NHKの金曜夜10時「ドラマ10」枠でスタートした新ドラマ。沖田×華(おきたばっか)さんの同名コミックが原作になってます。脚本はNHK初登板の安達奈緒子さん、そしてヒロインは連ドラ初主演となる清原果耶さん!
高校の准看護学科に通う女子高生アオイが、町の産婦人科で看護助手のアルバイトをする中で、出産、中絶、死産などを目の当たりにし、命とは何かという重いテーマと向き合っていく物語。
最近、私は医者モノのドラマに心底から飽きてしまい、評判良いらしい『グッド・ドクター』も全く観る気になれません。観ればそれなりに感動するんだろうけど、医者モノで感動するパターンってだいたい決まってますから「もういいや」って思っちゃう。
決して医者モノが嫌いなワケじゃなくて、むしろマイ・フェイバリット漫画は『ブラック・ジャック』って言い続けてるくらい好きなんだけど、だからこそ『ブラック・ジャック』があればもう充分って思っちゃう。あれを超えられるワケがないって。だから孤高の天才ドクターが奇跡の手術をする類いのドラマは特に観たくない。どうやったってブラック・ジャックの物真似にしか見えないですから。
だけど本作は町の小さな産婦人科が舞台で、主役は平凡な女子高生。天才ドクターの出番は当然ないし、何より朝ドラ『あさが来た』から注目してる清原果耶さんの初主演作ですから、これは観ないワケにいきません。
で、実際に観たら、これは昨今量産される病院モノとはひと味もふた味も違う作品でした。
だいたい新しい命が誕生する瞬間を見せられると、人は無条件に涙腺が緩んじゃうもんで、それを利用してあざとく泣かせようとするドラマが多いワケだけど、この『透明なゆりかご』はむしろ逆を行ってます。
初回、アルバイト初日でいきなり堕胎手術に立ち合うことになったアオイは、さっきまで「命だったカケラ」を小さな容器に入れ、火葬業者に引き渡すという作業を任されます。
現代日本人の死亡原因第1位はガンじゃなくて、人工妊娠中絶なんだという現実。それを肯定も否定もせず、ただ見つめて実感するアオイを通して、観てる我々も色んなことを考えさせられます。
みんなに祝福される幸せな出産もあれば、そうじゃない出産もある。不倫相手との間に出来た子を密かに出産した女(安藤玉恵)は、その不倫相手に逃げられて絶望し、我が子と向き合おうとしません。
だけどアオイのお節介とも言える働きかけで、いつしか母性に目覚めたその女は赤ちゃんを優しく抱いて、笑顔で退院していく。なのに数日後、その子は窒息死したとの知らせが届いちゃう。
事故死なのか、あるいは虐待死なのか? 真相を知るすべもないんだけど、せめて赤ちゃんが母親の愛情に包まれて逝ったことを願うアオイ。
この初回の粗筋だけで、創り手に「客を泣かせて数字を獲ろう」なんて魂胆が無いのは明らかです。むしろ、目を背けたくなる厳しい現実をあえて描いてる。普通ならカットする堕胎手術の様子までストレートに見せちゃってる。
でも、決して嫌な気分にも暗い気持ちにもならないんですよね。むしろ、いろんな困難を乗り越えて自分を産んでくれた親への感謝と、これまで生きて来られた奇跡に対する感謝で温かい気持ちになれる。「生きてるだけで儲けもの」って素直に思えちゃう。
それを上から目線で説教されても心には響きません。「安全運転しろ」と言葉で言われるより、交通事故の悲惨な現場を見せられる方が効果的なのと一緒で、不運にも産まれることが出来なかった命を淡々と見せられた方が、よっぽど力強く「自分は生きなきゃ」って思えます。
創り手の狙いというより、願いがそこに感じられるから、こんな私でも素直に感動出来ます。私みたいに生きる気力を失いかけてる人にこそ、このドラマはオススメしたいです。
よっぽど生まれたいから生まれたんだろうし、せっかくここまで生きて来られたんだから、生きなきゃ損です。
まぁ、自分が生きることでよっぽど他者に迷惑がかかるようなら、その時ばかりは死を選ぶかも知れないけど、そうならない限りは図太く生きていこうって、あらためて思わせてくれました。
レギュラーキャストは他に、瀬戸康史、水川あさみ、原田美枝子、酒井若菜、マイコetc…といった面々。
原作者=沖田×華さんの波瀾万丈人生(ソープ以外の風俗業はAV出演も含め全て経験されたとか)にも興味津々です。
今はNHKと民放のイメージが完全に逆転してますよね。NHKの方がよっぽど斬新で自由度の高い番組を創ってくれてます。民放にも面白いドラマはちょこちょこ生まれてますが、ガツン!と来るような作品とはなかなか出逢えません。破滅です。
「Z」の意味は、すみません、ももいろクローバーZとマジンガーZが好きだからという、下らない意味しかありませんw
「Z」はアルファベットの最後ということで「究極」みたいな意味を込められがちですが、前のブログがある意味「究極」までやって破滅させられちゃいましたからw、タイトルに反して今回は抑え気味にやって行く「つもり」でいます。今後もよろしくお願いします!
『Z』にどういう思いがこめられてるのでしょう??
想像をたくましくして、その意味を考えています。
旧ブログがどうなるかは気になるところですが、こちらが開店したことで、禁断症状からは脱出できました。これからもよろしくお願いいたします。
さて、このドラマ、私も見ています。ほとんどのドラマに興味をもてない私ですが、こちらは全話録画しといて、一枚にまとめるつもり。
内容もこれまでのドラマでは取り上げなかったようなことばかりですし、おっしゃるとおりいいところばかりではなく、目をそむけたくなるような部分もしっかり見せているのが素晴らしい。
そういう内容の中で、清原果那さんの存在がひときわ輝いている気がします。高校生である彼女の目を通して見る現実が重いほど、アオイのまっすぐさ、真剣さに心打たれます。
こういうドラマを作ってくれるなら、受信料は高くない。逆に、無料ということに甘えているかのように、十年一日のごとくくだらない番組を垂れ流し続ける民放に腹立ちを覚えます。
『青い鳥』『それでも、生きてゆく』のようなドラマを、民放に期待するのはもう無理なのでしょうか。