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1980年4月、日本テレビ系列の火曜夜9時枠でスタートした『大激闘/マッドポリス'80』は「10秒に1発撃ち、1分にひとり死ぬ」のキャッチコピーほどじゃないにせよw、とにかくひたすらドンパチアクションを見せるという素晴らしいコンセプトで制作されました。
人情ドラマはもちろん捜査シーンすら無く、全国のヤクザが結集した「ジャパンマフィア」と、それを壊滅させる為に結成された「マッドポリス」の血で血を洗う戦いのみが描かれる本作を、刑事ドラマと呼んで良いものかどうか今でも迷いますw
実際、私が初めてこの作品を観た時の反応は、あまりのドラマ性の無さに唖然としつつ、延々と鳴り響く銃声が子守唄みたいに聴こえて居眠りしちゃうというw、決して芳しいもんじゃありませんでした。
だけどブログを書く為にあらゆる刑事ドラマをチェックするうち、本作がいかに個性的で挑戦的でクリエイティブであったか、私はいま思い知らされてます。
刑事ドラマと言えば刑事がただ突っ立って殺人事件の謎を解くだけのもんだと、思い込まされてる今の若い人たちにこそ観て欲しいですね。
それならもっとゴージャスな『西部警察』シリーズを勧めた方がいいんじゃないの?ってご意見はごもっともだけどw、いやいや『大激闘』の尖り方やデタラメさ、その果てしないB級テイストの方が今の人達には響くんじゃないでしょうか?
なにせマッドポリスの面子が渡瀬恒彦、梅宮辰夫、志賀勝、片桐竜次、中西良太、堀川まゆみ。紅一点の堀川さんは別として、野郎どもの顔面力が規格外ですw 放送コードぎりぎりですw
渡瀬さんは数多くの刑事ドラマで主役を張っておられたけど、アクション系の連ドラはこれが唯一だったはず。そういう意味でも貴重な作品です。
☆第2話『No.1抹殺計画』(1980.4.15.OA/脚本=柏原寛司/監督=関本郁夫)
マッドポリスに課せられた今回のミッションは、ジャパンマフィアの間で「No.1」と呼ばれるヘロイン密輸部門の黒幕、その正体を暴いて抹殺すること。
まず手始めに配下の暴力団事務所の倉庫からヘロインを全て奪取し、新たな調達のために「No.1」が動かざるを得ない状況を作り上げます。もちろん邪魔するヤクザは1人残らず射殺しますw
この展開は後に石原プロが社運を賭けて制作するポリス・アドベンチャー『ゴリラ/警視庁捜査第8班』の第2話とほとんど同じ。基本設定もよく似てるし、プロデューサーにして第8班の倉本班長=渡哲也さんは渡瀬恒彦さんのお兄さんだし、少なからず意識した側面があったのかも? 放映当時に世間の評価が得られなかった顛末もよく似てます。
で、麻薬Gメンが「オレたちの仕事を邪魔するな」と介入して来て、氷室キャップ(渡瀬恒彦)が捜査一課にいた頃に先輩だった坂本主任(河原崎次郎)が、なんの理由もなく氷室をフルボッコに。視聴者から「この番組には暴力と破壊しか無い」と袋叩きにされたのも無理ありませんw
「やられてみて初めて分かったけど、警察ってのは暴力的だな」
↑ っていう氷室キャップの台詞が笑えますw とにかく全編を通してキャップが格好良くて、イカす台詞を連発してくれます。
例えば、敵を監視するために泊まるホテルのルームキーを、紅一点の悠子(堀川まゆみ)に渡すとき。
「ひとりで寝られるか?」
「もう、バカ!(照) 」
ここは渡瀬さんのアドリブっぽいです。私が言ったらただのセクハラですw
例えば、ヘロイン取引の情報が簡単に得られて「これは罠ですよ!」と警戒する部下たちに対して。
「罠なら嵌まってやろうじゃねえか。どうせ一度はケリつけなきゃいけねえんだ」
そして最後に正体を表したNo.1=坂本主任に、ありったけの弾丸をぶち込む直前に一言。
「おやすみ、ナンバーワン」
それもこれも業界で「狂犬俳優」と呼ばれた渡瀬恒彦さんが言うからこそクールにキマる。実直さが滲み出ちゃう渡哲也さんだと似合わないですよね。
で、そんな渡瀬さんとは対照的に、同じ枠で放映された『探偵物語』や『大都会 PART II 』の松田優作さんを意識したに違いない、新田刑事役の片桐竜次さんが毎回アドリブを飛ばしまくって豪快にスベってくれるw
例えば、敵のアジトを偵察して来たマッドポリス一番のコワモテ刑事=芹沢先輩(志賀 勝)との掛け合い。
「なんや知らんけどガラ悪い連中がいっぱいおるぞ?」
「いやあ、センパイよりガラ悪いのがいましたか」
「そりゃどういう意味や」
「いえいえ」
「あの連中をどうするかやな」
「そりゃもうセンパイのそのコワモテの彫りの浅い顔でひとつよろしく」
「おおきに」
いかにも優作さんがやりそうなアドリブだけど、これも優作さんが言えばこそ笑えるんですよね。片桐さんの場合は一種の「スベり芸」として毎回楽しみにしてますがw
マッドポリスの間じゃこうしてコワモテ過ぎる志賀さんの顔をイジったギャグがお約束で、敵組織に潜入してフルボッコにされた若手刑事の原田(中西良太)が、芹沢先輩に救出された時にもこの掛け合い。
「なかなか男前になったやないか」
「センパイとおんなじような顔になっちゃったスよ」
「そりゃお前どーいう意味や」
「顔が腫れちゃったから」
「ああ、そうか」
って、納得しちゃう芹沢センパイがキュートですw
今こうしてあらためて観ると、マッドポリスはやっぱり面白い。いや、今観るからこそ面白いのかも知れません。こんなテレビ番組はもう、二度と創れないでしょうから。
悪人を逮捕ではなく"退治"と言っていた「ワイルド7」もそうですが、そそられる物があります。
やはり昔のドラマは女子供向けに作っていませんね(^^ゞ
全ての番組が女性と子供向きに創られてる現在では絶対に生まれない作品で、ほんとに今観ればこそ楽しめると思います。