☆第12話『裏切りの銃声―高知・安芸―』(最終回)
(1984.3.30.OA/脚本=中村 努/監督=井上 昭)
最終回は峰山刑事(川谷拓三)が故郷の高知県安芸市に里帰りし、お見合い相手(小林伊津子)にフラれたりしながら、海岸でオンボロ漁船を改修してる謎の青年と知り合います。
青年は刑務所から出てきたばかりの前科者なんだけど、船を直して人生もやり直したいって想いを抱いており、それを聞いて共感した峰山は毎日のように修理を手伝い、絆を育んでいきます。
ところがある日、青年の仲間らしき男たちも修理に参加するようになり、雲行きが怪しくなります。
実はその男たちは指名手配中の脱獄囚。刑務所で青年と知り合い、船で日本を脱出する計画を練り、先に出所した青年は船を修理しながら彼らが脱獄するのを待ってたのでした。
警視庁から駆けつけた山田刑事(清水健太郎)や花形チーフ(岸田 森)から真実を聞かされ、峰山は慌てて海岸へと走りますが、ちょうど船は出航したばかり。
「待ってくれ! 戻ってくれ! 戻れ! お前、もういっぺん出直すって言ってたじゃないか! 逃げちゃいかん! 戻ってくるんだ!」
必死に叫ぶ峰山だけど、彼らも後戻りは出来ません。花形チーフ率いる狙撃隊と撃ち合いになった彼らは、全員射殺されてしまうのでした。
「もういっぺんやり直すって言ったのに……やり直せたのに……バカぁ!」
浜辺でがっくり膝をつき、涙を流す峰山に、最終回だというのに電話で応援を呼ぶだけの活躍しかしてない相棒の山田が、急に主役みたいな顔をして語りかけます。
「辞めようと考えてんの? 自分には刑事は向かないと思ってんの? 俺、どうすればいいの? そんなの、水臭いじゃないの!」
その問いかけには答えず、ただひたすら泣きじゃくるだけの峰山だけど、翌朝、山田が実家まで迎えに来た時、ボソッとこう言います。
「地酒が旨いんだ。お土産に買って帰ろうか」
(おわり)
銃撃戦はあったもののアクションの見せ場という程じゃなく、川谷拓三さんご本人の故郷である安芸市の自然をバックに、即興芝居を交え、静かに淡々と進んでいく作劇。そして結局どうなったのかハッキリしない結末といい、実に『あいつと俺』らしい最終回でした。
明らかに素人と思われるキャストが何人か出ておられるんだけど、きっと川谷さんのお友達なんでしょうw そういう自主映画みたいなノリもまた『あいつと俺』らしさで、私は好きだけど大方の視聴者は怒るかも知れませんw
清水健太郎さんは今回も出番少なめ。最終回ぐらいコンビでもっと活躍すればいいのにって思うけど、この回がラストになる予定じゃなかったのかも知れないし、そもそもこのドラマは川谷さん主演で企画されたもので、たぶん清水さんはスポンサーを安心させる為の保険、言わば客寄せパンダとしてキャスティングされただけ。最初からバディー物にするつもりは無かったのかも知れません。
とにかく川谷さんが主役というだけで味わい深い……とは今だから言えることで、当時ガキンチョだった私が観たら「地味すぎる!」としか感じなかっただろうし、あまりに説明が省かれ過ぎてストーリーも解らなかっただろうと思います。
だけど今となっては、その「地味で何が悪い?」「いちいち説明させるな、自分で感じろ!」っていう創り手たちの姿勢こそが眩しいです。現在のテレビ番組制作者たちが観たら羨ましくて仕方ないんじゃないでしょうか?
いや、当時だってここまで地味で解りにくいテレビドラマは許されなかった筈で、勝プロ作品だから、東京12チャンネルだからこそギリギリ可能だったのかも知れません。実際たった4話で打ち切られ、なぜか3年も経ってから残りの8話が(しかも朝9時台に)放映されるという憂き目にも遭ってるワケですから。
それでも、こんな実験的な作品が地上波で放映されただけ、やっぱり良い時代だったと思います。
現在はBSとか配信チャンネル等で、ある程度ユニークな作品も観られるようになってるんでしょうか? 地上波ドラマの外伝とか後日談とか、そんなのばっかじゃ意味が無いと私は思いますが……
なお、トップ画像は峰山刑事の見合い相手に扮した、小林伊津子さん。'82~'83年のスーパー戦隊シリーズ『大戦隊ゴーグルファイブ』にレギュラー出演された女優さんで、その他は時代劇への出演が多かった模様。Wikipediaにプロフィールが記載されておらず、詳細は不明ですm(__)m
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