“毎日更新”を撤回した途端に書きたい日記ネタが次々飛び込んで来るという皮肉w 書きかけのレビューが一向に進まない!
けど、昨年秋シーズンの連ドラで一番ハマった『セクシー田中さん』の舞台裏で、けっこう深刻な対立があったと聞けば書かずにいられません。
小説やマンガの映像化に“原作者VS映像スタッフ”の行き違いは付き物とは言え、数少ない成功例の1つと思えた『セクシー田中さん』にもそれがあったとは!
鵜呑みにすべきじゃない“ネットニュース”で知ったことだけど、それは原作者ご自身がブログや“X”で公表されてるコメントをそのまま掲載した記事なので、少なくとも現実に起こった事案なのは間違いないと思います。
簡単に言えば、原作者さんが「ここだけは変えないで欲しい」「省かないで欲しい」と制作側に要望し、承諾を受けた筈だった条件、つまり最初に交わした約束が、脚本の段階でことごとく破られてしまった。
おおまかに言えば、王道(ありがちな展開や描写)を徹底的に避けたい“クリエイター”と、視聴率を稼ぐために王道こそを望む“商売人”たちとの対立。
で、第8話までは互いに議論を重ねて言わば“折衷案”に収まったんだけど、最終2話まで行くと議論する時間も無くなり、ついには脚本家さんが降板、仕方なく原作者さんご自身が(マンガの締切りに追われながら)執筆したシナリオが映像化されるに至った、という顛末。
なるほど、それでか!って、あのドラマをずっと観ておられた方は膝を叩くんじゃないでしょうか? 今さら書いても“後出しジャンケン”にしかならないけど、最後の2話はそれまでと微妙に……いや、明らかに違ってましたよね?
特に最終回のエピローグ。さんざん“恋愛フラグ”を振りまくってた2組の男女が、3年経ってもまだ結ばれてないという、悪く言えば消化不良な感じ。
原作マンガがまだ連載続行中だからって理由もあるみたいだけど、それ以上に「王道を徹底的に避けたい」創り手の意向が見え過ぎるぐらい見えてました。
で、第8話までのシナリオを書かれた脚本家さんが、月9ドラマのヒット作『ミステリと言う勿れ』も担当されてたと知って、めちゃくちゃ腑に落ちました。
放映当時、私はあのドラマを絶賛しつつも、毎回「取ってつけたような泣かせシーン」を必ず入れてくるのが残念で仕方ない!と苦言も呈し、最終的には「今季ワーストワン」ぐらいにケナした記憶があります。
今にして思えば『セクシー田中さん』にも第8話までは必ず「泣かせシーン」があったんですよね。それが最終2話には無かった。カップルが成就しない結末なんかより、そっちの方にこそ我々は違和感を覚えたんだと思います。
第8話までの『セクシー田中さん』における泣かせシーンが『ミステリと言う勿れ』みたいに鼻につかなかったのは、それこそ原作者さんが必死に王道(わざとらしさ)を阻止されたお陰かも知れません。どっちも原作を読んでないので、何もかも私の憶測に過ぎないけど。
これ、客観的に見ると、どっちが正しいのか判定するのが凄く難しい。クリエイター目線で見れば明らかに原作者さんが正しいけど、解りやすい泣かせシーンが無ければ番組はヒットしなかったかも知れない。私だって毎回泣かされましたから。
ただ、涙の押し売りを極端に嫌う私が素直に泣けたのは、原作者さんが粘り強く“王道”を取り除いてくれたからだと思うので、最終回までそのやり方(原作者と脚本家の折衷案)で通すことがベスト・オブ・ベストだったかも知れません。
つまり、第8話までと同じように議論を尽くす余裕が、制作現場に無くなっちゃったことが最大の残念ポイント。
これも後出しジャンケンで恐縮だけど、原作者さんがシナリオを書かれた最終2話は、正直イマイチでした。そこは原作者さんご自身が誰よりも痛感されたようで、件のコメント内でファンに謝罪されてます。
だからと言って『ミステリと言う勿れ』と同じ轍を踏んでたら、私は最初の2話ぐらいでリタイアした筈ですから、ほんと第8話までは理想的なコラボだった。ご当人たちには大変なストレスでしょうが、クリエイティブってのは本来そういうもの。知らんけど。
原作マンガはまだ連載中なのに、ドラマの続編がもうあり得ないことが何より残念。こうしてテレビってメディアは自滅して行くワケです。
PS. 映像作品のシナリオ(脚本)が、小説やマンガと一体どう違うの分からないとおっしゃる方、あるいは1時間のドラマが1時間で撮影できると思ってるような方は、いいかげん私の飛行機から出てって下さい。
さすがにそんなレベルの人はもういないと思うけど、もしいたら(これだけ言葉を尽くす)徒労感がハンパないです。