『非情のライセンス』第1シリーズは1973年春から'74年春まで、NET(現テレビ朝日)系列の木曜夜10時枠で全52話が放映されました。制作はNET&東映で、生島治郎氏による小説『凶悪』シリーズが原作になってます。
同じ枠で'74年秋から'77年春まで第2シリーズ全124話、'80年春から冬まで第3シリーズ全26話が放映されてます。
当時ガキンチョだった私は夜9時以降のテレビ視聴を親に禁止されてた為、この番組はほとんど観たことがありません。再放送で観る機会はいくらでもあった筈なのに、積極的に観たいとも思いませんでした。
その原因はやはり、主人公の会田刑事(天知 茂)が醸し出す陰気なオーラに尽きるかと思います。どう見ても『太陽にほえろ!』の明るさとは対極にあるイメージで、私はそういうのが一番ニガテなんです。
実際、会田刑事は広島出身で被爆者の一人であり、両親も原爆で亡くしてる設定。おまけに実姉は在日米軍兵にレイプされて自殺しており、ゆえに犯罪者を徹底して憎むニヒルな男として描かれてる。
当時は終戦後まだ30年も経っておらず、各エピソードも戦争の傷痕を織り込んだものが多かったみたいです。戦争が忘却されつつある今となっては貴重とも思えるけど、とにかく辛気臭いのがニガテな私はひたすら敬遠してました。
だけど考えてみれば、その暗さこそが本来の刑事ドラマなんですよね。犯罪をテーマとして扱い、そこに至った人間のダークサイドを描くワケだから、暗くて当たり前なんです。それを明るいイメージに一変させちゃった点こそが『太陽にほえろ!』最大の革命だった、と言えるかも知れません。
けれども、あえてハミダシ刑事ばかり集めた「警視庁特捜部」という設定は、同じテレ朝&東映タッグによる『特捜最前線』や『相棒』等に受け継がれ、今やすっかり刑事ドラマのメジャースタイルとなり、『太陽にほえろ!』や『踊る大捜査線』みたいに所轄署を舞台にした作品の方が逆に珍しくなっちゃいました。作風も暗いものが増えてきた気がするし、時代は巡り、世相はまた戦争時代に戻りつつあるのかも?なんて思ったりもします。
それはともかく、悪を駆逐する為なら手段を選ばず、容疑者を拳銃で脅すなんてのは日常茶飯事で、上司の命令は聞かないどころか気に障ればぶん殴るというw、後のスコッチ刑事や『あぶない刑事』たちも真っ青な会田刑事の暴走ぶり。
最終回ではとうとう主人公が刑務所にぶち込まれてジ・エンドという『非情のライセンス』、機会があれば是非観てみたいと今は思ってます。
天知茂さん以外のキャストは、特捜部を取り仕切る矢部警視に山村聰、会田と対立する捜査一課の係長に渡辺文雄、特捜部刑事に葉山良二、多々良純、宮口二郎、梅津栄、左とん平、江波杏子、篠ひろ子、財津一郎、柳生博、小野武彦etc…といった面々。画像の集合写真は第3シリーズにおける特捜部です。
なお、1973年は『太陽にほえろ!』と『非情のライセンス』のほか、フジテレビ系列で『トリプル捜査線』『科学捜査官』『ロボット刑事』等の刑事ドラマも放映されてました。