ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『太陽にほえろ!』#169

2019-05-29 00:00:04 | 刑事ドラマ'70年代









 
登場編の第168話『ぼんぼん刑事登場!』は先輩刑事テキサス(勝野 洋)とのW主演だった為、本作が実質上ボン(宮内 淳)初の単独主演エピソードとなります。


☆第169話『グローブをはめろ!』

(1975.10.10.OA/脚本=長野 洋/監督=児玉 進)

チンピラの撲殺死体が発見され、その仲間たちの証言により、犯人はボクシング経験者らしいと判明、やがてクリーニング店で働く若きボクサー=光男(谷岡行二)に容疑が絞られます。

ところが、調べれば調べるほど光男はイイ奴で、チンピラを殴ったのも、どうやら一緒にいた恋人の佐知子(田坂 都)を守る為だった事が判ります。

すっかり光男に同情したボンは、張り込んでた佐知子のアパートで彼と鉢合わせしながら見逃してしまい、ゴリさん(竜 雷太)の鉄拳を食らう羽目になります。

「貴様のようなヤツは刑事なんか辞めちまえ!」

「ああ辞めますよ! こんな仕事はもうまっぴらだ !!」

いくら犯人がイイ奴で、その犯行が正当防衛だったとしても、罪は罪。刑事が犯人と鉢合わせしながら逃がしちゃうなんて、いくら何でも甘過ぎるやろ! しかも叱られて逆ギレかよ!って、現在ならネット民たちの執拗なバッシングを浴びそうな作劇ですw

だけど、これが『太陽にほえろ!』なんですね。そして、これこそがボンボン刑事の魅力でもある。2年経ってロッキー刑事の先輩になっても尚、懲りずに可哀想な犯人を逃がそうとしちゃう人ですからw

で、アパートに帰って「刑事、辞めようかな」とこぼすボンに、大阪から上京中の叔母ちゃん(ミヤコ蝶々)がどやしつけます。

「辞めるなら辞める、続けるなら続ける、男らしくハッキリ決めなはれ!」

更に、ボス(石原裕次郎)もいきなりアパートに現れて「俺は別に止めはしない」と前置きしつつ、こう言います。

「殴ったゴリの方が、本当はもっと傷ついてるんだ」

光男に同情する気持ちは、先輩刑事たちも実は同じだったりする。ただ、経験を積んだ彼らは、私情を抑える術を知ってる。ボンとの違いはそれだけ。

「さ、辞めるか続けるか、性根据えてハッキリ返事しなはれ」

「……誰が辞めるかい!」

この瞬間、ホッとしたような表情を見せるボスにグッと来ます。

けど、ボンを心配して東京までついて来た叔母ちゃんは、これでまた大阪に帰れなくなっちゃったワケで、ボスはこう言って頭を下げるのでした。

「すんまへん」w

で、やる気を取り戻したボンは、ボクシングジムに潜んでた光男にグローブを渡し、リング上での勝負を挑みます。

脚本ではボンもボクシング経験者とされてた設定が、完成作では(それを示す台詞が)カットされてます。

演じる宮内さんが未経験者ゆえ映像上のリアリティーに配慮したのか、あるいは素人がプロに立ち向かう設定にした方がドラマチックと判断されたのか?(単に尺の都合かも知れないけど)

実際、経験者である光男役の谷岡行二さんと宮内さんの実力差は明白で、だからこそ、倒されても倒されても立ち上がるボンの姿は、我々の胸を打ちます。

宮内さんは実際に何発ものマジパンチを受け、本物の血を流しながら熱演されたそうで、その必死な姿は「あいつは自分と闘ってるんだ」とゴリさんに言わしめた、劇中のボンと完全にリンクしてます。俳優の安全が最優先される現在の映像業界じゃ、まず有り得ない撮影です。

だけど当時は、こうして俳優が本物の血を流したり、ゲロを吐くまで走らされたり、スピンターン等のカースタントを自分でこなしたり等を、当たり前のようにやってたワケです。

やっぱり、伝わって来るものが違いますよ。俳優自身がちゃんと身体を張り、命を懸けることで、理屈じゃ説明出来ない迫力と感動が生まれる。本物の爆破シーンとCGの爆破シーンとじゃ、感じるものがまるで違うのと同じです。

そんなボンに圧倒され、光男は負けを認めて自首するワケだけど、もしこれが現在のTVドラマみたく俳優の安全最優先で撮られてたら、説得力の無い、ただクッサいだけの話で終わった筈です。

リスクを承知で主演俳優に身体を張らせ、俳優がそれにしっかり応えたからこそ、ボンは七曲署の一員として認められ、新人俳優=宮内淳も全国の視聴者に受け入れられた。

あと、現場にいたゴリさん役の竜雷太さんが、相手に遠慮して思いきり殴れない宮内さんに、自分の顔を殴らせて演技指導したとの逸話も残ってます。当然、竜さんの顔も腫れ上がったそうです。

私が本来苦手な「体育会系のノリ」ではあるけどもw、この熱さこそが『太陽にほえろ!』最大の魅力であり、現在のテレビ番組が取り戻すべき姿勢じゃないかと、本気で思う次第です。

さらに、今回観直してつくづく思いました。これは、ボン=宮内淳さんにしか似合わないストーリーやなぁと。

七曲署の歴代刑事たち……マイコンやデュークは言うに及ばずw、ロッキーやスニーカーでも成立しない、これはボンならではのエピソード。そういう意味でも傑作です。

光男の恋人=佐知子を演じた田坂都さんは、当時23歳。『おれは男だ!』を筆頭に日テレ青春ドラマの常連さんで、『俺たちは天使だ!』にもマンション管理人=長さん(下川辰平)の娘として登場されてました。

'90年代に芸能界を引退され、2012年前後に亡くなられたらしいけど、詳細は不明なんだそうです。合掌。
 

コメント (4)    この記事についてブログを書く
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4 コメント

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Unknown (相模警察本部)
2019-05-29 22:07:57
田坂さん、亡くなられてたんですか・・・知りませんでした。とんねるずのみなさんのおかげですにセーラー服姿で出演されてたのが懐かしいです。
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Unknown (harrison2018)
2019-05-30 00:57:18
とんねるずの番組に出られてましたっけ? とんねるずのお二人も『太陽~』や青春シリーズを観て育った世代でしょうから、思い入れがあったんでしょうね。
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Unknown (相模警察本部)
2019-05-30 12:10:03
老婆心ながら(笑)

https://youtu.be/l0EwCnH1MdQ
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Unknown (harrison2018)
2019-05-30 17:23:11
穂積さんや森川さんまで出ておられたんですねw お二人とも青春シリーズ出演当時すでにそこそこオッサンでしたから、中年になって高校生役を演じても不思議と違和感ないですねw
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