☆第14話『雨に消えた…』(1975.7.30.OA/脚本=畑 嶺明/監督=斎藤光正)
家具店で起きた強盗殺人事件を捜査する五十嵐刑事(中村雅俊)は、その現場を目撃した店員=かおり(五十嵐淳子)にいつものごとく一目惚れします。
で、相棒の中野刑事(松田優作)が最有力容疑者として山中という男(広瀬昌助)を署に連行し、かおりに面通しさせるんだけど、彼女は山中の顔に見覚えがないと言う。
不審に感じた中野がかおりの身元を調べてみると、なんと彼女の出身地=霞ヶ浦は山中の故郷でもあった! これは偶然の一致なのか、それとも……?
かおりを疑ってかかる中野に、五十嵐は例によって猛反発。尾行の末、釈放された山中とかおりが密会する現場を確認してもなお、彼女の「きっとお話しますから時間を下さい!」っていう言葉を信じ、逃がしてしまう五十嵐。ほんとに毎度々々、惚れっぽい&お人好しにも程がありますw
そんな折り、事件の共犯者と見られる男が霞ヶ浦で毒殺され、更にかおりから「今から霞ヶ浦の湖で山中と会う」との連絡を受けた五十嵐が中野と二人で駆けつけると、今まさにボート上で山中とかおりが揉み合っていた!
二人は中野と五十嵐が見てる前で湖に転落し、かおりは五十嵐に救助されたものの、山中はそのまま溺死。容疑者死亡により事件は収束したかに見えたのですが……
なおも不信感が拭えない中野が調べを進めると、かおりが伯父の農場から劇薬を持ち出したらしいこと、湖で五十嵐に救助されたかおりが実は水泳が得意だったこと、そして山中がカナヅチであったこと等の事実が次々と判明します。
それでも頑なにかおりを信じる五十嵐を、無理やり手錠で拘束した中野は、彼女を再び湖へと突き落とし、そのまま放置します。
「なにすんだ、中野さん!? かおりさんが! かおりさんが!」
うろたえまくる五十嵐が見たものは、溺れてるフリをしてたかおりが、観念して悠然と泳ぎ始める衝撃の姿なのでした。
かおりは、借金に苦しむ大久保という婚約者(速水 亮)のために幼なじみの山中をそそのかし、強盗を手引きして奪った現金の横取りを目論んだ。共犯者も山中も彼女が計画的に殺したのでした。
で、地元の警察にかおりを引き渡した中野は、彼女が婚約者の大久保と会う予定だった場所へ行くんだけど、そこにいたのは結婚詐欺の常習犯をマークしてるという刑事。そう、かおりもまた、悪い男に騙されてたワケです。
のこのこ現れた大久保をフルボッコ百連発でぶっ殺そうとする中野を、必死に体を張って食い止めたのは誰あろう、誰よりも傷ついてる筈の相棒=五十嵐なのでした。
以前の記事にも書いた通り、この共演がきっかけで中村雅俊さんと五十嵐淳子さんが結婚されたことでよく知られる作品です。
主役の刑事が好きになった異性が実は……っていうのは当時の刑事ドラマ、特にこの『俺たちの勲章』で繰り返し使われて来たプロットだし、ご都合主義な展開も目立って「名作」とは到底言えないんだけど、雅俊さんを虜にした淳子さんの類まれなる可憐さ、抜群の透明感だけでも一見の価値が充分にあります。
いや、雅俊さんだけでなく、優作さんも実は淳子さんをロックオンし、撮影現場でかなり大人げない態度を見せていたとの裏話もあり、それを踏まえて観ると、例えば激しく問い詰める中野を振り払って五十嵐に駆け寄り、抱きつくかおり=淳子さんの演技に妙なリアリティーを感じたりしてw、創り手の意図とは関係ない部分で色々と見所があるんですよね。
また、五十嵐が刑事を辞めちゃう最終回(第19話)が近づいてることを思えば、刑事には到底向かない彼のお人好しさが普段にも増して爆発する本作は、切ない結末への伏線と捉えられなくもありません。そこんとこは創り手に意図するものがあったのかも?
実際、惚れた相手が(婚約者を助ける為とは言え)連続殺人犯だったことが判ったら、そして自分で手錠を掛ける羽目になったりしたら、そんなことが何度も続いたとしたら、そりゃもう辞めるしかないですよね。
刑事アクションドラマ『俺たちの勲章』は、五十嵐貴久というあまりに善良すぎる男が世の中の不条理に何度も傷つき、やがて挫折する悲劇を描いた辛口の青春ドラマとも言えます。ザッツ '70年代!