ボスに叱られた腹いせにゴリさんが無実のチンピラを絞め殺す現場を目撃してしまった美少女が、ゴリさんにつけ回された挙げ句に捕まり、犯されるという衝撃のエピソード! ……なら面白かったのですが……
☆第359話『ジョギングコース』
(1979.6.15.OA/脚本=渡辺由自&小川 英/監督=竹林 進)
神社の石段で転落死した男が着てるジャージを見て、ゴリさん(竜 雷太)が驚いた!
そのジャージは、出勤途中で知り合った少女=薫(岸本加世子)が、心配そうに探してた男が着てる筈のものと同じデザインなのでした。
現場に駆けつけた薫が叫びます。
「お父さん!? お父さんっ!!」
そう、亡くなったのは薫の父親=藤沢鉄男。ジョギング中に足を滑らせての転落事故に見えるけれど、いくつか不自然な点もある。その朝、薫の心配する様子が気になりながら、遅刻しそうだったもんで見過ごしちゃったゴリさんは、責任を感じて藤沢が転落に至ったいきさつを詳しく捜査します。
すると藤沢が3ヶ月前にジョギングコースを変えていたこと、それ以前のコースで3ヶ月前に傷害事件が起きてたこと等が判明。その事件に関わった為に殺された可能性が浮上します。
「どうしてそんなこと聞くの? 事故なのに……調べることなんか無いのよ、事故なんだから!」
せっかくゴリさんが苦労して捜査したのに、薫はなぜか真実を知ろうとしません。いや、薄々知っていながら認めようとしないのでした。
どうやら、チンピラが写真館の店主=岡本(山本紀彦)に酷い暴力を振るう現場を、ジョギング中の藤沢が目撃してしまった。岡本は被害届を出したものの、藤沢が証言を拒んだ為にチンピラは逮捕されなかった。それがきっかけで仕事も恋愛もうまくいかなくなった岡本が、藤沢を逆恨みして殺したらしい。
そして薫は、藤沢がチンピラに脅され、口止めされてる姿を目撃してしまった。大好きなお父さんが保身のために証言を拒んだことが信じられず、頑なに耳を塞いで来たのでした。
だけど薫の証言が無ければこの事件は解決できません。ゴリさんは心を鬼にして彼女を説得します。
「キミのお父さんは正しくて強くて、世界一いいお父さんだと思いたい……その気持ちはよく解る。弱くて卑怯で、脅しにビクビクするようなお父さんだとは思いたくない。そうだろ?」
「…………」
「しかし本当はね、弱い面も卑怯な面もあったんだよ。だけど、薫くんのお父さんは1人しかいない。1人しかいないんだ。しかも、殺されている」
「…………」
「キミはたった1人の娘として、お父さんを殺した犯人が憎くはないのか? この事件をちゃんと解決するんだ。それから、お父さんの優しい面をしっかり胸の中にしまって、生きていくんだ!」
そこでようやく、薫が心の扉を開きます。
「あの時の顔、お父さんの顔じゃない……お父さんの顔じゃないもん! 知らない方がいいと思ったの! 忘れた方がいいと思ったの!」
泣きじゃくる薫を無理やり……じゃなくて優しく受け止め、抱き締めたゴリさんは、その証言を元にチンピラを傷害罪で、岡本を殺人罪でそれぞれ逮捕します。もちろん抵抗したチンピラにはゴリパンチ100連発のオマケがつきました。
そうして事件は無事に解決し、薫からゴリさんに『優しいお父さんの事だけを心の中に秘めて、これからの人生を生きていきます』と綴られた手紙が届くのでした。(おわり)
……あれから時は流れ、人々の価値観が随分と変わりました。現在ならば、お父さんの優しい面だけを記憶するんじゃなくて、弱い面も卑怯な面も「ありのまま」受け入れなさいって、主人公は言うんじゃないでしょうか? 人間なら弱くて卑怯な面もあって当然だし、それを認めなきゃキミ自身も生きづらいだろ?って。
だからなのか、ゴリさんの説得も薫の手紙も、私のハートにはちっとも響いて来ませんでした。
それより何より残念なのは、このエピソードにゴリさん「ならでは」の個性がほとんど活かされてないこと。こんなストーリーならどの刑事が主役でも代わり映えしないだろうと思います。事件の内容よりも刑事の心情を重視するから『太陽にほえろ!』は面白かった筈で、これじゃ昨今の謎解き「だけ」の刑事ドラマ群と何も変わりません。
はっきり言ってつまんない。'79年はこういった凡作がやたら続き、民放ドラマ王座陥落への道を着実に歩んでることが、今こうして順番に観返してるとホントによく分かります。
今回も見所は2点のみ。自らジョギングして手がかりを集めるゴリさんの珍しいジャージ姿と、当時19歳のゲスト=岸本加世子さんの美少女ぶり。ちょっとアンニュイかつエキセントリックな演技は桃井かおりさんの若い頃を彷彿させ、もしかしたら意識されてたのかも知れません。
'77年のTBS系ドラマ『ムー』やバラエティー番組等ですでに人気者で、刑事ドラマは他に『明日の刑事』#27と#43、『新幹線公安官』第2シリーズ#12等にゲスト出演。'82年のビートたけし主演『刑事ヨロシク』では刑事役でレギュラーを務め、それが映画『HANA-BI』や『菊次郎の夏』など北野武映画への出演に繋がっていきます。
岸本加世子さんと言えば樹木希林さんと長年コンビで出演された富士フイルムCMの印象も強く、今回のエピソードに登場する写真館でもフジカラーのPOPがちらりと見えたりして、なんだか縁を感じました。
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