ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『永遠の0』#01

2018-12-13 00:05:04 | 多部未華子









 
死んだら驚いた! 凄いもん見た! 感動した! なんも言えねー! なんも言えねぇーっ!! なんも言えねえぇぇーっ!!! (うるさいw)

言わずと知れた百田尚樹さんの大ベストセラー小説を、テレビ東京が2015年に開局50周年記念作品としてドラマ化、3夜に渡ってスペシャル枠で放映されました。我が家じゃテレビ東京は受信出来ないんだけど、yamarine師匠のお陰で観ることが叶いました。いつも有難うございます!

第二次世界大戦中、海軍航空隊で零戦のパイロットだった宮部(向井 理)は、松乃という女性(多部未華子)と見合い結婚しますが、たった1週間の結婚生活しか送れないまま出撃します。

数ヶ月後(数年後?)に一時帰還した宮部は、松乃と何を話せば良いやら分からず「なんも言えねーっ!」って思いながら、彼女の手料理を黙って食べるのでした。

そして寝る時間になって、やっと出た言葉が「明日の朝、発ちます」ですよ。松乃は内心「たった1晩って……なんも言えねーっ!」って思いながら、か細い声で問い掛けます。

「どちらへ行かれるんですか?」

「いや、それは……」

自分の妻に対して、行き先すら軍の機密だから「なんも言えねーっ!」ってワケです。哀しそうに謝る松乃に、宮部は「海に氷が張るそうです。そういう所だそうです」とだけ言うと、軍から支給された防寒着を松乃に見せます。

この時ですよ! 薄っぺらい防寒着を見るや否や、急に松乃がササッと動き出して、家にある自分の冬服をかき集め、ハサミを入れて中の綿を取り出すんです。

「こんな事なら、もっと衣服を残しておくべきでした……」

恐らく、貧窮につき必要最小限の衣服以外は売っちゃったのでしょう。そのなけなしの衣服を、松乃はためらいも無く切り裂いていく。

「これに綿を入れさせて下さい! 間に合わせます。明日の朝までに間に合わせます!」

更に松乃は、貴重な毛皮まで使って、一心不乱に裁縫を始めるのでした。

「これさえ着ていれば、どんな寒い所へ行っても……大丈夫です……例え、氷が張っているような所でも……必ず……必ず生きて……生きて……」

胸が詰まって声が出なくなった松乃の姿に「かけがえのないもの」を見た宮部は、彼女を抱きしめて言いました。

「必ず、生きて帰ります」

……この台詞は余分だったように思います。わざわざ言葉にしなくても、この瞬間に宮部が「生きて帰る」ことを決意したんだなって、視聴者には充分に伝わってますからね。

オマケに「必ず、キミの元に戻って来る」なんて、急に現代風の(いかにも女子ウケ狙いの)言い回しまで付け加えるもんだから、せっかくの感動が危うく台無しになるとこでした。

でも、そんな事で水に流されちゃう程度の感動とは違いました。このシーンは凄いです。何が凄いって、言わずもがな多部ちゃんですよ!

この第1話における多部ちゃんの出番は、この僅か10分前後のシーンだけなんだけど、そのたった10分で視聴者の感情がピークにまで高ぶって涙腺決壊ですからね!

防寒着を見て多部ちゃんが急に動き出した時点でもう、私は号泣してましたからw いや、その前に、いきなり帰宅した向井くんを見て硬直しちゃう……つまり多部ちゃんが画面に登場した時点でもう、既にヤバかったですw

これがどんだけ凄い事か、皆さん解って頂けるでしょうか? たぶんタベリストな方は頷いてくれてると思いますが、それ以外の皆さんは「多部未華子を愛し過ぎて冷静に観てないやろ」って思われてるんじゃないでしょうか?

それは違います。断じて違う。私はクールなんです。ロンリーウルフなんです。ハリソン・フォードなんです。ホットなのは下半身の一部だけです。

いや、正直なところヤマリン王やディープ国のパープリン王子が「多部ちゃんはとんでもない領域にまで行っちゃった」みたいに書かれてるのを読んだ時は、私も「いやいや、愛し過ぎでしょ」ってw、ちょっと思いましたm(_ _)m

でも、この『永遠の0』第1話を観て納得しました。映画『深夜食堂』もそうだったけど、多部ちゃんが出てる場面だけクオリティーが違うんですよね! 明らかに数段跳ね上がるんですよマジで。

名作マンガ『ガラスの仮面』で、ヒロイン(天才女優)が舞台に立っただけで観客が物語の世界にグイッと引き込まれちゃう……みたいな描写がよくありましたけど、多部ちゃんはまさにその領域に入ってるんじゃないでしょうか?

