ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大追跡』#19―1

2018-10-28 00:00:18 | 刑事ドラマ'70年代









 
子供の頃、我が家じゃ夜9時以降のテレビ鑑賞が禁止されてましたから、『大追跡』(火曜夜9時、日本テレビ系列)はリアルタイムで観てません。クラスメート達がしきりに「オットー!」とか言っても、何の事だか私にはサッパリ分かりませんでしたw

だから、そんなに強い思い入れは無くて、『太陽にほえろ!』ほど詳細なレビューは出来ませんm(_ _)m 第19話を選んだのも、数年前のCS放送を録画したのが、たまたまHDDに残ってたから。ゆえに画像には「ファミリー劇場」のテロップが入ってますm(_ _)m

この録画を消さずに残してたのは、クライマックスにおけるアクションシーンが、何回でも観たくなる素晴らしい出来映えだったから。数多ある当時のアクションドラマの中でも、『大追跡』のアクションはトップクラスのクオリティーを誇ってました。

それはやっぱり、藤 竜也に沖 雅也という、アクションがずば抜けて画になる素晴らしいスターが揃ってた事が、何より大きいかと思います。特に沖さんは、スコッチ刑事とはまた違ったホットな魅力をこのドラマで見せつけ、新境地を開拓されてその人気を決定づけました。

そして更に、後の『俺たちは天使だ!』や『プロハンター』『あぶない刑事』にも受け継がれて行く、独自のノリによる軽快な台詞のやり取り。それら全ての作品に出演されてるのが柴田恭兵さんで、明らかにこの人のアドリブが発信源になってるんですよね。

そんな恭兵さんを連ドラのレギュラーキャストとして初めて起用した点でも、この『大追跡』っていう番組の功績は大きかったと思います。

それらの魅力は、残念ながら文章で伝えられるもんじゃないんだけど、その雰囲気だけ少しでも感じて頂ければ幸いです。


☆第19話『ご不要な亭主 始末します』

(1978.8.8.OA/脚本=永原秀一、柏原寛司/監督=櫻井一孝)

ちり紙交換車って、今も町内を回ったりしてるんでしょうか? 久しく聴いてないこのアナウンス、昭和の時代はしょっちゅう耳にしたもんです。

「ご町内の皆様、お騒がせしております。こちらは、お馴染みのちり紙交換車でございます。ご家庭で、ご不要になりました古新聞、古雑誌……」

このアナウンスを聴いた町の奥さん達が、ちり紙と交換する為に差し出すのが古新聞や古雑誌じゃなくて、古亭主だったとしたら?w これは、そんな恐ろしい(だけど妙にリアルな)お話です。

高級住宅地に住む富裕層の男たちが次々と失踪し、神奈川県警・遊撃捜査班の水原慎介(藤 竜也)は殺し屋が暗躍していると睨み、横光(丹古母鬼馬二)というちり紙交換業者に眼をつけます。

その読みは的中し、横光は会社社長・宇津木の妻=章子(稲野和子)を訪ねて密談します。

「主人は間違いなく、ナニして貰えるんでしょうね」

「心配するなよ。すぐナニしてやるよ。でないと、次のお得意をアンタに紹介してもらえなくなる」

どうやら横光は、金持ちの主婦たちによる口コミで暗殺の仕事を得ているらしく、その点も水原は見抜いてる。

だけどあまりにも常識外れな水原の推理に、遊撃捜査班・班長の新田英一(加山雄三)は懐疑的で、その根拠を示すよう要求します。

「根拠? 調べてみるとな、この女たち皆どっかで繋がりがあるんだ。お茶、踊り、美容体操、テニスクラブ、そういう所で知り合ってるんだ」

トライデントのガムを噛みながら、水原は上司である新田にタメ口を叩きます。年齢も階級も自分が下だけど、そういった組織の枠に一切囚われない水原は、捜査の為なら情を捨てちゃう新田の刑事バカぶりが気に食わず、ずっと反発してるんですね。

