で途絶えており、割りと早くに芸能界を去られたのは残念なことです。
しかもセクシーグラビアの類いは一切やられてなかったようで、重ねて残念! 正真正銘の清純派女優さんで、萌えますw