☆第49話『さらば、いとしのデカたちよ』(終)
(1986.9.21.OA/脚本=長野 洋/監督=木下 亮)
最終回は、芹沢刑事(中村雅俊)が見た悪夢として「マシンガンで蜂の巣にされる芹沢&萩原(根津甚八)」の姿が映像化された以外は、特にスペシャルな要素もなく、ことさら熱い場面もなく、いつも通りにフワ~っと事件を解決して終わっちゃいました。これが'80年代なんですよね。
10年前の『俺たちの勲章』最終回では、刑事の仕事に絶望した五十嵐(中村雅俊)が辞職し、相棒の中野(松田優作)は左遷されるというほろ苦い挫折が描かれてました。
たったの10年で隔世の感がハンパないですよね。テレビドラマの作風がこれほど極端に変わった10年間って、他に無いんじゃないかと思います。
当初は『俺たちの勲章パート2』として企画された『誇りの報酬』だけど、シリーズ中盤で結城刑事(伊藤 蘭)が加入した頃にはもう『~勲章』の面影を全く感じないほど軽い内容になってました。捜査も銃撃戦も遊び感覚で、そこに緊迫感はカケラもありません。
そして最終回で描かれた銀行強盗は、金持ちのボンボンたちによるゲーム感覚の犯行でした。田沼課長(柳生 博)は「これが新人類ってヤツか、私には理解出来ない!」って驚き、嘆くんだけど、翌週からスタートする『あぶない刑事』に登場した犯罪者たちは、まさにそんな新人類のオンパレードでした。
だから『誇りの報酬』は『俺たちの勲章』の続編というより『あぶない刑事』の前身、あるいは雛形と呼んだ方がしっくり来ます。
決して『あぶない刑事』は突然変異的に生まれた斬新な作品じゃなくて、あくまで『誇りの報酬』からの流れを引き継いだ刑事ドラマ。そこにセントラルアーツの行き過ぎた遊び感覚と、舘ひろし&柴田恭兵の卓越したダンディズムが加わって、化学反応的に生まれた偶然の産物。言わばマグレの傑作なんですよねw
だから柳の下のドジョウを狙った類似番組はことごとくコケちゃった。マグレで生まれた面白さを「狙って」再現するのは、まず不可能ですから。
もし仮に『あぶない刑事』がコケてたら、日本のアクション系刑事ドラマの歴史はそこで終わってたかも知れないって、今回あらためて『誇りの報酬』を観直して私は思いました。なぜなら、正直言って『誇りの報酬』があまり面白くなかったから。
それはリアルタイムで観てる時も感じてました。なんか、中身が無いなあ、なんの後味も残らないよなあって。それは『誇りの報酬』だけじゃなく、当時のアクション系刑事ドラマ全般に感じてた事です。
作品の質が落ちたというよりも、刑事ドラマが年配層向けと若年層向けにハッキリ二分化されたせいかも知れません。『私鉄沿線97分署』や『はぐれ刑事純情派』等の流れと、『西部警察』『誇りの報酬』等の流れ。前者はより大人向けに、後者はより子供向けに内容がシフトし、当時ちょうどその中間にいた私には、どちらもマッチしなかった。
幅広い層に向けて創られた『太陽にほえろ!』が長い歴史に幕を閉じ、その後継番組『ジャングル』がヒットしなかったのも、そんな二分化の流れにそぐわなかったから、なのかも知れません。
長年『太陽にほえろ!』を観て育った私自身も、その流れには乗れなかった。だから、私よりもっと若い世代から観た『誇りの報酬』の印象は、また全然違うのかも知れません。もし『あぶない刑事』さえ現れなかったら、『誇りの報酬』はもっと伝説的に語り継がれる存在になっていたかも?
……とまぁ、やや辛口の総評になっちゃいましたが、本放映以来ずっと観る機会が無かった『誇りの報酬』をやっと観られたこと、若き日の雅俊さんや甚八さん、伊藤蘭さんのアクション、'80年代独特の空気を味わえたこと、そして刑事ドラマの歴史における本作の存在価値を再確認出来たことは、とても有意義でした。
そんな機会を与えて下さった「さかいこういち」さんに、あらためて深く感謝申し上げます。本当に有難うございました!
ちなみに私のお気に入りエピソードは、遠藤憲一さん扮するマッドなスナイパーと芹沢が対決する#03『賭けをするなら命がけ』と、阿藤快さん扮するマッドな連続殺人鬼と萩原が対決する#18『真昼の挑戦者』の2本。1対1のタイマン勝負物に弱いみたいです。
そして今回のセクシー画像は、最終回ゲストの井丸ゆかりさん、当時21歳。『3年B組貫八先生』の学級委員長役でデビュー後、あの素晴らしいボインぼよよ~ん!を活かしてグラビアアイドルとしてご活躍。
活動期間は短く、テレビの出演作は4本しかWikipediaに記載されてませんが、それはたぶんレギュラー番組に限定されてるから。
なのでそこには載ってないけど、ちょうど『誇りの報酬』最終回と同時期に『太陽にほえろ!スペシャル(#713 エスパー少女・愛)』にもゲスト出演されてます。(しかも『~報酬』レギュラーキャストの1人・宮田恭男さんとカップル役)