「しかも女たちに共通してるのは、亭主以外にも男がいるっていう事だな。つまり、浮気だ」

「殺し屋を紹介し合って、次々とご主人を蒸発させちゃってるワケ?」

興味深げに口を挟んだのは、紅一点の結城佳代子(長谷直美)。アイドル歌手から『俺たちの朝』で女優に転身し、本作はレギュラー出演第2作目。既に『太陽にほえろ!』にもセミレギュラーとして参加されてました。

何だか楽しそうな結城とは対照的に、新田班長は仏頂面で応えます。

「水原。我々は今、麻薬密売の大物・坂口逮捕へあと一歩のとこまで来てるんだ。そっちが先だ」

「こっちは殺しだぜ、おい?」

『若大将』シリーズの爽やかイメージを払拭したかったのか、新田を演じる加山雄三さんは終始無表情で、クールと言うよりも「いつも不機嫌なオッサン」にしか見えず、このドラマではちょっと浮いた存在のように私は感じました。

対する藤竜也さんは、逆にそれまで演じて来た無口でクールなキャラクターとは違う、ホットでお茶目なこの水原刑事役を魅力タップリに演じられ、見事イメチェンに成功されたように思います。

新田の命令を無視して、水原は単独で横光をマークし、次なる殺しのターゲット=宇津木社長が深夜に吉沢町の仕切り場(回収した廃品を整理・取引する場所)に侵入する所まで追い掛けますが、途中で見失います。

だだっ広い仕切り場を必死に探し回る水原は、今まさに殺しを終えたばかりの横光と鉢合わせします。放映日が真夏の8月である事を意識してか、この深夜の仕切り場はかなりホラータッチで描かれており、横光を演じる丹古母鬼馬二さんは特殊メイク無しでもオバケにしか見えませんw

「……危ねえじゃねえか」

「…………」

「何か?」

「……別に」

「そうかい」

殺害現場を見てない以上、緊急逮捕するワケにも行かず、水原はそのまま立ち去る横光を見送るしかありません。仕方なく水原は殺しの痕跡を探しますが、死体も凶器らしき物も全く見当たりません。

と、いきなり水原が懐中電灯の光で照らされ、丹古母さん以上に不気味な管理人=奥田(横森 久)が登場します。

「ここは私有地だ。勝手に入ってもらっちゃ困る」

「おたく、ここの人?」

「ああ、ここは私の仕切り場だよ」

「あ、そうすか。どうもすいませんでした。あんまりこう、広いでしょ? 迷っちゃいましてね。繁盛してますねぇ」

「さっさと出てってもらおう」

不気味な外見だからってワケでもないでしょうが、奥田も殺しに関わってる事を水原は直感します。

「どうせお前もグルだろ。そのうちワッパ嵌めてやるからなこの野郎」

声の届かない距離でそう呟きながら、奥田にウインクしてニヤリと笑う水原。

この、ガムを噛みながらのニヤリ、がサマになる人はそうそういません。当時の藤さんは30代半ばですが、こんな芝居をして失笑を買わない30代の俳優……ていうか男は、現在の日本にはいないでしょう。

さて翌日、遊撃捜査班の若手コンビ=矢吹史朗(沖 雅也)&滝本 稔(柴田恭兵)は、新田の指示通り麻薬密売の大物=坂口のマンションを張り込み中。

沖雅也さんは同じ日活出身の藤竜也さんとも仲が良かったけど、ほぼ同い年の柴田恭兵さんとは殊の外ウマが合ったらしく、珍しくプライベートでも連絡を取り合うほど仲良しだったそうです。

沖さんもこの『大追跡』でハード&クールなイメージを払拭し、後の主演作『俺たちは天使だ!』(恭兵さんと直美さんも共演)へと繋がるソフト&コミカルな新しい魅力を開拓されましたが、それは恭兵さんの自由奔放な芝居に触発された部分もかなり大きかったみたいです。

「坂口が来ました。出口を塞ぎます!」

無線でそう言って車を発進させる紅一点の結城。演じる長谷直美さんはA級ライセンス所持者でスピンターン等の荒技も軽くこなせる人だけど、ここではほんの数メートル前進しただけでしたw