もし仮に、他の女優さんが松乃を演じたとして、防寒着を見た途端に動き出す姿を見ただけで泣けるもんでしょうか? たぶん泣けないと思います。

そもそも、なんであれだけで私が号泣しちゃったかと言えば、松乃がずっと宮部の帰りを待ちながら「あの人の為に私は何が出来るんだろう? 何をすればあの人の力になれるんだろう?」って、考えに考え続けて来たであろう事が、あの姿から伝わって来るからなんですよね。

多部ちゃん以外の女優さんで、そこまで想像させられる人がいるでしょうか? たぶん、単に1晩しか時間が無いから急いでる風にしか感じられないだろうと思います。

多部ちゃんがご自分で松乃の心情を想像された結果なのか、あるいは監督さんによる指示だったのか判らないけど、いずれにせよ動作と表情だけで的確にそれを伝えてくれる役者さんは、そうそういない筈です。

ヤマリン王やパープリン王子の仰る通りです。多部ちゃんのレベルは群を遥かに抜いてます。共演者とのバランスが取れなくて、むしろ起用しづらくならないか心配になっちゃいますw

本当に凄いもんを見てしまいました。あの10分で多部ちゃんが全部持ってっちゃいましたから、ドラマ全体に対して言いたい事は、特にありませんw


☆ちょっと長いPS.

2013年に公開され大ヒットし、日本アカデミー賞の各賞を総なめにした映画版『永遠の0』は、ドラマ版よりも後にテレビ放映を観ました。

ストーリーについては、ほとんどドラマ版と同じだったもんで、あらためて書きたい事はありません。スペクタクルな映像が観たいなら映画版、より深い人物描写を望むならドラマ版っていう、当たり前の感想しか浮かんで来ません。

ただ、ドラマ版で私が号泣させられた、あの宮部と松乃の再会シーンが、映画版だとピクリとも涙腺が緩まなかった事実だけ、ここに記しておきます。

映画版の宮部は岡田准一くん、松乃は井上真央さんが演じてるワケですが、俳優さんに責任は無いと思います。(あるとすれば、監督さんの指示に疑問を挟まなかったこと)

ドラマ版は、ほんの数日しか結婚生活を送れないまま出征した夫が、数ヶ月ぶり(あるいは数年ぶり)に前触れなく家に戻って来た時、果たして妻はどんなリアクションをするか?っていう部分を、物凄く丁寧に描いてました。

そしてそれを多部ちゃんが充分に理解し、的確に繊細に演じてくれた事によって、松乃の表情を見ただけで彼女の心情がダイレクトに伝わって来る名シーンになった。今、思い出しただけでまた泣きそうになる位、本当に素晴らしいシーンでした。

ところが、映画版における宮部と松乃の再会シーンって、めちゃくちゃ軽いんですよねw ほんの1~2週間ぶりに出張から帰って来たみたいなノリで、夫の生死も判らないままずっと待ってた妻の心情や、その月日の重さが全く伝わって来ない。

だから、翌朝の別れのシーンも全然ぐっと来ない。この僅か一夜の再会がいかに至福のひとときだったか、それを観客が感じられなきゃ、このシーンを入れる意味が無いですよね?

ドラマ版では、ほんの10分前後のシーンだけで、宮部にとって松乃がどれほどかけがえない存在だったかが、見事に伝わって来ました。

それって、この物語の肝ですよね? なぜ宮部が臆病者呼ばわりされても戦死から逃れようとしたのかを、この再会シーンで我々は初めて理解するワケです、本来なら。

ドラマ版はもう、多部ちゃんの表情ひとつで全てが伝わって来るから、宮部のくっさい台詞が邪魔な位でしたw それに対して映画版は、くっさい台詞で補わなきゃ何も伝わらない。

山崎 貴 監督は、そこんとこを理解しないまま、この映画を撮っちゃったんじゃないでしょうか? これは尺(ドラマ版は長く、映画版は短い)の問題じゃありません。

山崎監督はビジュアル面(特にCGのクオリティー)こそが最優先で、人物の心情描写にはあまり興味が無い人なんだろうと思います。でなきゃ、あの再会シーンをこんなに軽く演出しちゃうなんてこと、まず有り得ない。

CGで再現された戦争スペクタクルは確かに素晴らしい出来映えかも知れないけど、この物語の肝はそこじゃないはず。

このテの大作なら何でもかんでも(適性も考えず)山崎監督に任せちゃう日本映画界(しかも日本アカデミー賞総なめ!)と、台詞と音楽だけで簡単に泣いてくれちゃう日本の観客たち(まんまと大ヒット!)。

それで映画業界が活気づくなら別に良いんだけど、私はその仲間にはなりたくありません。マイノリティ万歳です。
 
 

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2 コメント

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Unknown (gonbe5515)
2018-12-13 19:14:46
久しぶりにこのドラマを思い出すことが出来ました。ありがとうございます。4枚目から6枚目のシーン、本当によかったです。

映画版では本当にあっさりと扱われていたシーンです。でもおっしゃるとおり、このシーンがあればこその、あとの宮部の行動なのですよね。

だからこそ、最後の選択をするときの宮部の葛藤を思うと・・・。泣けます。
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>gonbeさん (ハリソン君)
2018-12-14 00:19:36
同じストーリーでもドラマ版は人の心情、映画版はスペクタクルと、力点の置き方が違ってたんでしょうね。尺の長さや画面の大きさを考えれば、それぞれが正解で、あとは観る側の好み次第って事なのでしょう。
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