「坂口さん。お早うっス」

「はじめまして。動くな!」

駐車場に車を停め、降り立った坂口を矢吹と滝本が銃を向けて歓迎します。矢吹の使用拳銃はコルト・パイソン6インチ、滝本はコルト・トルーパー4インチで、共に357マグナム弾を使用するリボルバー。

すかさず車に戻って逃走しようとする坂口に、357マグナムをやたら撃ちまくる矢吹&滝本の軽やかな姿は、まるで後の『あぶない刑事』の港署コンビ=ダンディー鷹山(館ひろし)&セクシー大下(恭兵さん)の若手時代って感じです。

しかし、さすが大物と言われるだけあって簡単に諦めない坂口は、出口を塞いだ結城の車に突っ込み、強引に押しのけて逃走します。

「どうしてくれんのよ、私のクルマ!」

「負けそうですね、これ」

「水さん、出番です!」

お手上げの『俺天』トリオは、更に離れた場所で張り込む水原に後を任せますが、昨夜は横光を追って徹夜だった水原、なんと車で気持ち良さそうに爆睡中でしたw

坂口はボロボロになった自分の車を捨て、水原が刑事だとは知らずその車に乗り込みます。銃を向けられ、仕方なく車を出した水原は反撃のチャンスを待ちますが、仲間から無線連絡が入ってアッサリ正体がバレちゃいます。

「てめぇ、デカだな? とぼけやがって!」

「ちょっと待て待て、早まるな! いや俺は確かにデカだ、しかしな、お前がさっきマンションで会ったデカとはひと味違んだよ、な!」

このドラマでの藤竜也さんは、ホントによく喋ります。このノリの良さが恐らく素顔の藤さんに近い姿で、それは沖さん、恭兵さん、直美さんも言える事です。だから、1人だけキャラを作り込んでる加山さんが、ちょっと浮いて見えちゃうんですよね。

「いや向こうはさ、今どき流行んないモーレツ刑事で、俺はサラリーマン刑事、ね。こういう危険なことが無いようにって毎日お祈りしながら出て来るのよ! ねぇやめてよ!」

そんな泣き落としが通用するワケもなく、水原は次の手を打ちます。

「あれ? あれえ? こりゃ参ったなぁ、おい」

「スピード落とせバカ! ブレーキ踏むんだ!」

「そのブレーキがぶっ壊れてんだっ!」

……というフリをして坂道を猛スピードで下った水原は、急ブレーキでよろけた坂口から一瞬で銃を奪い取り、愛銃トルーパー4インチと2丁の銃口を向けて、ニヤリ。

「ご苦労さんでした。騙して悪かったな」

かくして結果オーライ、麻薬密売の大物は逮捕されました。が……

「怒ってたわよ、新田さん」

「そう。坂口の捜査をほったらかして、どうしょうもない奴だ!」

遊撃捜査班の刑事部屋で、結城や矢吹が水原をからかいます。

「そう言ってたか。ハハ、上司が怖くてデカが勤まるか!」

「おっ、ずいぶん強気じゃないの」

「ふふん」

そこに素晴らしいタイミングで新田班長が戻って来ますw

「水原!」

新田のデスクに足を乗せてふんぞり返ってた水原が、慌てて立ち上がって頭を下げます。本格アウトローと言えども上司はやっぱ怖いんですw

「坂口の件に関しては俺が悪かった。謝る」

「そんな事じゃない。3時間ほど前に宇津木明子から亭主の捜索願いが港東署に出されたそうだ。当たってみろ」

つまり、宇津木社長はやっぱり消されてた。その直後に妻が捜索願いを出すのも、一連の失踪事件お決まりのパターン=横光の手口なんです。

水原は指を鳴らして、当時大流行したピンクレディーの振り付けを真似します。

「ウォンテッド!」

そしてまたニヤリ。こんな失笑スレスレの芝居も、多分みんな恭兵さんに乗せられてやっちゃうんでしょうねw

(つづく)
 

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